(4)大学・教育機関との連携
日本政府は、大学が持つ開発途上国の開発に貢献する役割、国際協力を担う人材を育成する役割、日本の援助哲学や理論を整理し、発信する役割など、援助の理論整理、実践、国民への教育還元までの援助のサイクル全般への広い知的な側面において、大学と協力し、連携を図っています。実際に、様々な大学と共同で、技術協力や円借款、草の根技術協力をはじめとする事業を推進しています。
一例をあげると、日本政府は、途上国の経済社会開発の中核となる高度人材の育成を目的として、人材育成奨学計画(JDS)を活用し、途上国の若手行政官等を留学生として国内累計36大学で受け入れており、これまでに来日した留学生は、修士課程と博士課程合わせて4,600名を超えます。また、タイにおける産業人材育成のため、日本独自の教育システムである「高専」(高等専門学校)の設立・運営を通じて、日本と同水準の高専教育を提供する協力を実施しています。さらに、ASEAN諸国に対しては、JICAの技術協力プロジェクトとして、アセアン工学系高等教育ネットワーク(AUN/SEED-Net)プロジェクト*を実施しており、日ASEAN大学間のネットワーク強化や産業界との連携、周辺地域各国との共同研究などを行っています。
加えて、近年、地球温暖化や感染症をはじめとする地球規模課題の脅威(きょうい)が急激に増してきており、その解決のために科学技術のさらなる発展が求められています。特にこれらの脅威の影響を受けやすい途上国では、地域のニーズに基づく研究開発が必要であることから、日本の優れた科学技術への期待が高まってきています。同時に、途上国の大学・研究機関等の自立的な研究開発能力の向上や、持続的な活動推進体制の構築も急務となっています。このような問題意識のもと、2008年から、外務省・JICAは文部科学省、科学技術振興機構(JST)、日本医療研究開発機構(AMED)と連携し、「地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)注11」を実施しており、日本と途上国の大学・研究機関等の間で国際共同研究が行われています(具体例については、「匠の技術、世界へ」を参照)。
こうした大学との連携は、途上国の課題解決における学術面での能力向上に寄与していることに加え、海外からの研修員が日本の大学で研修・研究することで、日本の大学の国際化にも貢献しています(開発協力を通じた日本の国際化については、「開発協力トピックス」を参照)。
- *アセアン工学系高等教育ネットワーク(AUN/SEED-Net:ASEAN University Network/Southeast Asia Engineering Education Development Network)
- ASEANに加盟する10か国における工学分野のトップレベルの26大学と、日本の支援大学14校から構成される大学ネットワークとして、2001年に発足。東南アジアと日本の持続的な発展のために、工学分野で高度な人材を輩出するべく様々な研究・教育活動を実施している。このプロジェクトは、東南アジア諸国の政府や大学、本邦大学の協力のもと、JICAを通じて主に日本政府が支援を行っている。
- 注11 : 用語解説を参照。科学技術協力:https://www.jica.go.jp/activities/schemes/science/index.html