2015年版開発協力白書 日本の国際協力

(2)ガバナンス支援(不正腐敗対策を含む)

開発途上国において、経済が発展する中で、公務員の収賄など汚職事件が発生し、これが国家の健全な経済発達を妨げる要素ともなっています。「質の高い成長」のためには、経済社会活動が公正かつ安定的に運営されることが前提となります。公正かつ安定した社会の実現のため、開発途上国における不正腐敗対策を含むガバナンス支援にも取り組む必要があります。

 

< 日本の取組 >

日本は、腐敗対策について、2014年度に約8万ドルを犯罪防止刑事司法基金(CPCJF)(注41)に拠出し、東南アジア諸国法執行機関向けに外国公務員贈賄事案における国際協力に関するハンドブックを作成するなど、腐敗対策の取組強化に貢献しています。

法務省では、UNAFEIを通じて、アジア・太平洋地域を中心とした開発途上国の刑事司法実務家を対象に、「汚職事件の効果的な予防・摘発と汚職犯罪収益の特定・追跡・保全・没収及び財産回復」をテーマとした汚職防止刑事司法支援研修を実施しました。汚職防止刑事司法支援研修は、国際組織犯罪防止条約および国連腐敗防止条約上の重要論点からテーマを選出しており、各国における刑事司法の健全な発展と協力関係の強化に貢献しています。

ほかにも、東南アジア諸国の「法の支配」と「グッドガバナンス(良い統治)」の確立に向けた取組を支援するとともに、刑事司法・腐敗対策分野の人材育成に貢献することを目的として、2007年から「東南アジア諸国のためのグッドガバナンスに関する地域セミナー」を毎年1回開催しています。2014年はマレーシアのクアラルンプールで、「汚職事件の捜査、訴追及び公判における現状と問題点」をテーマに開催しました。


  1. 注41 : 犯罪防止刑事司法基金 CPCJF:Crime Prevention and Criminal Justice Fund

●モンゴル

調停制度強化プロジェクト(フェーズ2)
技術協力(2013年4月~実施中)

「家事事件の心理」の研修受講者(写真:JICA)

「家事事件の心理」の研修受講者(写真:JICA)

モンゴルでは、1990年の市場経済化以降、経済活動の活性化等に伴い、市民間のトラブルが絶えなくなりました。市民や企業の権利を保障する法制度の整備や紛争解決のための手段を多様化するニーズが高まってきました。特に、簡易な事件や話し合いによる解決に適した少額の金銭請求事件や離婚事件などを調停によって解決することに対する必要性がモンゴル国内において高まりました。「質の高い成長」による安定的な発展のためには、公正で安定的に運営される社会が基礎となります。調停制度の導入により、市民が納得する形で早期に合理的な紛争解決を図ることが急がれていました。

日本は2010年から、このようなモンゴルにおける一般民事および家事事件における調停制度導入のための調停人養成、制度構築等を支援してきました。その結果、2012年に、モンゴルは調停法を成立させ、全国の一審裁判所に調停制度を導入する方針を打ち出し、2013年に日本は「調停制度強化プロジェクト」フェーズ2として、調停制度の本格導入と定着のための支援を開始しました。

このプロジェクトでは、日本から調停制度の専門家をモンゴルに派遣して、多くの調停人養成研修をモンゴル全土で実施し、これまでに505名の調停人資格保有者を養成しました。また、調停人資格保有者には訪日研修を通じて日本の制度を学ぶ機会が提供されました。さらに、日本は、調停制度の全国導入に向け、モンゴルの全国37か所の裁判所に調停室を整備し、パソコンや調停実施用テーブルなどの機材提供も行ってきました。このほか、モンゴルの司法機関と協力し、必要な調停制度の設計および実務運用の改善にも取り組みました。その結果、現在モンゴルでは、常勤調停人および書記官が全国の一審裁判所にて勤務し、全国で本格的に調停が実施された2014年2月から12月の間にも調停件数は6,427件に上っています。

モンゴルでは日本の支援で「質の高い成長」に向けた司法制度の整備が進んでいます。

このページのトップへ戻る
開発協力白書・ODA白書等報告書へ戻る