2021年版開発協力白書 日本の国際協力

開発協力トピックス2

「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現に向けた取組の推進

2021年8月に開通したタイ都市鉄道レッドライン(写真:JICA)

2021年8月に開通したタイ都市鉄道レッドライン(写真:JICA)

2021年10月にジブチ沿岸警備隊に引き渡された巡視艇

2021年10月にジブチ沿岸警備隊に引き渡された巡視艇

アジア太平洋からインド洋を経て中東・アフリカに至るインド太平洋地域は、世界人口の半数を擁(よう)する世界の活力の中核です。この地域において、法の支配に基づく自由で開かれた秩序を構築するため、日本は2016年に「自由で開かれたインド太平洋(FOIP:Free and Open Indo-Pacific)」を提唱し、その実現に向けた取組を進めています。この構想は、今や米国のみならず、オーストラリア、インド、東南アジア諸国連合(ASEAN)、欧州の主要国とも共有されており、ポスト・コロナの世界に向けてますますその重要性を増しています。

そのようなFOIPの実現に向けた取組において、ODAは重要なツールの一つです。

例えばFOIPの下では、地域全体の連結性向上を通じた経済的繁栄を目指しています。域内の港、空港、道路、鉄道などのインフラを国際スタンダードにのっとった形で整備し、各都市や拠点をつなぐことで、地域全体の成長につなげるという考え方です。日本の円借款で整備され、2021年8月に開通した「タイ都市鉄道レッドライン」もそのような連結性向上支援の一つです。タイの首都バンコクの中心部とドンムアン空港や近隣地域を結ぶこの鉄道は、首都圏で課題となっている交通渋滞や大気汚染の緩和や改善に貢献します。事業の一環で建設された新バンスー中央駅は、タイを代表する新たな長距離路線のターミナル駅となり、将来は高速鉄道や国鉄在来線が乗り入れる予定です。

また、平和と安定の確保に向けた取組の例として、東アフリカのジブチに対する支援を紹介します。ジブチが面するソマリア沖・アデン湾の海域は、年間約1,600隻の日本関係船舶が通行するなど、日本にとっても重要な海上交通路ですが、海賊・武装強盗、密航・密漁・密輸、海難事故などが発生しています。これに対処するため、日本は自衛隊による海賊対処活動を実施しているほか、ジブチの沿岸警備隊に対し、ODAを通じ、海上監視のための巡視艇の供与、船舶の維持管理能力の強化、沿岸警備隊の研修体制の構築といった支援をしてきています。

法の支配の普及・定着のための取組としては、JICAの技術協力でこれまで中国、ベトナム、カンボジア、ネパール、ラオスの民法典の起草を支援してきました。ラオスに対しては約20年かけて法整備を支援し、その集大成としての民法典が2020年に施行されています。ラオスでは、民法典起草の中核となる人材育成に長い時間をかけ、施行後も民法典の活用や普及に向けた支援を継続しています。

透明性の高いルールに支えられ、様々な人・物・知恵が活発に行き交う「自由で開かれたインド太平洋」の存在なくして、日本およびこの地域の安定と繁栄はあり得ません。日本はこれからも、ODAを含む様々な取組を通じて、FOIPの実現を進めていきます。

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