(9)資源・エネルギーへのアクセス確保
世界で電力にアクセスできない人々は2020年時点で約7.33億人、特にサブサハラ・アフリカでは、同地域人口の48%に上ると言われています注83。電気やガスなどのエネルギー供給の欠如は、産業発達の遅れや雇用機会の喪失を引き起こし、貧困をより一層深めるといった問題につながります。今後、世界のエネルギー需要は、アジアを始めとする新興国や開発途上国を中心にますます増えることが予想されています。一方、ロシアによるウクライナ侵略の影響や世界的な天候不順などの要因によって、エネルギー価格は高騰しています。そのような状況下、エネルギー供給源の多角化やエネルギー源の多様化などを通じて、エネルギー安全保障を確保していくことが重要です。
●日本の取組

インドにおける「新・再生可能エネルギー事業」により建てられた風力発電所
日本は、途上国の持続可能な開発を推進するため、近代的なエネルギー供給を可能にする支援を提供し、産業育成のための電力の安定供給に取り組んでいます。また、省エネルギー設備や再生可能エネルギー(水力、太陽光、太陽熱、風力、地熱など)を活用した発電施設など、環境に配慮したインフラ(経済社会基盤)整備も支援しています(「匠の技術、世界へ」、「案件紹介」も参照)。
例えば、日本は、国土が広い海域にまたがり、気候変動の影響に脆(ぜい)弱な太平洋島嶼(しょ)国地域において、エネルギー安全保障および低・脱炭素社会実現の観点から、グリッド接続型の再生可能エネルギーの主流化に向けた支援を行っています。ドミニカ共和国においては、輸入化石燃料に電力供給源の多くを依存する同国のエネルギー効率化を支援するため、円借款により、全国の公道における街灯のLED化などを支援しており、同国の公共セクターの省エネルギー化の促進および温室効果ガス排出量の削減に貢献することが期待されています。
2022年8月に開催したTICAD 8注84では、オーナーシップと共創、機動的な資金動員、多様なパートナーとの連携によるアプローチにより日本の貢献を最大化することを目的として、アフリカ・グリーン成長イニシアティブが立ち上げられました。このイニシアティブに基づく取組として、再生可能エネルギー発電事業への民間投資や地熱発電量の拡大、脱炭素社会の実現に重要となる銅やレアメタル等の鉱物資源分野での協力が表明されました。アフリカ各国が自然資源と生態系を適正に保全・活用し、持続可能な成長(グリーン成長)を実現するための支援として、アフリカパワープール(国際送電網)、配電網、系統安定化の整備などを実施しています。
ケニアでは、オルカリア地熱発電所の開発支援を通じて、電力供給の増加・安定化に貢献しており、日本企業が事業実施の一端を担っています。2022年には、I-6号機およびV地熱発電所の完工式が開催され、また本発電所の運用開始により、ケニアの国全体としての地熱による発電設備容量は世界で6番目となりました。
また、日本は、石油・ガス・鉱物資源などの開発において、資金の流れの透明性を高めるための多国間協力の枠組みである「採取産業透明性イニシアティブ(EITI)」を支援しています。採取企業は資源産出国政府へ支払った金額および資源産出国政府は採取産業から受け取った金額を、それぞれEITIに報告しています。55の資源産出国と、日本を含む多数の支援国に加えて、採取企業やNGOを含む市民社会が参加しており、資金の流れを透明化することで、腐敗や紛争を予防し、成長と貧困削減につながる、責任ある資源開発の促進を目指しています。
- 注83 : IEA 「Tracking SDG7: The Energy Progress Report」25ページ。
(https://iea.blob.core.windows.net/assets/8b276fc2-c1ae-4a54-9681-eea1eb143d7f/TrackingSDG7TheEnergyProgressReport2022.pdf) - 注84 : 「開発協力トピックス」を参照。