2019年版開発協力白書 日本の国際協力

2 未来を紡いだ2019年

2019年に日本が主導したG20やTICAD7においては、未来の社会を担う子どもや若者の教育・人材育成、キャパシティ・ビルディングや、イノベーションを通じた持続可能な社会・発展の実現のための取組が表明されました。

…人に投資し、制度をつくる
グアテマラのキチェ県ネバフ市の学校において、日本の支援で作成された算数教科書を使用して授業を受ける子どもたち(写真:JICA)

グアテマラのキチェ県ネバフ市の学校において、日本の支援で作成された算数教科書を使用して授業を受ける子どもたち(写真:JICA)

G20では、人的資本投資について、持続可能な開発と包摂的な成長を実現するための質の高い教育、イノベーションを生み出す教育、強靱(きょうじん)で包摂的な未来をつくる教育を3つの柱として開発作業部会等で議論し、大阪サミットにおいて、「G20持続可能な開発のための人的資本投資イニシアティブ」が承認されました。また、健康状態の向上を通じて人的資本の開発に貢献するために、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を開発途上国において推進するための議論が行われたほか、G20で初めて高齢化への対応を議論しました。さらに、G20においては初めてとなる「G20財務大臣・保健大臣合同セッション」が開催され、財務当局・保健当局の連携のあり方や、途上国におけるUHCの推進に向けた世界保健機関(WHO)と世界銀行の連携について議論が交わされ、「途上国におけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジファイナンス強化の重要性に関するG20共通理解」へのコミットメントが確認されました。

TICAD7においては、開会セッション・全体会合において安倍総理大臣から「今後のTICADが、民間事業活動とイノベーションを推進するNew TICADとなる」との方向性が表明され、①ABEイニシアティブ3.0を通じて産業人材を6年間で3,000人育成すること、②300万人の基礎医療アクセスや衛生環境の改善などUHCを拡大し、質の高い教育を300万人の子どもたちに提供すること、③司法・警察・治安維持等の分野を担う6万人の人材を育成すること、といった取組により、日本がダイナミックに発展するアフリカのパートナーとなっていくことが表明されました(詳細は第II部の関連ページを参照)。

…イノベーションを促進する
草の根・人間の安全保障無償資金協力「タシガン県カンルン郡における障害者のための職業訓練所及び寄宿舎建設計画」によって導入されたブータンでの職業訓練所における機織りクラスの様子。供与2年後のフォローアップ調査で撮影。(2019年4月)

草の根・人間の安全保障無償資金協力「タシガン県カンルン郡における障害者のための職業訓練所及び寄宿舎建設計画」によって導入されたブータンでの職業訓練所における機織りクラスの様子。供与2年後のフォローアップ調査で撮影。(2019年4月)

ABEイニシアティブに参加し日本企業でインターンを行ったアフリカからの研修員(ABEイニシアティブの好例について詳細は「国際協力の現場から」を参照)(写真:株式会社サンテック)

ABEイニシアティブに参加し日本企業でインターンを行ったアフリカからの研修員(ABEイニシアティブの好例について詳細は「国際協力の現場から」を参照)(写真:株式会社サンテック)

G20大阪サミットでは、自由で開かれた、包摂的かつ持続可能な「人間中心の未来社会」の実現を目標に掲げ、推進していく考えを発信し、様々なイニシアティブを打ち出しました。安倍総理大臣は、気候変動・エネルギーおよび海洋プラスチックごみ対策といった喫緊の地球環境問題への対処におけるイノベーションの活用の重要性を指摘するとともに、世界のモデルとなるべく努力して取り組んでいく旨を述べました。また、G20首脳が合意した、2050年までに海洋プラスチックごみによる新たな汚染をゼロとすることを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」の実現に向け、日本としても、途上国の廃棄物管理に関する能力構築およびインフラ整備等を支援する「マリーン(MARINE)・イニシアティブ」を発表しました(「開発協力トピックス」を参照)。女性のエンパワーメント促進については、女性の労働参画推進、質の高い初等・中等教育へのアクセス改善を含む女児・女性教育への支援、女性起業家支援などの取組が打ち出されました。さらに、SDGsの達成における科学技術イノベーション(STI)の重要性、および、STIの潜在力を活用する上で、政府、学術界、研究機関、市民社会、民間セクターおよび国際機関を含む様々な利害関係者の効果的な関与が不可欠である旨を認識し、「SDGs達成のためのSTIロードマップ策定の基本的考え方」が承認されました(詳細は「(10)SDGs達成のための科学技術イノベーション」を参照)。

TICAD7においては、日本企業の進出とイノベーションを促進し、アフリカで生じつつある経済構造転換を後押しするため、ABEイニシアティブ3.0などの支援を表明しました(詳細は第II部の関連ページを参照)。また、第一日目の全体会合2では、「民間セクター育成やイノベーションを通じた経済構造転換の加速とビジネス環境整備」をテーマに議論され、技術、ブルーエコノミー、イノベーションを活用した産業の多角化の後押し、経済発展の基盤や原動力となる特に若者の人材育成や質の高いインフラの推進、ガバナンスを含む投資環境・制度の改善、農業の付加価値の向上、投資促進のための日・アフリカ間の官民対話の更なる強化および経済成長を下支えする平和と安定や法の支配の重要性などについて活発な議論が行われました。

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