(5)諸外国・国際機関との連携
ア.諸外国との連携
日本は、幅広い開発課題に関して他のドナーとの協調を推進しています。2020年には英国、オーストラリア、米国およびEU等との間で対話や意見交換を実施しました。また、これら主要ドナーとの間では首脳レベルのコミットメントのもと、アフリカを含むインド太平洋等の第三国において、連結性強化のためのインフラ整備、海洋の安全、防災といった、様々な分野において具体的な協力や連携が進められており、ODAもその重要な一翼を担っています。また、2020年には新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、世界的に保健分野への対応が急務となりました。環境、気候変動を含む地球規模の開発課題への対応も引き続き重要です。こうした中、日本のODAを効果的に活用し、国際社会全体で開発課題に取り組むためにも、他のドナーとの協力や連携は重要であり、積極的に推進していきます(新型コロナ対応に関する国際的な連携については、第I部特集も参照)。
開発協力はこれまで、経済協力開発機構(OECD)開発援助委員会(DAC)メンバー国、いわゆる伝統的なドナーが中心的な提供者となっていましたが、近年、中国、インド、インドネシア、サウジアラビア、ブラジル、トルコ、南アフリカなどの新興国も開発途上国に対して支援を行い、開発課題に大きな影響力を持つようになっています。自らが援助を受ける側から提供する側へとなった経験を持つ日本は、新興国を含む諸国とも連携し、新興国から途上国に対する援助(南南協力)が効果的に促進されるよう、新興国への支援(三角協力)も行っています。
特に中国について、日本政府は、2018年10月に対中ODAの新規採択終了とあわせて、日中を対等なパートナーとする新たな次元の協力を進めていくことを発表しました。これを受けて、2019年5月には、中国との間で開発協力政策に関する協議を行い、互いの開発協力政策や体制、監督・評価、他国や国際機関との協力実績等について情報交換を行いました。日本としては、中国の援助が国際的な基準や取組と整合的な形で透明性を持って行われるように、引き続き国際社会と連携しながら働きかけていきます。
イ.G7・G20開発問題における連携
G7では、開発分野の諸課題へのG7としての取組について議論する会合として、G7開発大臣会合が開催されてきており、近年では、2018年5月31日から6月2日にカナダ・ウィスラーでG7開発大臣会合、2019年7月4日および5日に、フランス・パリでG7開発大臣会合およびG7教育大臣・開発大臣合同会合が開催されました。
2020年はG7開発大臣会合はありませんでしたが、5月以降、英国とカナダの呼びかけにより、新型コロナウイルス対策途上国支援に関する開発大臣コンタクトグループ会合(G7に加え、オーストラリア、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、スウェーデンも参加)が開催され、日本からは、鈴木外務副大臣(当時)が3回にわたり出席し、世界全体の保健システムの強化やワクチンの公平なアクセス、適時・適切な食料の需給状況に関する情報提供及び流通の確保、学校再開に向けた我が国の取組等について発言しました。
G20においては、2010年のG20トロント・サミット(カナダ)以降開催されているG20開発作業部会において開発課題に関する議論が行われています。2020年にサウジアラビアが議長国を務めた開発作業部会では、①新型コロナウイルス感染症への対応および復興、②地域連結性のための質の高いインフラ、③持続可能な開発のための資金調達、④2030アジェンダ(SDGs)、⑤説明責任、の5つが優先議題とされ、各議題について成果文書が作成されました。
ウ.国際機関との連携

UNDPのシュタイナー総裁とテレビ会議を行う鈴木外務副大臣(当時)
近年、貧困、気候変動、防災、保健など、国境を越える地球規模課題に対して、国際社会が一致団結して取り組む上で、国際機関との連携は欠かせません。
日本は、様々な開発課題に対応し、国際機関との連携による支援を円滑に進めるため、国連開発計画(UNDP)、国連難民高等弁護官事務所(UNHCR)、国連児童基金(UNICEF)、国連世界食糧計画(WFP)など主要な国際機関との対話を実施しています。また、これらの対話に加え、2020年は、新型コロナ拡大の危機対応のための意見交換も行いました。例えば、鈴木副大臣(当時)は、4月にマウラー赤十字国際委員会(ICRC)総裁と、5月にシュタイナーUNDP総裁とのテレビ会議において、協力強化の重要性について確認しました(国際機関を通じた日本の新型コロナ対策支援については第I部特集を、各分野・地域における国際機関との連携の詳細については第II部及び第III部を参照)。
DACでは、2030アジェンダを含む今の時代に即した開発協力のため、新興国や民間部門などの多様な主体との連携強化も含めた様々な取組が実施されています。(ODA以外の民間資金の動員・活用については、「開発協力トピックス」も参照)。
また、2019から2020年にはDAC開発協力相互レビューの対日レビューが実施されました。
OECD内にあるOECD開発センターでは、日本の支援により、2019年のG20大阪サミットで承認された「質の高いインフラ投資に関するG20原則」の国際社会への普及に向けた取組を行っています。2020年10月に開催されたOECD開発センター理事会第6回ハイレベル会合では、日本から中西外務大臣政務官が出席し、質の高いインフラの重要性を指摘した上で、同センターと緊密に協力していく考えを表明しました。


OECD開発センター理事会第6回ハイレベル会合(テレビ会議形式)に出席する中西外務大臣政務官(2020年10月6日)
DAC開発協力相互レビュー対日審査注12
DACの相互レビューは、DACメンバー国の間で、開発協力政策や実施状況を5から6年毎に互いに審査(レビュー)するもので、効果的な援助を目指してドナー国がお互いの政策や経験を共有・助言し合っています。今回の対日審査は2014年以来6年ぶりの審査であり、EUとイタリアが審査国となりました。
審査の結果、2020年10月12日にOECDが公表した報告書では、日本政府は前回の対日審査で受けた提言の95%を一部又は完全に実施しているとして、全体的に高く評価されました。中でも、日本が外交、平和、開発に関する努力を組み合わせ、社会全体のアプローチを通じて持続可能な開発を目指していること、途上国の自立的発展を重視していること、防災・減災分野での取組で世界をリードしていることなどが高く評価されています。また、日本が途上国と対等な立場に立ち、彼ら自身の努力を応援するために有償資金協力(円借款)を実施している点に触れ、その有用性を評価しています。
- 注12 : 詳細は、2020年11月27日発行ODAメールマガジン第432号を参照:https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/mail/bn_432.html