2015年版開発協力白書 日本の国際協力

匠の技術、世界へ 5

島国の太陽を電気に変える
〜ソロモン諸島で期待される沖縄の太陽光発電技術〜

ソロモン諸島電力公社の駐車場に設置された、太陽光発電装置(写真:(有)沖縄小堀電機)

ソロモン諸島電力公社の駐車場に設置された、太陽光発電装置(写真:(有)沖縄小堀電機)

ソロモン諸島は南太平洋に浮かび、100余りの小島で構成される島国で、電力のほぼ100%をディーゼル発電に頼ってきました。しかし、ディーゼル発電は二酸化炭素(CO₂)の排出により気候変動に悪影響を及ぼすことが懸念されます。また、発電に必要な石油を海外から輸入するので世界的な価格高騰の影響を受け、安定した電力が供給できなくなる恐れがあります。そこで、ソロモン諸島の政府は2020年までに発電の50%を再生可能エネルギーにシフトする方針を打ち出しました。

日射量の豊富なソロモン諸島では、太陽光発電を導入する最適な条件が整っています。国会議事堂などの公共施設にはすでに太陽光発電システムが導入され始めています。ところが、いくつかの問題点があることが浮かび上がってきました。第一の問題は、ソロモン諸島では、台風によってせっかく導入された太陽光発電システムの故障が発生する恐れがあることです。第二の問題は、現在の発電システムは送電線につながれず、それぞれが独立して使われているため、余った電力を活用できないことです。第三の問題は、いくつもの離島から構成されるこの国では、発電システムのきめの細かい保守点検や迅速な修理が困難であることです。

このようなソロモン諸島の問題の解決に役立つのではないかと注目されたのが、沖縄県でメガソーラー施設を作り、その保守・運用を手がけてきた沖縄小堀電機の技術です。沖縄小堀電機は、ソロモン諸島と同じように小さな離島が多く台風が多い沖縄で、強風にも強い太陽光発電の設備のノウハウを持っています。また、離島に点在する個々の太陽光発電システムを、広域の電力系統(電力会社の送電線)に効率的につなぎ、余った電力が無駄にならず活用できるようにするノウハウも持っています。そのようなノウハウをソロモン諸島で活かすことができるかを探るため、沖縄小堀電機は2013年10月、ODAを活用した中小企業等の海外展開支援事業※1-普及・実証事業※2を現地で開始しました。

パワーコンディショナーの点検方法を確認する現地スタッフたち(写真:(有)沖縄小堀電機)

パワーコンディショナーの点検方法を確認する現地スタッフたち(写真:(有)沖縄小堀電機)

ここで鍵となったのは「パワーコンディショナー」の小型化の技術です。「パワーコンディショナー」とは、個々の発電機を広域の電力系統につなげるための装置ですが、台風のような激しい強風にさらされれば、故障してしまうリスクはどうしても残ります。そこで沖縄小堀電機が、沖縄で活用してきたのが「パワーコンディショナー」の小型化の技術です。つまり、大型タイプのパワーコンディショナー1台だと故障した際に発電システム全体がストップしてしまいますが、小型タイプを複数台使用すれば1台が故障しても、残りは稼働し続けるため、一定の発電を維持することが可能となるのです。これは、船で修理に向かうまでに時間がかかってしまう離島にとっては大事な点です。

沖縄小堀電機は、この技術をソロモン諸島で活用してみることにしました。2015年1月にソロモン諸島電力公社の駐車場に建設した太陽光発電装置には、10キロワットの小型の「パワーコンディショナー」を5台使用しました。全体の発電量は50キロワット。日本の平均世帯でいえば約25世帯の電力を賄う発電規模です。

また、現地の技術者に対して、個々の太陽光発電設備を既存の電力系統に接続し運用するための研修を行い、問題が生じたときに対応するノウハウをまとめたマニュアルも作成しました。沖縄小堀電機の技術者の、このようなきめ細かな対応、そして何よりも故障に強く、発電量の面でも優れ、貴重な電力を無駄にしない太陽光発電設備は、現地の人々に高く評価されました。2015年10月時点で、電力公社の駐車場の太陽光発電システムは問題なく稼働し、既存のディーゼル発電と連係しながら電力を供給しています。ソロモン諸島では、この太陽光発電装置をさらに導入していくことが検討されています。

沖縄小堀電機の池原薫(いけはらかおる)さんは、「まずはソロモン諸島で実績を作り、太平洋地域の他国の島々にも展開していきたいです。当社には蓄電設備の施工技術もあるので、将来的には電力公社の電力系統(送電線)が整備されていない地域にも太陽光発電で電力を届けていきたいですね。」と語ります。

離島に強い日本の発電システムの施工・運用技術が、ソロモン諸島の電力事情の改善につながり、今後は太平洋にあるその他多くの離島のエネルギー問題の解決にもつながっていくことに大きな期待が寄せられています。


※1 ODAを活用した中小企業等の海外展開支援事業は、中小企業等の優れた製品・技術等を途上国の開発に活用することで、途上国の開発と、日本経済の活性化の両立を図る事業。

※2 普及・実証事業は、中小企業等からの提案に基づき、製品・技術等に関する途上国の開発への現地適合性を高めるための実証活動を通じ、その普及方法を検討する事業。

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