開発協力トピックス4
2050年カーボンニュートラル実現に向けた日本の取組と日本の開発途上国への支援

COP26世界リーダーズ・サミットでスピーチを行う岸田総理大臣(写真:内閣広報室)

COP26の会場に設置された地球のモチーフ「The COP26 Globe at the Hydro.」(写真:Karwai Tang/UK Government)
気候変動問題は、地球規模の喫緊(きっきん)の課題です。日本は2020年10月、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロとする、「カーボンニュートラル」の実現を目指すことを宣言し、その取組を進めています。
2021年4月の地球温暖化対策推進本部において、日本は、2050年カーボンニュートラルと整合的で野心的な目標として、2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指すこと、さらに50%の高みに向け挑戦を続けることを表明しました。この目標はこれまでの目標を7割以上引き上げるものであり、同じく4月に開催された米国主催の気候サミットにて世界に表明し、米国を始め、各国から歓迎の意が表されました。
2050年カーボンニュートラルおよび2030年度の目標の達成に向けた施策の具体化も進みました。2021年10月には、新たな地球温暖化対策計画やエネルギー基本計画等を決定し、さらに、新たな削減目標を反映した「国が決定する貢献(NDC)」注1および2050年カーボンニュートラル実現に向けた取組等を示した「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」を国連気候変動枠組条約事務局に提出しました。
諸外国との連携・協力も加速しています。2021年4月16日、日米首脳会談で立ち上げた「日米気候パートナーシップ」では、(1)野心的な気候変動対策とパリ協定の実施に関する協力・対話、(2)気候・クリーンエネルギー技術およびイノベーション、(3)第三国、特にインド太平洋諸国における脱炭素社会への移行の加速化に関する協力の三つの柱の下で取組を推進することを確認しました。また、5月27日には、日EU定期首脳協議において、開発途上国が気候中立で強靱(きょうじん)な社会へ移行するための協力の推進を含む気候および環境分野の協力枠組みである「日EUグリーン・アライアンス」を立ち上げました。
6月のG7コーンウォール・サミットにおいて、2021年から2025年までの5年間に官民合わせて6.5兆円相当の気候変動に関する支援を実施することとし、気候変動の影響に脆弱(ぜいじゃく)な国に対する、適応分野注2の支援を強化していくことを表明しました。また、同サミット首脳コミュニケでは、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電への政府による新規の国際的な直接支援の2021年末までの終了にコミットしました。
さらに2021年10月から11月の国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)において、岸田総理大臣は、気候変動という人類共通の課題に日本として総力を挙げて取り組んでいく決意を述べました。また、途上国の取組を支援するため、先進国全体で年間1,000億ドルという資金目標注3の達成に貢献していくため、日本は以下4点の新たなコミットメントを表明しました。
(1)再生可能エネルギーを最大限導入しながら、「アジア・エネルギー・トランジション・イニシアティブ」を通じ、アジアを中心に化石燃料を使用する火力発電を、アンモニア、水素などを燃料とするゼロエミッション火力発電に転換するため、1億ドル規模の先導的な事業を展開する。
(2)先進国全体での年間1,000億ドルの資金目標の不足分を率先して補うべく、2021年6月のG7コーンウォール・サミットで表明した支援に加え、アジア開発銀行(ADB)などと協力し、アジアなどの脱炭素化支援のため革新的な資金協力の枠組みの立ち上げなどに貢献し、新たに今後5年間で最大100億ドルの追加支援を行う用意があること。
(3)2025年までの5年間で適応分野での支援を倍増し、官民合わせて約148億ドルの適応支援を実施すること。
(4)2025年までの5年間で森林分野に官民合わせて約2.4億ドルの支援を実施すること。
日本は、国際社会へのコミットメントを着実に実行し、日本としての取組および途上国の取組の後押しを通じ、引き続き気候変動対策に積極的に貢献していきます。
注1 注64を参照。
注2 注65を参照。
注3 先進国は、2020年までに途上国への官民合わせて年1,000億ドルの支援を、2009年のCOP15で合意。その後、2015年のCOP21でこれを2025年まで継続することに合意。