2021年版開発協力白書 日本の国際協力

(2)水・衛生

インドのウッタル・プラデーシュ州において、手洗いを含む衛生啓発活動「アッチー・アーダット(ヒンディー語で良い習慣という意味)キャンペーン」を実施。水道などの手洗い設備のない家庭でも感染予防に有効な手洗いが実施できる製品を使用して、手を洗う子どもたち。(写真:JICA)

インドのウッタル・プラデーシュ州において、手洗いを含む衛生啓発活動「アッチー・アーダット(ヒンディー語で良い習慣という意味)キャンペーン」を実施。水道などの手洗い設備のない家庭でも感染予防に有効な手洗いが実施できる製品を使用して、手を洗う子どもたち。(写真:JICA)

水と衛生の問題は人の生命に関わる重要な問題です。世界の約22億人が、安全に管理された飲み水の供給を受けられず、42億人が安全に管理されたトイレなどの衛生施設を使うことができない暮らしをしています。また、水道が普及していない開発途上国では、多くの場合、女性や子どもが時には何時間もかけて水を汲みに行くため、子どもの教育や女性の社会進出の機会が奪われています。また、不安定な水の供給は、医療や農業にも悪影響を与えます。SDGsの目標6は、「すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する」ことを目指しています。

●日本の取組

ウガンダ北部の難民居住区の給水施設で水を汲む南スーダンからの難民たち。難民も主体となり難民居住区の給水サービスの向上に取り組む(写真:UNHCR)(「国際協力の現場から」も参照)。

ウガンダ北部の難民居住区の給水施設で水を汲む南スーダンからの難民たち。難民も主体となり難民居住区の給水サービスの向上に取り組む(写真:UNHCR)(「国際協力の現場から」も参照)。

日本は、1990年代から累計で、世界一の水と衛生分野における援助実績を有しています。

日本は、2021年、インドネシア、カンボジア、ベトナム、ラオスなどで上水道の整備・拡張のための事業を実施しました。たとえば、ミャンマーのラカイン州、カチン州およびシャン州北部において紛争の影響を受けた少数民族地域の国内避難民および周辺コミュニティに対して、保健環境の改善、安全な水へのアクセスの確保、衛生環境の改善および教育環境の改善のための無償資金協力をUNICEFと連携して実施しています。また、マラウイでは、水利用効率の改善に向けて、リロングウェ水公社の能力強化を目的とした技術協力プロジェクトを実施しています。横浜市水道局が協力を行っており、横浜市の水道事業のノウハウがマラウイの水問題の解決に活かされています(詳細は「匠の技術、世界へ」を参照)。

日本国内および現地の民間企業や団体と連携した途上国の水環境改善の取組も、世界各地で行われています。たとえば、東南アジアのインドネシアでは、JICAの中小企業・SDGsビジネス支援事業を活用して、再生水利用・産業排水処理の促進に向けた自動再生式活性炭排水処理技術普及・実証事業が実施されました。繊維産業の盛んな同国の染色排水の処理不足による河川汚染や地下水の過剰取水による地盤沈下等の環境問題の解決が期待されており、同事業により、現地で大型浄化装置を2台販売するなどの成果が現れています。

環境省でも、アジアの多くの国々において深刻な水質汚濁が生じている問題に対して、現地での情報や知識の不足を解消するため、アジア水環境パートナーシップ(WEPA)を実施しており、アジアの13の参加国注49の協力の下、人的ネットワークの構築や情報の収集・共有、能力構築などを通じて、アジアにおける水環境ガバナンスの強化を目指しています。2021年3月に、オンラインで開催された第16回WEPA年次会合では、「生活排水処理の現状と課題」に焦点を当て、各国における水環境ガバナンスの進展について情報共有するとともに、活発な意見交換が行われました。また、SDGsの目標6.3に掲げられている「未処理汚水の半減」の達成に貢献すべく、主にアジア地域を対象に、日本の優れた技術である浄化槽の技術や法制度などを紹介しています。2021年1月に第8回、11月に第9回のワークショップをオンラインで開催し、分散型汚水処理・浄化槽と水系感染症や自然災害に関するテーマや、分散型汚水処理における共通課題である汚泥の清掃・搬送・処理処分に関するテーマを取り上げて発表と活発な討議を行いました。また2021年2月にはラオス、3月にはスリランカとカンボジアにおいて現地政府との共催でウェブセミナーを開催し、浄化槽のハード・ソフト両面の提案活動を実施し、途上国における浄化槽の普及を後押ししています。


  1. 注49 : カンボジア、中国、インドネシア、韓国、ラオス、マレーシア、ミャンマー、ネパール、フィリピン、スリランカ、タイ、ベトナム、日本の13か国。
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