開発協力トピックス5
マレーシアの経済・社会の発展を支えた東方政策と日本のODA
~共に創りあげた40年の成果を踏まえて~

KLタワーから望むクアラルンプールの街並み

MJIITでの指導の様子
2022年はマレーシアで東方政策(Look East Policy)が開始されてから40周年に当たります。東方政策は、学生の日本留学や行政官の日本での研修を通じて、マレーシアの人々が日本の労働倫理、勤労意欲、道徳、経営能力等を学ぶことで、自国の経済社会の発展と産業基盤の確立を目指すマレーシアの政策です。日本政府は、マレーシア政府による本政策の導入以降40年にわたり一貫してこの東方政策に協力を行ってきました。
たとえば、留学生派遣事業では、日本へ留学予定の学生たちへの日本語予備教育を行う講師を日本から派遣し、留学生が日本での授業にスムーズに対応できるよう支援を行っています。また、行政官向け研修においては、若手行政官の日本企業での実務研修である産業技術研修プログラムや、管理職行政官を対象に地方自治体や民間企業などで研修を行う経営幹部実務研修等の実施を支援するとともに、2015年からは東方政策の第2段階として立ち上げられた「東方政策2.0」の下で最先端産業技術等の分野での研修も行っています。
これまでに約2万6,000人がマレーシア政府から日本に派遣されており、2021年12月末時点でマレーシア政府各省庁の次官級ポストのうち6割以上が、本政策に基づく日本留学・研修の経験者となっています。
日本政府は東方政策への支援と同時に、マレーシアの経済・社会の発展のため、ODAを通じた道路、電力、上水道等の基盤インフラの長期計画策定や整備に加え、産業技術の改善を支援してきています。また、マレーシア国内での産業人材育成も支援しており、古くは職業訓練指導員・上級技能訓練センター(CIAST)注1に対する支援、最近では日本式工学系高等教育を実践する大学として設立されたマレーシア日本国際工科院(MJIIT)に専門家派遣等の支援を行うなど、マレーシアの経済・社会を踏まえ、日本の支援の軸も職業訓練から高等教育へ移ってきています(MJIITについては「科学技術・イノベーション促進、研究開発」も参照)。
こうした東方政策と日本のODAによる支援を組み合わせた取組は、日本の経験・知見を踏まえつつ相手国のオーナーシップを尊重し、相手国の実情・ニーズに見合った支援を行う日本の開発援助の特長を体現したものであり、これらの取組により、マレーシアの経済・社会は順調に発展しました。
また、東方政策で学んだ留学生や行政官は帰国後に日本企業に就職したり、政策立案に日本での経験を活かしたりして、マレーシア経済だけでなく、両国の相互理解、友好促進に貢献しています。東方政策で培われた多層的な人材交流は、日本企業がマレーシアに進出する際の支えともなり、2021年12月現在、約1,500社が活動しています。
このように、東方政策は、マレーシア独自の政策でありつつも、日本とマレーシアが共に創りあげてきたプロジェクトであるとも言えます。日本政府は、今後も東方政策と連動しつつ、2025年までに高所得国入りを目指すマレーシアの経済・社会の発展を支援していきます。そして、マレーシア政府と連携しつつ、南南協力注2などを通じて、40年間の東方政策およびODAの成果を他国との協力にも活かしていきます。
注1 専門労働者の育成を目的とし、1982年8月から91年3月まで実施。1993年末までに1万826人が訓練を受けた。
注2 用語解説を参照。