2021年版開発協力白書 日本の国際協力

開発協力トピックス6

PALM9の開催と太平洋地域への日本の開発協力

PALM9に出席した菅総理大臣(当時)(写真:内閣広報室)

PALM9に出席した菅総理大臣(当時)(写真:内閣広報室)

気候変動対策の人材育成拠点となるサモアの太平洋気候変動センター(写真:JICA)

気候変動対策の人材育成拠点となるサモアの太平洋気候変動センター(写真:JICA)

2021年7月2日、第9回太平洋・島サミット(The Ninth Pacific Islands Leaders Meeting:PALM9)が、テレビ会議方式により開催されました。太平洋・島サミットは1997年から3年に一度開かれている首脳会議で、太平洋島嶼(とうしょ)国が直面する様々な問題について首脳レベルで率直に意見交換を行い、地域の安定と繁栄に貢献するとともに、日本と太平洋島嶼国のパートナーシップを強化することを目的としています。PALM9は日本とツバルとが共同議長を務め、太平洋に点在する14の島国(太平洋島嶼国)にオーストラリア(豪州)、ニュージーランドなどを加えた17か国・2地域注1が参加しました。

PALM9において、菅総理大臣(当時)は、日本と太平洋島嶼国の間の協力を更に強化する政策である「太平洋のキズナ政策」を発表しました。日本は、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現に向けた取組を進めていますが、太平洋島嶼国との関係では2019年に関係省庁事務レベル会議として「太平洋島嶼国協力推進会議」を立ち上げるなど、太平洋島嶼国に対するオールジャパンでの取組を強化してきており、これを「太平洋のキズナ政策」と名付けました。

同政策の下、今後3年間の重点分野として、(1)新型コロナウイルス感染症への対応と回復、(2)法の支配に基づく持続可能な海洋、(3)気候変動・防災、(4)持続可能で強靱(きょうじん)な経済発展の基盤強化、(5)人的交流・人材育成の5つを打ち出すとともに、5,500名以上の人的交流・人材育成などを含むコミットメントを発表しました。さらに、今後日本が太平洋島嶼国と共に取り組んでいく具体的取組が、「PALM9首脳宣言」の附属文書である「共同行動計画」にとりまとめられました。太平洋島嶼国からは、PALMがこれまで果たしてきた役割に対する高い評価とともに、PALM8における日本のコミットメントの実現および、5つの重点分野に関する日本の新たなコミットメントに対して謝意が表明されました。

今後3年間、日本は、5つの重点分野を中心に各国のニーズに沿った支援を実施していきます。例えば、(1)「新型コロナへの対応と回復」については、医師や病床数が少ないなど、脆弱(ぜいじゃく)な医療体制の改善に向けて、関係国や機関注2と連携して新型コロナワクチンの配布、管理、接種の支援を継続するとともに、医療施設の整備や質の高い医療機材の供与、保健医療従事者の人材育成などの支援を実施していきます。ワクチンについては、他のドナー国とも調整しつつ、COVAXファシリティを通じ供与しています。また、(3)「気候変動・防災」については、太平洋島嶼国は、サイクロンなどの自然災害に見舞われやすく、気候変動の影響を受けやすいため、気候変動に関する人材育成の拠点として日本の支援により2019年にサモアに開設された太平洋気候変動センターでの研修を継続していくほか、災害に対して強いインフラ整備や防災関連の機材の供与などを実施します。さらに(5)「人的交流・人材育成」について、将来のリーダーとなる太平洋島嶼国の若手行政官のインターンシップの受け入れを日本の行政機関で行うなど、日本の強みである技術協力や研修事業を始めとする人材育成支援を実施していきます。

このような支援を通じて、日本は太平洋島嶼国の良きパートナーとして、自立的・持続的な発展を後押ししていきます。


注1 参加国および地域は、日本、島嶼14か国(ツバル、クック、フィジー、キリバス、マーシャル、ミクロネシア連邦、ナウル、ニウエ、パラオ、パプアニューギニア、サモア、ソロモン、トンガ、バヌアツ)、豪州、ニュージーランド、ニューカレドニアおよび仏領ポリネシア。

注2 豪州、ニュージーランド、米国やアジア開発銀行(ADB)、世界保健機関(WHO)、COVAXファリシティなど

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