(10)SDGs達成のための科学技術イノベーション
現在、世界では、製造業やサービス業にとどまらず、農業や建設を含む多様な産業分野で情報通信技術(ICT)、人工知能(AI)、ロボット技術などが活用され、社会変革が生じています。
国連は、持続可能な開発のための2030アジェンダ(パラグラフ70)に基づき、国連機関間タスクチーム(UN-IATT:UN Inter-agency Task Team on STI for SDGs)を設立し、各国との連携の下、地球規模でのSDGs達成のための科学技術イノベーション(Science, Technology, and Innovation for SDGs:STI for SDGs)を推進しています。2022年もSDGsに関する国連STIフォーラムが開催され、限られた資源を最大限活用しながらSDGsを達成するための「切り札」として、STIへの国際的な期待が高まっています。
●日本の取組

国連本部にて開催された第7回STIフォーラムの様子(2022年5月)
日本は、これまでの経済発展の過程で、STIを最大限活用しながら、保健・医療や環境、防災などの分野で自国の課題を克服してきた経験を有しています。そうした経験を基礎として、開発途上国が抱える課題解決のため、「地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)」注85などを通じて、科学技術面での協力に取り組んでいます。例えば、砂漠化対処に向けた、エチオピアにおける持続可能な土地管理フレームワークの開発は、課題解決に貢献するSATREPSの好例といえます。
UN-IATTはSTI for SDGsのためのロードマップ策定を世界各国で促進させるため、インド、ウクライナ(2021年から)、セルビア、エチオピア、ガーナ、ケニアの6か国をパイロット国として、「グローバル・パイロット・プログラム」を実施しています。このプログラムにおいて、日本は、2020年度から世界銀行への拠出を通じて、ケニアに対して、農業分野での支援を実施しています。加えて、2020年度から、国連開発計画(UNDP)への拠出を通じ、途上国においてSTIによる社会課題解決へ向けた事業化検討を行う日本企業の支援を継続しています。
ルワンダ

長年の支援でエネルギーの安定供給に貢献
第三次変電及び配電網整備計画
無償資金協力(2018年9月~2023年8月)
ルワンダの首都キガリでは、近年の急激な都市化と人口増加により電力需要が高まっています。しかし、電力供給設備の不足により、市内の主要変電所が過負荷状態となり、電力供給が不安定でした。そのため、キガリ市の経済活動および市民生活に大きな支障が生じていました。
そこで、日本は、2011年以降、無償資金協力を通じて変電所や配電網などハード面の整備を行うとともに、技術協力を通じて、効率的な電力システム開発のための電力公社の能力向上や設備維持管理能力の強化などソフト面の支援を実施し、必要な電力量が安定的かつ効率的に供給されるよう、支援してきました。
伸び続ける需要に対して、キガリ全域に一層安定的かつ効率的に電力が供給できるよう、本事業では、キガリ市内に変電所1か所と配電線約20kmを新設し、市内の主要変電所の過負荷状態の改善を図っています。新設された配電線は、既存の配電線と並行して引かれることから、配電線の1か所が破線した場合や1地域での急激な電力需要の増加等が起きても、停電の発生を防ぐことが可能になります。
このように、日本の長年の支援は、キガリ市内120万人への安定的な電力供給を通じて、同市の経済基盤整備と市民の生活環境改善に大きく貢献しています。

新設されたガソギ変電所と配電線

変電所と配電線の仕組みを説明するコンサルタントの宇留野(うるの)氏(写真:八千代エンジニアリング株式会社)
- 注85 : 用語解説を参照。