(3)ウィズ・コロナの日本の開発協力
今般の新型コロナのパンデミックにより、日本が世界各地で実施している政府開発援助(ODA)の事業も少なからず影響を受けました。
2020年3月以降、新型コロナの感染拡大のため、開発途上国から、JICA海外協力隊・専門家、開発コンサルタント、開発協力に携わる企業、一部のNGO関係者、開発コンサルタントなどが日本に一時帰国することとなりました。
日本から海外への渡航が制限される中、また、途上国においても、協力の現場に足を運ぶことが難しくなっている中、様々な工夫を凝らして、日本からのプロジェクトの継続・協力の方法を模索しました(具体的な取組について、案件紹介も参照)。
1965年に発足し、半世紀以上の実績を有する国民参加型事業であるJICA海外協力隊(JICAボランティア)事業においても、パンデミックの影響が見られました。上記のとおり、JICA海外協力隊については、派遣中の隊員全員が3月中旬より順次一時帰国し、4月以降に派遣を予定していた隊(2019年度3次隊)についても派遣を見合わせました。これら隊員については、11月末以降、ベトナムをはじめ受入れ体制が整った派遣先から渡航を再開しましたが、2020年12月1日現在、577名が派遣又は再派遣に向けて国内にて待機中です。
待機中の隊員は、自らの技能・経験を活かした国内の課題への貢献、または遠隔での隊員活動の継続、再赴任に備えた自己研鑽(けんさん)などに取り組んでいます。待機隊員による国内課題への貢献活動の具体例としては、農家支援、助産師・看護師・保健師等の医療資格をもつ隊員による外国語対応も含めた対応、外国にルーツを持つ子女教育のサポート等があります。このうち農家支援の一例として、「嬬(つま)キャベ海外協力隊」があります。これは、JICAと特定非営利活動法人自然塾寺子屋の連携により、2020年5月から11月にかけて、一時帰国中の隊員が、外国人技能実習生の来日が中断し、深刻な人手不足となった群馬県嬬恋(つまごい)村にて支援を行ったものです。また、参加した隊員は、外国人技能実習生と農家とのコミュニケーションや文化習慣の違いによる様々な問題を改善する方法についての提案も行いました。
JICA専門家の多くも一時帰国を余儀なくされましたが、国内待機中には、遠隔で現地のカウンターパートと連絡をとりながら、業務を遂行しました。2020年6月以降、JICA職員、専門家等は、現地の状況等を踏まえつつ活動していた国々に戻っています。
また、途上国から来日していたJICA研修員は、パンデミックによりフライトが欠航になるなどして帰国が困難となりました。JICAはこれら研修員等に対して、帰国までのサポートを行ってきています。また、新たに来日を予定していた短期研修員に対しては、オンラインでの研修に切り替える等、ウィズ・コロナの中でも研修が受講できるような工夫を行っています。なお、長期研修員等については、10月から順次受入れを再開しています。
このほか、コロナ禍において日本の国際協力NGOが団体の基盤・能力強化や経営戦略見直しを行うための情報集約を目的として、令和2年度NGO研究会「新型コロナウイルス感染症拡大に対する日本の国際協力NGOの対応戦略」を実施しています。


感染が広がる中、任地から退避したJICA海外協力隊員が派遣先の国の言葉で「上を向いて歩こう」を歌う動画を配信(写真:WATATU株式会社 岡本龍太)