開発協力トピックス3
UHC達成に向けた日本の取組
~東京栄養サミット2021~
●新型コロナウイルス感染症とUHC
新型コロナウイルス感染症の世界的拡大に対応する上では、「人間の安全保障」の理念に立脚し、「誰の健康も取り残さない」ことを目指し、すべての人が、効果的で良質な保健医療サービスを負担可能な費用で受けられるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成することが重要です。
日本は、この考え方に基づき、新型コロナの発生直後から、二国間支援および国際機関を通じた支援を活用し、約3,400億円(約31億ドル)の支援を実施してきました。2021年6月のCOVAXファシリティに対する8億ドルの追加プレッジと合わせ、総額4,300億円(約39億ドル)の支援を行っています。(日本のコロナ対策支援について、第Ⅰ部を参照)。
また、日本は、ワクチン等の開発および公平なアクセスの実現を中心とする新型コロナへの対応能力の強化や将来の健康危機に備えるための保健医療システムの強化に加えて、より幅広い分野での健康安全保障のための環境整備にも取り組んでいます。
●東京栄養サミット2021

スピーチを行う岸田総理大臣(写真:内閣広報室)
栄養はUHCを支える基盤です。栄養状態の改善は、持続可能な開発目標(SDGs)の目標2に掲げられており、その他計12の目標にも深く関係します。保健分野だけではなく、農業や流通、水・衛生、ジェンダーなど多くの分野と関連しているため、各分野が連携して栄養改善を進めることがSDGs達成のために不可欠です。新型コロナにより、世界的に社会経済状況が悪化し、貧困層の子どもが休校措置のため学校で給食を取れなくなる等、社会的に脆弱(ぜいじゃく)な人びとを中心に栄養不良が一層深刻化している中、早急な対応が求められています。
日本政府は、2021年12月7日および8日に東京栄養サミット注12021を主催しました。同サミットでは、先進国・開発途上国を問わず、成長を妨げる低栄養と生活習慣病を引き起こす過栄養の「栄養不良の二重負荷」が問題となっていること、および新型コロナによる世界的な栄養状況の悪化を踏まえ、(1)健康、(2)食、(3)強靭(きょうじん)性、(4)説明責任、(5)財源確保の5つに焦点が当てられる形で議論が行われました。
同サミットには、約30か国の首脳・閣僚や、グテーレス国連事務総長、マルパス世界銀行総裁、テドロスWHO事務局長等の国際機関の長、市民社会、民間企業、学術界の代表等が参加し(国内からの参加者は対面、海外からはオンライン参加とするハイブリッド形式)、世界の人々の栄養改善について幅広く議論し、今後の行動の方向性について共通認識を深めました。多くのステークホルダーから390以上のコミットメント(政策的・資金的意図表明)が提出されるとともに、成果文書として「東京栄養宣言」を発出し、栄養改善に向けた国際社会の方向性を示すことができました。
日本からは、岸田総理大臣が開会スピーチを行うとともに、林外務大臣が歓迎の挨拶を行いました。その際、岸田総理大臣からは、今後3年間で3,000億円以上の栄養に関する支援を行うことを表明しました。また、林外務大臣からは、先進国・途上国双方の政府、民間企業、市民社会、学術界を含む全ての関係者が一致団結してこの重要な課題に取り組むことの必要性、また、そのためには、それぞれが自らのコミットメントを着実に実行していく必要がある旨を述べました。
日本は、今後ともUHC達成に向け、こうした支援にしっかりと取り組んでいく考えです。
注1 栄養サミットは2012年のロンドンオリンピック・パラリンピック競技大会の際に、世界的なスポーツの祭典を契機として地球規模で栄養課題について考えるため2013年にロンドンで初めて開催された。日本も東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催国として栄養サミットを主催した。