国際協力の現場から 01


ABEイニシアティブ修了生が結んだルワンダと日本企業の避雷技術

診療所での雷害対策について現地の協力スタッフと協議する様子(写真:音羽電機工業株式会社)

兵庫県の本社で、インターンとして日本の技術を学ぶアミリ氏(写真右)(写真:音羽電機工業株式会社)
東アフリカの内陸国であるルワンダは雷の発生件数が多く、1,300万人ほどの人口に対し、落雷による死傷者は年間100人近くに上ります。またルワンダは、ICTを含む科学技術教育に力を入れ、ICT産業の振興に注力していますが、落雷による電気・通信インフラや機器の故障なども多発しており、雷害対策は喫緊の課題の一つです。
兵庫県に本社を置く音羽(おとわ)電機工業株式会社は、避雷器やデバイスの開発・製造・販売や雷対策コンサルティングなど、雷害対策に特化した事業を国内外で展開しています。ABEイニシアティブ注1で神戸情報大学院大学に留学していたルワンダからの研修員をインターンとして受け入れたことがきっかけとなってルワンダにおける雷害について知り、自社の技術をルワンダで活用できないか検討を開始しました。
専務の吉田厚(あつし)氏は、「研修員の一人であるムガルラ・アミリ氏から、ルワンダの落雷被害の現状を聞き、共に現地調査を始めたところ、海外製の雷害対策製品はあるものの十分な対策がとられていないことがわかりました。また、国際標準が主流となっている雷害対策のための規格化・標準化が未整備でした。」と当時の様子を振り返ります。
音羽電機工業(株)は2016年、日本が長期にわたって支援してきた現地のエンジニア養成校、トゥンバ高等技術専門学校で現地のエンジニアと共に雷害対策を行い、避雷器の適切な設置や管理によって落雷から機器を守るノウハウをルワンダ公共事業規制局に示しました。当初は音羽電機工業(株)が独自に現地調査を行っていましたが、このような雷害対策の調査、コンサルティングおよび施工をルワンダで事業として継続し、対策を広めていくには、現地の情報やネットワークを有するJICAの協力が不可欠だと考え、中小企業・SDGsビジネス支援事業注2に応募しました。2017年に案件化に向けた調査事業の採択を受け、2019年には「ルワンダ国ICT産業発展を支えるインフラへの雷害対策の普及・実証・ビジネス化事業」が採択されました。また、社内にアフリカ事業室を立ち上げてルワンダでの雷害対策に取り組んでいます。現地の協力スタッフが日本で技術や知識を習得し、避雷器の設置や管理、コンサルティングなどの研修を受けるとともに、日本から年に2回から3回、1ヶ月ほどの期間をかけてルワンダを訪問して、現地スタッフによる現地調査・施工をサポートしています。本プロジェクトのきっかけを作った最初のインターン生であるアミリ氏は帰国後、現地でソフトウェア会社を立ち上げていますが、音羽電機工業(株)の現地での活動でもパートナーとして中心的な役割を担っており、雷害対策の技術コンサルティングを一緒に行っています。海外事業を担当する吉田修太郎取締役は、「ルワンダ公共事業規制局の関係者が来日した際は、実際に当社の技術や雷害対策を見てもらいました。雷害は技術力で防ぐことができると理解してもらったことで、ルワンダ政府も自ら対策強化を推進するようになりました。」と語ります。
また、吉田専務は、雷のしくみや落雷から身を守る行動について教育の必要性も感じているといいます。音羽電機工業(株)は京都大学の協力の下、日本の小学生と共に遊びながら避難行動を学ぶことができる「雷おにごっこ」を考案し、アミリ氏を通じてルワンダのこどもたちに避雷教育を普及させる活動も行っています。吉田専務は「よい技術を導入しても、その必要性がわからなければ本当の価値は発揮されません。こどもたちに避雷教育を行うことで、雷被害を防ぐために正しく行動できる未来を作ってもらいたいと思っています。」と期待を寄せています。
吉田取締役は今後の展望について、「雷害対策の重要性を理解する人を一人でも多く増やし、時間をかけてでもルワンダの課題解決の取組を支え続けることを第一に考えています。現地パートナーであるアミリ氏および研修を受けた現地の技術者と共に新たな産業を生み出し、人々の生活を豊かにすることが目標で、その中で当社のビジネスも発展させていきたいと思います。」と語ります。
注1 用語解説を参照。
注2 用語解説を参照。