ODAとは? ODA改革

「ODA総合戦略会議」第6回会合・議事録

1.日時

 平成14年12月20日(金)8:00~10:10

2.場所

 外務省飯倉公館

3.出席者

 ODA総合戦略会議委員(ただし、川口外務大臣(議長)、新藤政務官、浅沼委員、小島委員及び宮原委員は欠席)。外務省(事務局)より古田経済協力局長他が出席。関係府省、JICA(国際協力事業団)及びJBIC(国際協力銀行)がオブザーバー参加。

4.議論の経過

(議事の概要)

 ODA大綱の見直しについて、「基本理念」についての論点整理につき草野委員よりタスクフォースの報告があった。
 次に、国別援助計画の新規策定候補国についての議論が行われ、とりあえずインドネシア、インド、パキスタン、モンゴルを今後の新規策定候補国とすることが合意された。
 続いて、古田経済協力局長より、「ODA改革:三項目の実施について」(平成14年12月10日発表)の概要説明があった。
 さらに、対ベトナム国別援助計画の見直し及び対スリランカ国別援助計画の新規策定について、大野委員、牟田委員よりそれぞれ経過報告がなされた。
 次回(第7回)会合は、平成15年1月27日(月)8時に開催予定。

(1)ODA大綱の見直し(タスクフォースの報告)

(渡辺議長代理) おはようございます。ただいまから「第6回ODA総合戦略会議」を開催致します。本日は、基本的には4つのテーマについて議論をしたいと思います。
 第1番目は「ODA大綱の見直し」についてです。かねてより草野委員を中心にまとめて頂いていますが、タスクフォースの議論を報告して頂きます。最終段階の議論に入っていませんので、簡単な報告になると思います。
 第2は、国別援助計画新規策定候補国の選定基準についてです。これは前回会合でも議論がありましたし、その上委員にアンケートをさせて頂きました。私はすべて読みましたが、非常に貴重の意見が多く述べられていました。それらに基づき、事務局として一応の選定基準を出しておりますのでご議論頂きたいと思います。
 第3は、12月10日、川口大臣より発表された「ODA改革:三項目の実施について」です。概要を改めて事務局からご報告を頂きます。
 第4に、対ベトナム国別援助計画の見直しについてです。これは前回行う予定でしたが、時間が足りず、できませんでしたので、本日大野委員よりご報告をお願い致します。また、対スリランカ国別援助計画の策定について、タスクフォースの活動状況をご報告頂きます。
 その他、事務局よりODA予算について報告があります。
 まず、「ODA大綱の見直し」について、草野委員を長としましたタスクフォースでは、ODAの理念と目的のうち、理念部分についての議論を頂いています。前回会合の際、大野委員からもご意見がありましたが、基本理念はそれに続く国別援助計画新規策定候補国の選定基準とも関わるテーマであるということで、少々お急ぎ頂きました。草野委員より今までの議論の経過報告をお願いします。

(草野委員) タスクフォースにおけるこれまでの議論、特に今回は「基本理念」についての論点整理について、ご報告をさせて頂きたいと思います。本会議からご指示のありましたタスクフォースの目的、機能をもう一度確認したいと思います。策定から10年経ったODA大綱の見直しをする。その際、平場の大きな会議で論点検討するのは、効率的ではないので論点整理をするということであったと思います。前回、大野委員より、国別援助計画の策定にあたっては、特に「基本理念」が見えないとなかなか議論しにくいのではないかというご指摘もありましたので、既に午前7時30分から3回、タスクフォースメンバー、事務方もともに議論をし、まとめたものを報告させて頂きます。
 「1.ODAの目的」について、(1)ODAの目的としては、(イ)人道主義、(ロ)相互依存の観点(「国力相応の責務」やグローバリゼーションの視点も含む。)、(ハ)我が国の安全と繁栄(例としてエネルギー等の対外依存を挙げる意見もあった。)の要素が挙げられることで意見が一致した。(2)「基本理念」の具体的表現ぶりとしては、「国益」という言葉は多義的なものであるので、「我が国の安全と繁栄」という言葉を使うべきことで概ね意見の一致を見た。(3)このため、上記(1)の各要素を記述する順番については、特に意見の一致はみられなかった。
 「2.国際社会の特徴」について、(1)ODAの背景となるグローバリゼーションの進んだ国際社会の特徴については、(イ)貧富の格差の拡大、(ロ)民族的・宗教的対立と紛争、テロ、大量破壊兵器の拡散等の不安定要因の深刻化、(ハ)環境等の地球規模問題、(ニ)人権及び民主主義の抑圧の存在が挙げられることで意見が一致した。(2)なお、上記諸点の一部を感染症等も含め、「人間の安全保障への脅威」という観点からも整理しうるという意見も支持をされた。
 「3.アジア重視」について、(1)「アジア重視」を「基本理念」の中できちんと位置づけるべきとの意見が多く出される一方で、アジア重視の考え方は「重点地域・分野」の箇所に入れれば十分との意見も出された。また、いずれにせよ、「基本理念」に最低限アジア重視の考え方をきちんと導ける論理を記述すべきとの指摘も出された。(2)この関連で、「基本理念」で我が国のアジア諸国への援助が、一定の成果を収めたことを指摘すべきとの意見が多く出されたが、その表現ぶり(「一定の」、「かなりの」等)について異なる意見があった。また、成果に言及するなら問題点があったことも言及すべきとの意見も出された。
 「4.その他」について、(1)「ODAの目的」と「国際社会の特徴」の順番をどうするか、「ODAの目的」を最初に書き、次に「国際社会の特徴」とする順番の方が、メッセージとしては明快ではないかという意見がある一方、ODAの責務性を強調する観点から「国際社会の特徴」をまず挙げ、そして「ODAの目的」の順番の方が良いのではないかという意見も出された。(2)「平和構築・平和の定着」について、「平和構築」(または、「平和の定着」、「紛争後の復興支援」等)に言及すべきことで意見が一致した。(3)国民参加について、「基本理念」にODAが国民参加の下で行われることを盛り込むべきことで意見が一致した。この関連で、主語を「日本は、NGO、個々の国民が協力して国民参加の下」とすべしとの意見が出された。
 以上です。お気づきの点も多いかと思いますが、かなり注意深く議論をまとめました。従って、「一致は見られなかった」とか、「一致した」とか、「意見も支持をされた」という微妙な表現ぶりになっており、議論の内容を皆さんお感じになることができるのではないかなと思います。とりあえずはこのような形でまとめさせて頂きましたが、1月末の「ODA総合戦略会議」に向け、更に年明けに2回タスクフォースを開催し、その他の論点や構成をどうするかということも含めて、事務方とも一緒に議論をし、論点整理としてご報告をさせて頂きたいと思います。以上です。

(渡辺議長代理) ありがとうございました。ご報告のように、「基本理念」で、既にこれだけの意見が出ています。一致しているところも多いように思いますが、デリケートな点での食い違いもあるように思います。現在、議論はハーフウェイ近くだと思いますが、まだ半分残っています。従って、今議論するよりもひとまず論点が全体として整理できたところで、議論を本格的にやるという方が良いと思います。といって、議論を封ずるつもりはありませんので、現時点で御意見があれば、簡単におっしゃって頂いても良いと思います。

(草野委員) その前に申し上げておきたいのですが、皆さんご自身に、年末から年明けに向けて、ODA大綱見直しについて、基本理念を含めたその他の部分の頭の整理に使って頂きたいので、なおさら本日本格的に議論するよりは、1月末以降に議論させて頂きたいと思います。

(大野委員) 以前行ったように、メールで受付け、それをタスクフォースに流し、また、議長や議長代理が読み、それを加味して頂くというのはわりと効率的ではないでしょうか。

(渡辺議長代理) おっしゃるとおりです。目的の論点整理ができるのはいつでしょうか。

(草野委員) その他の部分含め、全部1月末です。「基本理念」の部分がこのように論点整理がされました。この次の箇所に関してもかなり議論をされておりますので、テンポアップして1月末には全て報告をさせて頂くつもりです。

(渡辺議長代理) そうであれば、「基本理念」や目的と言わずに、ODA大綱全体についてのコメントを事務局を通じてお渡し頂き、これを大綱タスクフォースに回すのはいかがでしょうか。

(西岡委員) いつごろまでに出せば良いのでしょうか。

(渡辺議長代理) 1月7日の次回タスクフォース会合にそれを使った方がより効率的ですね。

(草野委員) 従って、お忙しいとは思いますが、年末までに頂ければ大歓迎です。本日もおっしゃりたい方はたくさんいらっしゃると思いますが、本日は議論できませんのでメールで頂ければと思います。

(渡辺議長代理) 年明けに整理するためにも、年末までに出して頂きたいと思います。

(草野委員) 効率的に作業を進める点からは、1月末に全体の報告を行い、さらに1ヶ月間議論をするという当初のスケジュールがあります。従って、タスクフォースとして「基本理念」やその他の部分に関して、コメントは頂きますが、我々は我々なりに全体の構成を含めて議論を整理してご報告をするということで了解頂きたいと思います。

(渡辺議長代理) 私は始めからそのように理解しています。ただし、最後が論点整理では少し具合が悪いのではないかと個人的には考えています。胸を打つ文章に成文化して、「ODA総合戦略会議」の案として出す方が、影響力が強いと思います。このような意見、あのような意見もあったということでは少し弱いだろうという気がします。従って、何れかの時点で草野委員と相談しながら、私も少しは尽力してみたいと思っています。

(磯田委員) 最初の文章の文言ですが、「1.ODAの目的」の(1)(イ)の人道主義という言葉について、会議でも主義という言葉は使っていませんでした。人道主義というと違うニュアンスが入るかもしれませんので、人道的観点という文言にして頂きたいと思います。

(渡辺議長代理) わかりました。そのように修正させて頂きます。

(磯田委員) この会議の第1回、第2回目に「ODA総合戦略会議」向けに様々なパブリック・コメントをホームページでも受けようということになっていたかと思います。ところが、現在、「ODA総合戦略会議」のホームページを開きますと、会議そのものについて意見を書き込む箇所はないように見受けられます。(事務局より、意見募集欄がある旨発言)ベトナムのことだけではなく、ありますか。では結構です。私が見ても見えなかったくらいなので、大きくと書いて頂きたいと思います。


(2)国別援助計画新規策定候補国(選定基準等)

(渡辺議長代理) 次に、第2のテーマ、国別援助計画の新規策定候補国に関わる選定基準についてです。私の案として皆さんからアンケートさせて頂き、非常に考えさせられる記述を数多く頂きました。その上で事務局で一案を作成しましたので、古田経済協力局長より説明し、議論に入りたいと思います。

(古田経済協力局長) 資料3は、先ほどお話がありましたように、各委員からご意見を頂戴し、それを整理させて頂いた上での一案です。機械的に整理するのは難しいですが、できる限りご意見を踏まえて整理をさせて頂きました。本資料の最後にAからMまで固有名詞を付さずに、頂いた意見を多少分類して整理をさせて頂きました。(1)戦略上の重要性、特にアジア重視という観点からのご意見、(2)グローバルな課題に配慮するべきという視点、また、(3)援助量、それについては絶対量及び当該国に占める我が国の援助のシェアを考慮するべきという意見、(4)人材や情報等我が国が実績面で比較優位にある国を積極的に取り上げていくべきというのが論点です。さらに、(4)その他として、被援助国の発展段階等があります。そして、結論として候補国の選定基準についてご意見がありました。
 以上を踏まえて、新規の国別援助計画策定基準として、大方の意見の一致があった絶対量だけではなく、我が国の援助のシェアを含めた援助量の問題、また、戦略上の重要性、特にその結果としてのアジア地域重視という観点は出てくるのではないかというのが第1基準です。また、第2基準としては、グローバルな課題への対応として、貧困、エイズ、平和構築、復興、環境、グッド・ガバナンス等の課題を念頭において選んでいくというアプローチ、また、地域バランスを良く考えるべきということです。(参考)欄にありますが、既に策定済みの15カ国を見ますと、アジア7カ国、アフリカ4カ国、中南米2カ国、中近東2カ国というバランスになっています。
 2ページ目について、援助の量あるいは戦略上の重要性という観点からの考察ですが、2000年実績で量的に1位から30位まで並べたものが(表1)です。そのうち青色がすでに策定済みの国、緑色のスリランカは現在策定をお願いしている国です。
 その上で、どのような国を対象にしていくべきかということです。援助量の最も多いインドネシアについては、スハルト政権崩壊後の様々な流動的な状況があり、これまで策定を見合わせていたましたが、援助量、また、戦略的重要性という観点からみても、当然策定しなくてはならないと思われます。5位のインドと7位のパキスタンについては、98年の核実験に伴い経済措置を講じていましたが、昨年その措置を停止しました。そのような状況を踏まえ、国別援助計画を策定すべきではないかと考えられるわけです。さらに、ブラジル以降について、一言づつ申し上げます。ブラジルは中進国という位置づけで、有償の対象にかなり限定がかかり、また、現在円借款の進捗状況が非常に悪く、新規の供与がなかなか難しくなっていますので、これをどのように考えるかという問題があります。トルコは、地震への対応としてかなりの額は出ていますが、OECD加盟国であり、中進国なので、無償資金協力の対象からは既に卒業していますし、有償も環境、人材といったテーマに限定されますので、これらをどのように考えるか。ラオスについては、メコン全体をどう考えるかという観点から検討が必要です。ヨルダンについては、無償は既に卒業していますし、債務問題から新規の円借款は困難という状況です。モンゴルについては、きちんとした計画を策定し、それに則って支援をしていくということで、首脳レベルでの意図表明がありますので、これには答えていく必要があるのではないかと思います。
 第2基準については、グローバルな課題に直面する国ということで、どのような切り口で取り上げるのか難しいですが、大胆に割り切り対象国をDAC上の低所得国として、それを援助量の多い順序に並べてみたのが(表2)です。これを見ると、やはりインドネシア、インド、パキスタンが上位にきており、それからラオス、モンゴル、ネパール等というようになっています。ネパールは治安問題等の不安定要因が多少多い印象がします。ジンバブエについては、現在無償を凍結しています。この表の中ではエチオピアがアフリカでは人口が第2位で最貧国ですし、復興支援等で援助は増えつつあるということをどのように考えるかです。
 以上を踏まえ、新規の国別援助計画策定対象候補国として、インドネシア、インドとパキスタンは規模から見ても、戦略的に見ても早急に策定して頂きたいと考えます。また、モンゴルについては、首脳間での合意もありますので、対応していく必要があると思います。これらの国はアジア地域ですので、加えるとアジア地域が全部で12カ国になります。
 さらに、後発開発途上国から1、2カ国選ぶとすると、例えば、ラオスとエチオピアというようになるのではないかと思います。ただし、ラオスはアジアですので、地域バランスをどのように考えるかという問題があります。仮に、後発開発途上国を1カ国とした場合には、例えば、中央アジアからカザフスタン、中南米からブラジルというのも一案ではないでしょうか。
 以上、2つの基準に照らしてみると、このような国がクローズアップされてくるのではないでしょうか。これらの国を平成16年までに策定をお願いすると22カ国となり、我が国援助総額の約6割をカバーすることになります。平成17年以降については、既存の計画についても見直すべきだというご意見もあると思いますので、この22カ国を中心に回していくか、あるいは新規に更に追加をするかというようなことは改めてご検討を頂きたいと思っております。
 最後に、「4。策定済み国別援助計画のレビュー」について、この「ODA総合戦略会議」発足前にできている国別援助計画について、運用状況を逐次レビューをし、この会議報告し、必要があればその改定に取り組んで頂くということを考えています。

(渡辺議長代理) ありがとうございました。ご説明頂いた国別援助計画策定基準とその基準に基づく策定候補国を取り上げて頂きましたが、この点についてご議論を頂きたいと思います。

(青山委員) 前回もご質問申し上げましたが、これまでの国別援助計画はどのような基準で策定してきたのでしょうか。インドネシアのように、援助額・援助シェアの大きい国に対して、国別援助計画を策定しないままにODAを実施してきたということには問題があるような気が致します。国別援助計画を策定しないまま多額の援助を行ってきたのには、どのような理由があったのでしょうか。

(古田経済協力局長) 従来の新規候補の考え方では、基本的に援助量を中心に、ある程度地域バランスを加味してきました。その意味では、今回の第1基準の援助量と第2基準の地域バランスは配慮してきたつもりです。インドネシア、インドやパキスタンという大所について策定してこなかったのはなぜかということですが、先程も申し上げましたが、インドネシアでは1998年のスハルト前政権の崩壊以降やや流動的な状況が続いており、中期的な国別援助計画を策定するには少し様子を見た方が良かったということです。インドとパキスタンについては、核実験に伴う経済措置を適用して援助を停止していました。昨年、その経済措置を止め、さらにこれから援助が実施され始めますので、これから策定して頂くことになるのではないかと思います。ここに出ています数字は支出純額ですので、過去に供与を約束したことが実行上出てくるまでにタイムラグはどうしても出てきます。以上です。

(大野委員) 皆さんのまとめられた表をみて、非常に良いと思います。4点申しあげます。まずアジア重視ということにはほとんど異論はないと思いますが、具体的に、例えば何割程度をアジアに振り向けるかとか、先ほどカザフスタンはアジアではないとかおっしゃいましたが、ではどこまでをアジアとするのか。インドとパキスタンは、東アジアと言えば当然入らないと思いますが、アジアに入るのか。地理的な部分は多少あいまいなところがあります。アジア重視は問題ありませんが、具体的に詰める際に、どこまでを国益等の総合的観点からアジアと考えるのか、あるいはグローバルな観点から見た時にどこに線を引くのかというようなことについての詳細は非常に重要になると思います。
 第2点目は、アジア重視や国益重視といった日本との関連を重視することと、それがなくても援助を行わなければならないということを多くの委員が出しているのは非常に良いと思います。草野委員のおっしゃったグローバル化されて状況が変わり、相互依存が深まってきたということは、目的ではなく背景として入れた方が良いと思います。そうすると新しいグローバル環境というのは、今申し上げた2つ、すなわちアジア重視とグローバルに分解できるのではないかという気がしています。
 第3番目に、これも表を見て非常に良いと思ったのは、現在どれだけ援助をしているか、あるいは現在どれだけ人材と情報があるかということも大事ですが、例えばA委員がおっしゃっていますが、必要ならば、国別援助計画策定に際して比較優位にこだわらず、戦略的に人材育成・情報収集を進めるというように相互の現実と計画の相互のフィードバックは非常に大切なことであると思います。
 4番目に、数名の委員より発展段階を考慮するという記述がありますが、これも非常に大事なことで良いと思います。発展段階だけではなく、所得や発展段階が同じでも、砂漠の内陸国と海に面して東アジアにある国では違いますので、経済学でいう初期条件のようなものも考慮するべきであると思います。
 以上がこの表についての意見ですが、事務局案について、どの国を入れるということについては、凡そ古田経済協力局長のおっしゃった方針で良いと思います。ただし、前から気になっているのは、既存と新規の国別援助計画の問題です。もちろん、外交的というか対面的には、おっしゃった国別援助計画を全て策定すれば援助総額の6割はカバーできますが、既存の国別援助計画の中身を実際に読んでみると、1つの計画とは数えられないものがあると思います。従って、事務局案に書いてありますが、不十分な国別援助計画については、ほとんど新規と同様の努力をして改定することも十分に念頭に入れて頂きたいと思います。

(伊藤委員) 大野委員のご質問、ご意見をフォローしたいと思います。既存の国別援助計画について、当初は全てご破算になったと理解をしていました。対ベトナム国別援助計画の見直しを始めましたが、他にも必要になれば、策定済みの国についても事務局案では逐次レビューすると書いてあります。その際、できるだけ早い段階で委員に通知して頂ければ、今後の国別援助計画を考える時にも、非常に参考になるのではないかと思っています。国別援助計画が策定された国については、現在どのような状態なのか、計画に沿って既に援助が実施されているのかどうかということも知りたいと思います。

(草野委員) 国別援助計画策定とODA大綱の見直しとの関係を改めて確認をさせて頂きたいと思います。通常はODA大綱がきちんとあって、しかも前回大野委員からご指摘がありましたように、「基本理念」がきちんと整理された上で国別援助計画が出来上がる方が筋だと思います。非常に安心したのは、本日の事務局案は、我々の議論とかけ離れたものではまったくないということです。
 とりわけ戦略性の重要性の中にはアジア地域重視も含まれています。ただし、アジア地域重視の書きぶりに関しては、先程ご紹介しましたように、様々な意見があります。もう1つのグローバルな課題への対応については、大方この平場で議論してもコンセンサスを得られるものだと思います。
 残りの援助量と地域バランスに関しては、「基本理念」には直接は関係ないと思いますが、この2つの論点、戦略性の重要性とグローバルな課題への対応については、自動的にODA大綱「基本理念」に入る、この事務局案に議論が縛られると理解して良いでしょうか。

(渡辺議長代理) 古田経済協力局長、まずは草野委員の質問だけにお答え頂けますか。

(古田経済協力局長) ODA大綱については、予断なしに見直しをしようということで、様々なご意見を頂いていますし、今後広く議論をしながらまとめていくプロセスに入ると思います。そのような意味では、現時点でこれは自動的にこうなるということはなかなか申し上げにくいのですが、これまでのこの「ODA総合戦略会議」でのご議論や草野委員のタスクフォースでの議論を含め、戦略上の重要性とグローバルな課題への対応が、表現はともかくとして、「基本理念」や原則の中に入らないのは、考えにくいのではないかと思います。

(磯田委員) 先程の青山委員のご質問と同じことをお伺いしたいのですが、インドネシアで国別援助計画を策定していなかった理由はなぜかではなく、青山委員のお聞ききになったのは国別援助計画を策定していないのにも関わらず、援助額が多かったのはなぜかというご質問であったと思います。
 援助額が多い国について、国別援助計画を策定する必要があるということはそれなりに理解を致しますが、戦略があるので、援助額が多いはずであり、そこは順序が逆転しています。そこで多額の援助を供与する条件をどのように決められているのかをお聞かせ頂きたいと思います。それがなくて援助額の多い国の戦略をその先作っても、逆転しているような印象を受けます。
 その意味では、大野委員がおっしゃったように、現行の援助額の多いところだけではなく、地球規模の課題に取り組む必要がある国をきちんと優先順位をつけて、今後さらに取り組んでいくという姿勢を打ち出す形で戦略を作っていくという国が出てくるべきであると考えています。
 ただし、援助額の多い国でこれだけ国別援助計画が策定されていないという現状を考えると、当面策定するべき順序としては、既に援助額が多い国で、国別援助計画を策定していない国を優先するということ止むを得ないのではないかと考えています。
 ただし、平成17年以降については、もう一度きちんと洗い出しておく必要があると考えています。伊藤委員がおっしゃった今までの国別援助計画の運用状況や実施状況のレビューをきちんとしなければならないと思います。この会議で策定した国別援助計画がどのような役割を果たしているのかをきちんと視野に入れて策定していかなければならないのではないかと考えています。そして、そのレビューはどこでするのかといった仕組みについても検討が必要ではないか思っています。以上です。

(荒木委員) 既に国別援助計画を策定済みの国について、現在ベトナムについて見直しを行っています。ベトナムの場合は、石川プロジェクト・チームが入り、「第2次ODA改革懇談会」で提言された重点化についてはかなり進んでいる印象がありますが、他の策定済みの国については、重点化という新しいニーズを満たしていない国が多いと思います。従って、策定していないのと同じような印象を受けています。非常に重要な国が多くありますので、重点化についての見直しを早急に行うべきであると考えています。
 第2点は、アジア重視について、インドシナ半島政策を考えるとラオスだけが国別援助計画を策定されていないというのは、問題があるのではないかということです。将来はミャンマーも加わるかもしれませんが、ベトナム、カンボジアとラオスをおさえていきたいと考えています。

(砂川委員) 国別援助計画は今後援助をどのように行っていくかという先の話だと思いますが、その場合、第1基準の順番は逆ではないかと思います。将来に向けた場合、戦略上の重要性の方が重要です。援助量は、今まで行った援助が積み重なって大きくなっているという話ですので、むしろ後追いの議論ではないかと思います。また、援助が本当に効果があったかという視点が中心になってくると思いますので、やはり選定基準としては逆であろうと思います。
 次に、戦略上の重要性について、ここでは戦略がアジア地域重視とイコールになっている気がしますが、戦略上の重要性は他にもあると思います。戦略の多様性についてもう少し議論をして頂きたいと思います。私は、どちらかというと第2基準に入っているグローバルな課題が戦略上の重要な要素になってきているのではないかと思います。特に9月11日以降は、これが余計クローズアップされてきているのではないかと思います。
 援助量ついて、私は援助量があるので被援助国に対して日本が非常に影響力を持っていると思っていますが、被援助国側はどのように思っているのかという視点が重要です。すなわち、援助を多く受けとっているので、「日本の言うことは聞く、しかし批判はある」ということでは非常に良くないので、援助額が多い国については相手国を重視した対話を重視するべきであると思います。しかし、実際、対話ができるかということでは、例えば、インドネシアは、果たして現在本当に対話ができる状況にあるのでしょうか。インドネシアの援助計画の作成には大賛成ですが、政府の安定性が非常に難しい状況にあると思います。また、国別援助計画は相手国の事情をわきまえた上で作成されなければなりませんが、我が国が大事だと思っていることに対し、対話を通じて、本当に被援助国は意見が言える状態にあるのか、無理におしつけていないか、という疑問も感じます。
 3点目は、委員皆さんがおっしゃっていますが、やはり国別援助計画の改定も非常に重要だと思います。新規策定をするだけではなく、既存の計画を見直すことが大切だと思います。アジア以外の国についても多く国別援助計画を策定しているので、それを再度見直す中で、新しい要素を入れていくことが重要であると私は思います。

(千野委員) 皆さんがおっしゃっていることの繰り返しにもなりますが、私自身それに共感をしている意味から申し上げたいことが2、3点あります。先程伊藤委員もおっしゃいましたが、私も見直しは大切であると思います。「ODA総合戦略会議」は、2002年6月に発足しました。国別援助計画の策定をする際に、すでにいくつかのの国は策定済みということでは、我々としてはゼロから策定するという気持ちであったのが、途中から始まっているという印象を持った方が少なくないのではないかと思います。既存の計画があるのは良いことですが、その計画がどのようなものなのかということをレビューすること、そして平成17年以降の新規策定予定の中に、既存の計画を絶えず見直していくという視点をルール化するということは、効果の点からも大切なのではないかと思います。
 それからインドネシアについて、何人かの方から様々な角度から意見が出ていますが、私はスハルト政権崩壊の時に特派員として取材をしていた際、日本の援助が非常に多いということも含めて感じたことがあります。スハルト政権はある意味ではしっかりしていたので対話の相手として成り立っていたということがありますが、インドネシアの国民の中に、あれは日本政府とスハルト政権がやっていることであり、自分たち国民にはあまり及んでいないのだという意識がかなりあったと思います。事実であるかどうかという点に関しては、私は必ずしもそうであるとは思いません。インドネシア国民の中に日本のODAが染み通っていったという事実ももちろんありますが、そのような意識が広く浸透していったことも事実であると思います。いきなり増えた訳ではなく、積み重なって増えていったということ、かつ、政権をてこ入れするという側面もあったであろうと理解しています。
 砂川委員が「話す相手があるのか」とおっしゃいました。私もその通りだと思います。しかし、そのような政権が現れるまで待つのは、インドネシアの場合非常に難しいという気もします。従って、どこかで対話をし、国別援助計画を策定していかなければならないとも思います。
 先程から戦略性という話が出ていますが、インドネシアが日本にとってどのような戦略性を持つのかという観点が大事だと思います。現在、戦略という言葉がはやっていて、日本には戦略がないとか、様々な意味で戦略という言葉が多用されていますが、もう少し具体的に議論する必要があると思います。インドネシアに限らず策定国の基準について、相手国があってODAを実施しますので、日本が国別援助計画を新規策定していることを相手国の中にどのようにインプットしていくことができるかということも考える必要があるのではないかと思います。

(牟田委員) 今までの議論とは違うことを申し上げるかもしれませんが、国別援助計画は一度策定されると、未来永劫効力を持つというものではなく、凡そ5年程度が賞味期限であると思います。したがって、どのような計画であっても、策定から5年後には国別評価を行って、援助計画で目指したものが実現されたかどうかということを当然評価すべきであると思います。そして、その評価に基づいて、また新たにその国別援助計画を書き直すというのが原理原則だと思います。5年経って見直すのを多少早め、4年経って見直すことは当然あってもいいと私は思います。
 しかし、現実問題から考えて、年に10も20も国別援助計画を作れる訳がありません。最大年間5、6つです。そうであれば、5年間程度の計画であるとすれば、多すぎるかもしれませんが最大30程度の国について国別援助計画を作り、順次ローテーションするということではないかと思います。従って、私は順序あまり重視はしていません。どのみち全部やる。それを今年やるか来年やるかだけの違いです。考え方からいえば既存の計画を見直すことは当然ですが、現在国別援助計画がなく、しかも援助量の多い国について早急に策定することは極当たり前の話という気がします。
 従って、事務局案はこれでよくて、それから見直しを1ヶ国程度考えれば、4、5年すれば30程度の国は全てカバーできることになります。そして、一度国別援助計画を作れば、必ず4、5年で国別評価を行い、それをテコにして再度作り直すというルーティン作業ができれば良いと思います。数年でそのような体制ができるのではないかと思います。どれも大切だと言えば、それはその通りですが、現実問題から考えれば、この事務局案で私は良いと思います。

(西岡委員) 私も牟田委員と同じ意見です。皆さんがおっしゃっていることは正しいと思いますが、やはり時間というものがあります。また一方で、計画の見直しについては、大野委員がおっしゃったようにやり方を変えようということで、本来から言えば、外務省の事務局にこういうのを作って頂いて、この会議に提示して頂けばもっと早くできるのですが、この会議が一件一件やっていこうということになったので時間もかかってしまうのです。
 従って、この間二ヶ国に加え、まずはこの3ヶ国について策定し、本当にこのサイクルでうまくいくのかを見てみる必要があると思います。未来永劫見直しばかりやっていていいのかという問題があると思います。
 どの国について策定するのかということを年中議論するのではなく、もう少し事務局を使いながら作業する方向に考えていかなければ、いつまで経っても終わらないと私は思います。まずはこの3ヶ国についてきちんと策定した上で、その後どの程度の時間でいけるかということを考えてみることが重要である思います。

(草野委員) 牟田委員と西岡委員がおっしゃったことを別の角度から申し上げたいと思います。実は予算システムを考えますと、現在議論している平成15年度のODA予算を含めた国の一般会計予算が確定してから国別のODA予算が立てられると思います。そうであれば、ある国別援助計画を作っても、その効果が出るまでにはかなりの時間がかかると思います。国別援助計画を作れば、直ちにその成果が反映されるわけではありません。
 牟田委員がおっしゃったように、出来上がった計画によってどのような成果が出てくるかというのは時間が経たないとわかりません。もちろん見直しの重要性はよくわかりますが、予算システムをわかった上で議論するのが良いのではないかと思います。
 従って、早急に見直すことには、やはり慎重であるべきだと思います。すでに作った計画について、成果が出るのには最低3年かかります。その意味では、事務局が調べればわかることですが、国別援助計画は確かバングラデシュやタイがスタートだったと思いますが、すでに3年経過しているものがあるのであれば、予算年度から考えてもある程度の効果は出てもいいと思いますが、例えば中国などはできたばかりだと考えますと、その成果が出てくるのはまだ2、3年後ではないかという気がします。

(千野委員) 皆さん早急に見直すということを強調されていますが、私は必ずしもそうではなく、柔軟に見直すということではないかと思います。

(伊藤委員) 砂川委員がおっしゃった戦略上の重要性という言葉が意味することについて、ここでは地域性を重視した議論が中心であったと思います。しかし、砂川委員がおっしゃったように、必ずしも地域性だけにこだわらず、グローバルな視点からの戦略性を持つ必要があるのではないかと思います。この会議でまだ議論されていませんが、ご存じのように2000年に世界の首脳が集まって、2015年までに貧困人口の比率を半減させるとか、飢餓に苦しむ人口の割合を半減させるとか、環境破壊の状況を阻止し、回復の方向へ向けるという8つの目標からなるMDGs(ミレニアム開発目標)が設定されました。このMDGsは、もともとは日本政府が音頭を取って作りあげた数値目標が基礎になっていると私は聞いています。1996年にDACの上級会合で当時の畠中経済協力局長が出席され、そのような提案をされたと聞いています。ところが、この数年間、そのような積極的な態度は薄れ、特に2002年3月にメキシコのモンテレーで開かれた国連資金開発会議では、日本政府は非常に消極的になっています。戦略上の視点から言っても、国際社会がMDGsの達成に向けて動こうとしているのに、日本政府がこうしたグローバルな努力に消極的になることはマイナスだと思います。おそらくODA大綱も英語に翻訳されるでしょうから、世界の理解と支持を得る上においても、MDGsの達成に日本政府が積極的に参加することを大綱に明記した方がよいと考えます。

(大野委員) 砂川委員、千野委員、そして伊藤委員の意見に非常に賛成です。一つ申し上げたいことは、30カ国程度を決め、それをまわしていくことばかりやっていていいのかということですけれども、この間始まった議論であって、永遠にこの議論をする訳ではありません。まず現在議論しているのは、最終的に入る30カ国はどの国になるかという議論です。従って、本日の1時間議論しただけでは、十分だとは言えません。既に過去6回、毎回議論しているという印象は全くなく、今回初めてであると思います。現在の議論は日本の援助がどうあるべきかという根幹に関わる部分ですので、その議論を拒否することは私には理解できません。
 また、草野委員は策定済みの計画は数年待たなければならないとおっしゃいましたが、実際に既存の国別援助計画を読みますと、中国については少しタイプが違いますが、まずその国はどのような状況であるとか、重点分野は農業であるということ等が書いてあります。これを評価するといっても、目標が書いていないので達成できたかどうか何年待ったって評価できないのです。
 従って、ある目標がはっきりと書いてあればいいのですが、その目標がないのでご破算にした方がいい計画が多いと思います。
 砂川委員の意見については、非常にいいと思いました。本日の配布資料にも書いてありますが、戦略的にどの国が重要かということにはもちろん、日本の援助量の絶対金額は影響します。しかし、それだけではなく、被援助国から見た際、全てのドナーが同じように集中して援助していれば、日本がどんなに多く援助していても日本の援助パターンが世界の援助パターンと変わらない限り、特に日本の援助の影響力が大きいということにはなりません。従って、被援助国にとって日本の援助の占めるシェアも大切であるということです。
 それから頂いた資料によると、日本がバイで一位であるとか、日本の援助が当該国に占める割合が75%だとかありますが、実際にはどの国をみても世銀やUNDP、ADBのアフリカやベトナムでのシェアは非常に大きいです。彼等は出資に比例して日本に賛成してくれる訳ではなくて、リーダーシップを非常に取って援助をしていますので、そこに日本が食い込んでいるか、影響を及ぼすか、関与していくか、それともつまはじきになっているかによって、被援助国から見た時の日本のプレゼンスが違います。従って、バイだけでトップであるとか7割を占めるというのもいいとは思いますが、例えば、ベトナムでは74%が日本の援助だと書いてありますが、国際機関も含めると3割です。3割の影響力であり、その影響力も発揮されていないので、マルチについても十分考えて頂きたいと思います。それが、日本が議論する際に被援助国政府が聞いてくれるかということに影響を与えます。いくら援助をもらっても、我々は日本の言うことは聞かないという政府もあります。他方、ごくわずかな援助でも非常にありがたがって、日本のことを聞きたいという国もありますので、それらを総合的に判断しないとなりません。ただ援助量が多いとかシェアが大きい小さいだけではダメです。そのためにはその国に関する十分な情報が必要です。
 伊藤委員がおっしゃったMDGだけではなく、他にも多くの戦略の論点があります。例えば、PRSPや援助手続きは、現在援助の世界では非常に論争があります。ヨーロッパ勢と日本勢、アメリカ勢は違う理念を持って、様々な国でせめぎ合っています。ベトナムやタンザニアでもそのようなことがありますし、そのような論争が起こっていない国もあります。もうほとんど勝ち目のない国もありますが、がんばれば日本のプレゼンスを強化できる国もあります。そのような状況も十分理解した上で、日本の影響力が十分に発揮されてうまくいっている国にあまり資源を投入するよりも、各国が注目している国に良い援助をする、あるいは政策支援をするということも必要です。
 従って、戦略性という場合は、これだけの面がありますので、ただ量ということだけではだめです。そして、既存の国別援助計画がある国についても、どなたかがおっしゃいましたが既存の計画は非常に貧弱なものですので、論争をしている時に、既に計画があるからいいということではすまないところがあります。

(青山委員) 私も、砂川委員、千野委員、大野委員のご意見に賛同致します。この会議は戦略を議論するのが目的ですから、戦略については十分に議論を尽くすべきであると思います。また、戦略とは地域を限定するという意味ではないという砂川委員のご意見に賛成です。やはり、何が本当に戦略なのかということを議論すべきだと思います。
 グローバルな課題にいかに対応するかということは、まさに戦略であると思います。ただし、論点整理に挙げられたグローバルな課題の例には、カテゴリーにばらつきがあるようです。これらが、本当に我が国にとって戦略的に重要な課題であるかという議論も必要なのではないかと思います。アジア重視も大変重要ですが、より長期的に考えますと、資源の供給にしても市場としてもアジア以外で必要な地域があると思います。あるいは、紛争後平和構築や貧困の問題が世界的影響を及ぼしていることからも、グローバルな課題に対する目配りは重要と考えています。
 また、人口の多い国と少ない国では、環境問題など考えてみても、インパクトがずいぶん違うのではないかと思います。したがって、人口規模なども考慮に入れるべきではないかと思います。先程大野委員もおっしゃったように、国別援助計画を作ることによって、その国での日本の発言力が増すようになるような長期的戦略を考える必要があります。日本の発言力が増すことこそ日本のプレゼンスを示すことだと思いますので、そのモデルケースとなるような国別援助計画を作っていくべきではないかと考えています。

(荒木委員) 策定したこの新規策定候補国一覧を見ていましても、過去の歴史の延長線上で日本との相互依存関係が挙げられています。当然の話で、別に取り立ててどうということはありません。問題は、なぜ国別援助計画の議論をしなければならないかというそもそもの話です。これは「第2次ODA改革懇談会」でも非常に議論になりましたが、これまでの国別援助計画は役所でどちらかというとやや縦割り的に策定され、総花的で重点が決まっていないという批判がありました。ご存知のように予算も減少傾向にあるので、できるだけ国に集中投資した方が援助効果も成果も上がってくるのではないか。従って、再度見直しあるいは新規策定の場合にはその観点を入れてやっていこうということになりました。役所で策定した既存の国別援助計画については、再度重点化するという視点で見ていくべきだということです。なぜ国別援助計画を策定するのかというところにポイントを置いて頂きたいと思います。

(砂川委員) 2点申し上げたいと思います。国別援助計画についての各委員のイメージが違っていると思います。前回浅沼委員が問題提起されましたが、援助計画は、非常に精緻な、これからこれをどうやっていくかという青写真であると思うと非常に大部なものになると思います。援助方針と援助計画を区別することが大切だと思います。策定する人によると思いますが、現在大野委員が見直しを進めておられる対ベトナム国別援助計画は援助計画に非常に近いものだろうと思います。私は策定することは非常に大切だと思いますけれども、現在インドネシアについて策定するとすれば、現状からすれば、援助計画ではなく、援助方針に近いものになるのではないかという気がしています。従って、国によって援助計画となるか方針となるか違ってくるというイメージを持っておく必要があると思います。
 第2点は、国を選ぶ時に戦略性を重視していくべきだということです。私は中央アジアが世界の中で非常に地政学上重要な地域だと思います。この事務局案では、モンゴルは中央アジアになるかということはありますけれども、モンゴルとカザフスタンを挙げています。私は、ウズベキスタンを挙げるべきだと思います。ウズベキスタンは、カザフスタンと比べ、国際金融機関からみるとやや異端児です。IMFとの問題があり、ウズベキスタンはIMFに代わって、日本に援助してくださいというスタンスです。その意味では、日本に対して非常に頼ってきている、あるいは日本の影響力が非常に大きい国です。また、安全保障上の観点からも、非常に重要であると思います。他方、カザフスタンは非常にロシア寄りで、なおかつ市場経済を目指しており、世銀やIMFともうまくやっています。従って、日本も援助量を増やしているという状態です。そこで、どちらを選ぶのかということになると、私は戦略上その国をどうするのかという国別援助計画を策定する意味から考えると、ウズベキスタンを選ぶべきであると思います。

(矢野副大臣) 大変熱心な議論をありがとうございます。外務副大臣の立場として一言申し上げたいと思います。11月5日、ASEAN+3の場で、小泉総理によって共同宣言として包括経済連携協定共同宣言の調印がなされました。総理の意向に従い、外務省としてもASEAN地域を私が回り、先般、タイ、ラオス、東ティモール及びインドネシアに行ってまいりました。
 その上で、本日インドネシアの議論を聞かせて頂きましたが、現実に予算案は執行されて進んでいます。インドネシアとしても日本に対する要望は非常に強いものがあります。反面、この場では確かに様々なご意見がありました。しかしインドネシアが日本に期待する、例えば絶対量については、現在非常に微妙な立場です。対中国ODAについても様々な議論がされています。ODAの絶対量を確保しなければならない中で、果たして今の話のように方針が今まで通りでいいのかなという展開になってくると思います。
 すでに毎年予算の執行がなされていることを念頭において頂きたいと思います。1兆数千億という金額が、戦略性や地域性、グローバルな面からいって本当に順当に展開されているのかという視点から見ますと、私は具体的かつ早急に見直しをして頂きたいと強く思います。従って、大変なスケジュールになるかもしれませんが、このような観点も含めてご協力頂ければと思います。

(渡辺議長代理) ありがとうございました。多くの意見が出され、そう簡単にまとめきれないという印象を持ちます。他方、再度本日配布されている第一、第二基準をご覧頂きたいのですが、それ自身が論理的に考えれば相互に矛盾する基準がいくつか並んでいます。
 しかし、現実には、ODAには国と国との関係といった要素も多分にあります。従って、このように2つ、あるいはさらに4つというように国の数だけ掛け併せて数十本から数百本の連立方程式を立て、出た答えが日本の戦略に合うというふうにはいかないと思います。
 先程磯田委員の意見にもありましたが、「なぜ今まで国別援助計画もないのにこれだけの多額の援助を行っていたのか」と言われますが、そうは言っても、様々な歴史的な関係やその国のアジア安全保障における位置づけ、エネルギー供給等から援助を行ってきたわけでして、意図的なメッセージとして出てこなかっただけです。その中に戦略性や重要性の認識がなかったというわけではないはずです。従って、我々としては、国別援助計画という形にして、透明性を持った、はっきりしたメッセージを出していきたいと思います。
 また、特に大野委員から、それから宮原委員、牟田委員からは別の意見が出された新規並びに見直しの候補国についてです。大野委員はほとんど評価の対象にならないとおっしゃっていますが、それは少々言い過ぎという印象を受けます。国別援助計画は、外務省が国家予算を使って、長い時間をかけてできたものです。比較的最近できたものであれば、それをベースに荒木委員のおっしゃったように分野別重点化という方向に持っていくことによっていい物ができる可能性があると思います。大野委員のおっしゃるように、最初から無価値だと言ってしまえばそれまでです。しかし、価値づけが低いのであれば、優先順位としては、若干遅らせたほうが理屈に合うという気がします。矢野委員のお話にもありましたように、援助を次々と執行しているプロセスの中で我々は国別援助計画の策定を行っています。哲学的な議論をして現実を遅らせるわけにはいかないと思います。そこで、ご不満もおありでしょうが、今の議論の前提にしてここで発案されている国名の議論にいきたいと思います。
 お手元にお配りしてある資料3の2、3枚目をご覧頂きながら議論をして頂きたいと思います。これはアンケートを頂いた上で、事務局でテクニカルにまとめたものです。

(牟田委員) 具体的な国の名前として、事務局案ではインドネシア、インド、パキスタンとモンゴルが挙がっています。私は、他の国が重要ではないとは思いませんが、どのような議論をしても、今年策定するかしないかは別にして、この4カ国は落ちることはないと思います。来年にはもっと重要な国があるので、例えば今年は物理的に4つか5つしかできませんという際に、この国は入れてくれという議論はあり得るかもしれませんが、来年までかかってもここに挙げられた4つが落ちることはないと思います。1年間に何ヶ国程度策定できるかという物理量にもよりますが、平成15、16年はこの4カ国でよいという気がしています。

(渡辺議長代理) 平成15年、16年にインドネシア、インド、パキスタンとモンゴルの4カ国はいずれにしても入るというのが牟田委員のご意見ですね。

(脊戸委員) たくさんの面があって、どのような切り口でやっていくかという大変難しい議論だと思います。しかし、国別援助計画を策定していく中で、グローバルな視点も含めて検討していくことが重要だと思います。平成15年、16年に関して国名が挙げられていますが、平成15年については、戦略的にも重要な意味を持っていますので、アジアが優先され、この順序で策定するということに異議はありません。ただし、ODAはアジア地域以外にも供与されているのであり、私の意見としては地域性という観点からアジア以外の国、アフリカ等を平成16年に1カ国入れると良いのではないかと思います。例えば、エチオピアは最貧国であり、かつ、グローバルな視点もありますので、適切な国ではないかと思います。

(千野委員) 私も牟田委員と同じように、どの国も重要ですが、ここに挙げたインドネシア、インドとパキスタンの3カ国はどう見ても入ると思います。モンゴルもそうかもしれません。
 それから、砂川委員もおっしゃいましたが、その他として中央アジアを挙げて、日本がそこを重点地域にするという考え方もあり得るのではないかと思います。その中でカザフスタンかウズベキスタンかというのはもう少し議論をした方が良いかもしれません。おっしゃるようにウズベキスタンは親日的ですし、日本を大変頼りにしていることもありますが、国際社会の流れの中で国のあり方を見た時に、カザフスタンも無視できないからです。

(砂川委員) どのように策定していくかという点で2点申し上げたいと思います。先程1年に6つ程度はできるのではないかと牟田委員がおっしゃっていましたが、6つ程度をこれから1、2年かけて策定するということで、スタートさせればいいのではないかという気がします。それを同時スタートという形で作業を進めれば、対外的に非常にいいのではないかという気がします。その中が全部アジアでは良くないと思います。少なくとも1ヶ国は非アジアを入れた方がいいと思います。
 もう1つは、見直しも加えて、新規6ヶ国に加え、1、2ヶ国見直しをする、それもできれば非アジア地域の方がアピールになるのではないかと思います。
 モンゴルについては、おそらく相当の援助が入っており、今後どのように援助を実施していくのかということは中流・下流の議論であり、上流の議論ではないと思います。戦略的にどうしていくかということではなく、モンゴルの重点セクターをどのように見るのかということになると私は思います。そうであれば、JICAやJBIC等の実施機関を中心として、我々が委託をして策定して頂くということもあり得るのではないかと思います。そうすれば、この計画もかなり実務的に生きてくることになります。
 しかし、「ODA総合戦略会議」はもっと戦略を狙うということをアピールするのであれば、中央アジアでは、先程も議論されようにウズベキスタンかカザフスタンかということになります。私はウズベキスタンであると思いますが。そのようにメリハリを付けたアプローチをしていくとよいと思います。

(草野委員) 砂川委員の議論と若干関係がありますが、皆さん戦略上の重要性というとアジアに確かにアンダーラインを引いてあります。他方、地域バランスを見ると、地域集中の回避と書いてあります。その上で、戦略上の重要性のところを再度見ますと、二国間関係をエネルギーや経済、政治的な観点から総合的に判断すると書いてあります。
 従って、必ずしも皆さんがイメージしていらっしゃるアジアだけではないと思いますし、場合によっては中央アジアも入るし、アフリカも入れるような書き方になっていると私は思います。議論を前に戻してしまうような気がしますが、これを良く読むと、柔軟に幅がある書き方になっていると思います。従って、さほどご懸念される必要はないのではないかと思います。

(大野委員) 本日は、砂川委員の意見に非常に共感します。牟田委員が6つ程度を策定するとおっしゃっていましたが、私の感じでは6つは厳しいと思います。今までほとんどゼロに近かったものを100%にするというご希望はよくわかるのですが、早く出来ればいいのですが、我々の実力を考えた時に急いで作業してまた中途半端な物ができても仕方がありませんので、それはトレードオフがあると思います。
 今砂川委員がおっしゃったのは、来年何をやるのかという時に、1年分だけでは数が減りますので、今後2年かけてこれだけやると言ったほうが見栄えがいい、そしてアジア以外を入れることも大切だし、見直しもある程度挙げるということです。差し替えはあり得るということで、前倒しでこれだけやるのだということを出すというのは、非常に良いやり方だと思いました。
 中央アジアを戦略的に考えるということについては、カザフスタンとウズベキスタンのどちらがいいかという議論は非常に良いと思います。戦略的に考えるというのは、まさにそういうことであって、今どちらの国が多く援助を受けているかということではありません。ただし、私はカザフスタンよりもウズベキスタンの方が、政治体制その他、為替レートの問題等から、ある意味つまはじきになっていますので、日本が入っていくとすればかなり難しいし、入ったからには、過去のことをただなぞっていくことはできないという意味で、覚悟のいる国だと思います。カザフスタンについてはそれほどでもないと思います。
 モンゴルについては、下流の実施機関の問題だとおっしゃいましたが、あのような遊牧国家がグローバル化や工業化をどのように考えるかというのは、根本的な問題です。モンゴル政府はまだ考えていないので、もしそこまで踏み込むとすれば非常に根本的な手間のかかる問題になると思います。そこまでの覚悟があって入れるというのであれば、数として6つというのは多い気がします。

(伊藤委員) 渡辺議長代理の呼びかけは、より具体的な国名を挙げて頂きたいということだと理解しました。偶然にも第一基準を重視した考察と第二基準を重視した考察から、同じ国が何カ国か出ています。私もこれでいいのではないかと思います。そして、5カ国目に私はアフリカのエチオピアを推薦したいと思います。さらにゆとりがあれば、もう1ヶ国、ラオスやウズベキスタンを加えたいという考えですが、私はインドシナ半島の安定化やメコン川流域の開発の中でラオスは、今後重要な意味を持つのではないかと思っています。

(磯田委員) 私も先程申し上げましたが、国に関しては大野委員がおっしゃるように、確かにインドネシアやインド、パキスタンに対応して作っていくのは大変だろうと思いますが、実際に金額が多い国についてきちんと国別援助計画を作る必要があるということに関しては、認識していいます。
 ただし、ODAには先程も出ましたようにグローバルな課題やMDGといった視点も重要で、その意味でアフリカ諸国等も当然入るべきだと思います。まだ環境等、他の視点が十分込められた検討がされていないようにも思えますので、私としては本日の段階で策定国を絞るのではなく、今後2年乃至3年の間に新規にアフリカ諸国から2、3カ国は入れるということで策定候補国リストを長くしたものを用意すべきではないでしょうか。このリストの中には、必ずしも他の観点で国が選ばれている訳ではないと思いました。

(渡辺議長代理) 2枚目のLLDCはそうでもないのではないでしょうか。

(磯田委員) LLDCを全部挙げてあるわけではなく、援助量の多い順に並んでいますね。

(渡辺議長代理) 援助量が日本との関係において深いということになるからではないでしょうか。

(磯田委員) もちろんその視点も入るとは思いますが、この表2に関して、私はもう少し検討が必要ではないかと思います。

(渡辺議長代理) そうですか。表1は如何でしょうか。

(磯田委員) 表1は、黄色の国ついては、策定という方針を決めても良いと思います。

(渡辺議長代理) 表1は良いが、表2はもう少し国を増やした方がいいということですね。基準はよいですね。

(磯田委員) 基準は日本の援助が多い順ではなく、2表の基準に沿ったものをまずあげて頂きたいと思います。

(渡辺議長代理) 非常に明確な基準ではありません。基準を明確にするとかえって実際の援助が動かないという要素もあると思います。その折り合いが難しいのだと思います。
 モンゴルについては微妙な発言がありましたけれども、インドネシア、インド、パキスタン、モンゴルまでは本日の意見でもほぼ異論がなかったと思いますので、ここまではスタートしたいと思います。
 それから、磯田委員のご提案にありましたLLDCからどこを入れるかについて、どなたか発言がありますでしょうか。

(砂川委員) あと2、3ヶ国ということであれば、エチオピアは当確のような雰囲気を受けます。それから、ラオスかウズベキスタンという感じでしたが、私はラオスと中央アジアのどちらかも加え、あと3国を2年程度かけて策定するということでよいのではないかと思います。6つに固執する必要ないと思います。

(牟田委員) エチオピアについては、私は異論があります。非常に重要な国だとは思いますが、政治的にどれ程度安定しているかということについては、疑問があります。現在計画を作ったとしても、効果的な援助が出来るのかという気が少しします。従って、アフリカを入れるのには賛成ですが、アフリカからは別の国の方が良いのではないかと思います。

(大野委員) エチオピアに関しては、政治的にはわかりませんが、世銀・IMFに非常に反発しており、日本や東アジアのやり方を学びたいという意思のある国です。タンザニア、ウガンダ辺は既に大方ヨーロッパ勢に開発戦略を奪われているところがありますけれども、エチオピアはインドネシア同様政治体制は問題があるかもしれませんが、人口も多く、LLDCとして貧しい国ですので、政治が安定していないという見解だけではエチオピアを外すわけにはいかないと思います。ここに載っているような国は、順番の問題で最終的には策定対象となると思います。

(渡辺議長代理) 個人的意見ですが、アフリカから1つは策定した方がいいという感じがしますが、エチオピア以外に代案はありますでしょうか。

(牟田委員) エチオピアに完全に反対と言っているわけではなく、今決めろと言われても困るということです。

(渡辺議長代理) 反対ではないが、他に選択肢があり得るというご意見ですね。

(千野委員) エチオピアではなくて、中央アジアのカザフスタンやウズベキスタンについてですが、最終的には、2つならばウズベキスタンになるかもしれないということはわかりますが、私は先程大野委員がおっしゃった意見は非常に重要で、その通りだと思います。つまり、ウズベキスタンについて策定する場合は、単に親日的であるとか日本に頼るというのはお金が欲しい以上当り前であり、非常に覚悟がいることだと思います。ウズベキスタンの体制は、大変問題を抱えていると思います。そこまで踏み込んでやっていくという姿勢がないと、多少乱暴ですが、インドネシアに対する日本のODAが、国際的に様々な批判を浴びたスケールを小さくしたような話にもなりかねません。中央アジアの中で、カザフスタンとウズベキスタンが共に覇権を争っている国であるという認識も必要です。

(砂川委員) かなり覚悟を持って臨まなくてはならないというのは、全くその通りだと思います。ただし、ウズベキスタンはIMFとの関係が決定的になっているわけではなく、二重為替相場の問題について、IMFの条件を最終的に受けようという感じで動いており、日本はいわゆる国際協調の下にやっていくことを前提として日本も援助をしましょうというスタンスになっています。そのようなウズベキスタンの政策を実際に良く見て、その国際協調の下で日本ともきちんとやっていこうという道筋をつけるという意味では、覚悟とともに画期的なことであると思います。無難にカザフスタンを選ぶのであれば、普通の選択になると思います。従って、「ODA総合戦略会議」というからには、ある意味ではそのような覚悟を持って望むという大変良い例になるだろうと思います。

(荒木委員) インドシナ半島については、タイ、ベトナムとカンボジアまで策定しています。ラオスは民間投資も非常に消極的な国ですけれども、このような国に日本はまったく何もやっていないというのはおかしいと私は思います。ラオスについては、最初に策定するべき国だと思います。

(大野委員) ラオスも作業をしていけば必ず入る国ですので、入れておいて、後は2年後であるか3年後になるかということだと思います。何故この国は入っていないのだという議論を外に説明するのは、非常に難しいと思います。

(渡辺議長代理) 皆さんご了解して頂いていると思いますが、我々の任務は平成16年までです。その後もこの会議は、新しいアイディア、新しいメンバーで続いていきますので、決してリストから落ちるわけではないということはご承知おき頂きたいと思います。
 LLDCについてさらに多くの国を含めたリストが必要ということは正論ではありますけれども、もちろん努力はしますが、余り神経質に考えられない方が良いと思います。
 本日、ラオスも何人かからご推薦がありました。このカザフスタン、ウズベキスタン、ラオスとエチオピアあたりという本日の意見を集約し、その他外務省の今までの様々な考え方等を総合して再度次回に提案したいと思います。それをベースにして議論しましょう。
 次に、荒木委員より、重点化のテーマについて、先程のご発言を再度お願い致します。

(荒木委員) 国別援助計画は、あくまで重点化を図るものです。専門的な立場、様々な広い視野でどの分野に重点を絞っていくかとことは各国別援助委員会で作業し、できれば細かいことはさらにブレークダウンして、現場へ落とせば良いと考えています。

(渡辺議長代理) 私も荒木委員と同感です。荒木委員のペーパーについてはお手元の資料の中に入っていますので、それを後でご覧頂きたいと思います。これが、「第2次ODA改革懇談会」の重点化部分のエッセンスです。

(荒木委員) そもそもこの「ODA総合戦略会議」は、「第2次ODA改革懇談会」で提言されたものです。目的は、国別援助計画を戦略的に見ていこうということです。国別援助計画はこれまでもありましたけれども、省庁横並びの議論の中で、様々な省庁が自分の主張で並べてあるのではないかという疑問もありましたので、再度援助国の本当のニーズと我が国のニーズを合体させて、援助量の減少とともに質の向上を含めて新しく重点化をしていこうという議論になったわけです。

(渡辺議長代理) 国別援助計画の原点に位置するコンセプトが重点化であるということをご認識頂きたいということです。


(3)ODA改革:三項目の実施について(事務局より報告)

(渡辺議長代理) 次に、3番目のテーマに入ります。12月10日、ODA大綱の見直しを含む「ODA改革:三項目の実施について」が発表されました。内容は、「ODA大綱の見直し」、「債務救済方式の見直し」及び「無償資金協力実施適正会議の立ち上げ」です。この3つについて、局長よりご説明頂きます。

(古田経済協力局長) 資料5に基づいてご説明致します。先般、大臣より、ODA改革として3点発表させて頂きました。第1が「ODA大綱の見直し」です。これについてはこの会議でご議論頂いておりますし、政府として正式に見直し作業を始めるということの発表です。
 2番目が「債務救済方式の見直し」です。これも「変える会」その他で改善を求められていたテーマです。既に我が国としては、32カ国に対し、約9000億円の債務救済をコミットしており、債務返済の期限がきた段階で、ひとまず外貨で返還して頂き、同額を無償資金として供与するという方法をとっていましたが、透明性や手続の効率性の問題、あるいは現在は債務を40年間に繰り延べた上で実施していますので、40年かかってしまうという問題がありました。このようなことを行っていますのは、フランスが一部行っている他は、我が国以外にはありません。その意味で、この際、端的に国際協力銀行の債権放棄という形で、債務救済無償の予算ではなく、必要な予算は国際協力銀行に交付金として依頼し、国際協力銀行自身の利益金や積立金も使って頂くという方法に転換をさせて頂きました。これは新たに債務を負う性質のものではありません。
 3番目が、無償資金協力について、これについてもかねてからご指摘頂いていましたが、第三者の目を入れるということで、今般無償資金協力実施適正会議を立ち上げます。凡そ2ヶ月に一回程度開催し、無償資金協力案件について、節目でご意見を頂戴したいと思っています。この「ODA総合戦略会議」の脊戸委員にもお願いをしていますが、どうぞよろしくお願い致します。以上です。

(伊藤委員) 債務救済方式の見直しについて、古田局長がおっしゃった9000億円を単純に計算すると納税者が一人当たり凡そ1万円程度負担することになります。税金がそのように戻ってこなくなったことに対する担当していた政府機関の責任は、どのようになっているのでしょうか。

(古田経済協力局長) 債務救済については、1つは1978年のUNCTADのTDBでまず相当の金額をコミットしており、1978年以来毎年無償の予算を用意し、事実上の債権放棄をしてきています。それに加えて、昨今HIPCsとして、リオンからケルンに至る逐次のサミットで、首脳ベースで約束をしてきています。
 ご案内のようにHIPCsは、世銀・IMFのチェックを得て、きちんとした構造改革をするという体制が出来たところで資格ができるということで、ようやく始まりかけたところです。資格ができた国が出てくれば、その時点で債権放棄するということで、その意味では一連のサミットで約束してきたことです。従来の無償資金の予算を用意して、それを債務救済無償として供与する方法から、返済期限が到来したところで債権放棄していく方法に変えたということです。そのために必要な引当を国際協力銀行にやって頂くという趣旨です。
 もちろん債権が焦げ付くのを当然と思ってやってきているわけではありませんけれども、様々な経済的、政治的情勢の変化の中で国際的に協議をして、このような結論になり、日本もその一員としてコミットしてきているということですのでご理解頂きたいと思います。
 他方で、このようなこと自身がモラルハザードになるようなことは避けなければなりませんし、今後の円借款供与のあり方については、厳しい目を持ち、かつ効率や債務の償還可能性等を良く考えていく必要があります。また、HIPCsの対象として債務救済をしますと、新規の借款は出ないという基本的方針がありますので、その方針に基づき対応していくことになります。

(伊藤委員) 今回の責任は厳しく問うべきだと思います。一方、未来志向的に考え、債務を帳消しした場合に日本政府としては様々な条件を付けられると思いますが、その債務帳消しになった資金を被援助国の社会セクターや基礎セクター、それから出来れば現地のNGO、さらには日本のNGOが参加する形で活用できないかということを提案したいと思います。実際、我々は数年前に提案したことがあります。

(青山委員) 無償資金協力実施適正会議を立ち上げたことは大変良いことだと思いますが、2点提言したいと思います。まず1点目です。無償資金協力の他に技術協力の枠組みがあります。文字通り解釈すれば、技術協力は技術的支援をするものですが、実際には、無償資金協力とよく似た内容を実施しているのに金額が小さいため技術協力の枠組みになっているものもあると思います。そのような技術協力を無償資金協力とあわせて検討する仕組みを作られた方が良いと思います。
 2点目は、セクターの専門的視点の必要性についてです。あるセクターでの無償資金協力の内容が適正であるかを評価するには、それぞれのセクターの専門家の意見を取り入れる方向性が必要であると思います。

(牟田委員) 無償資金協力について、この資料を見る限りお金が適正に使われているかどうかをチェックすると書かれていると思います。しかし、無償資金協力に対する批判の大きなものについては、例えば日本が作るものは贅沢すぎるとか、効率性の面で非常に大きな問題があるということだと思います。それは突き詰めれば、無償資金協力のあり方や仕組みの問題の話になると思います。従って、現在の仕組みを前提として、単にお金がきれいに使われているかどうかだけをチェックするのではなく、仕組みそのものがこれで良いのかというところまで、是非踏み込んで見て頂ければありがたいと思います。

(草野委員) 伊藤委員がおっしゃったことに全く賛成です。債務救済無償については、他国は実施していませんけれども、透明性の問題はあれ、その点を改善すればかなりユニークな制度ではないかなと思っていました。問題は返還されたものを無償で提供し、それがどのように使われたかが良くわからないということです。それが例えば一部の政治家や政府に流れたということが問題なのであって、NGOや社会セクターに関してお使い頂くということであれば、債務救済無償は、良かったのではないかと私は思います。



(4)対ベトナム国別援助計画の見直しと対スリランカ国別援助計画の新規策定に関する経過報告

(渡辺議長代理) 対ベトナム国別援助計画については、大野委員の作業が進んでいます。また、対スリランカ国別援助計画については、絵所秀紀法政大学教授を主査としてスタートしています。前回の積み残しになってしまっていますが、ベトナムについては大野委員から、スリランカについては、本日絵所教授はいらっしゃいませんので、この会議のメンバーとして参加して下さっている牟田委員から、経過報告をお願い致します。

(大野委員) 資料がありますので、読んで頂ければ良いと思います。要点は新しいベトナムの体制です。人が新しく変わったという側面がありますけれども、大使館を中心としてJBIC、JICA、JETROが現在、我々研究者がつかなくても非常に活発に活動しています。先般CGがハノイでありましたが、それに対しても、全力投球で、オールジャパンで取り組んできており、体制的には非常に整っており、中身についての議論も積極的に始めています。私は大体毎月行っていますが、その際にも進みますし、行かない時もメールベースその他でやり取りをしています。
 また、荒木委員の資料に、要請主義ではなく、オファー方式ということが挙げられていましたが、既にベトナムでは先方政府に我々の作業を一々説明し、承認を取ってからウェブにアップするという形を取っていますし、現段階では、ベトナム政府もそれで良いと言っています。そのような形式な承認だけではなく、インフラについてどう考えるかとか、世銀と日本との関係といった中身の議論も進んでいますので、期待できると思います。現地の体制は少なくとも現在は非常に強いので、予定通り彼等に起草して頂くという形で進んでいます。日本側はそれをサポートするように、ここに書いてあるような様々な方との議論を始め、1回目の意見交換会の時は時間が足りず、中身を十分議論できなかったもありますけれども、2回目、3回目と重ねて日本側でも議論していこうと思っています。

(渡辺議長代理) どうもありがとうございました。ご尽力をお願い致します。引き続きスリランカの国別援助計画について牟田委員からご報告頂きます。

(牟田委員) 対スリランカ国別援助計画の東京タスクフォースは、絵所法政大学教授をヘッドとして、下村法政大学教授、中村龍谷大学教授、それから私が有識者として参加し、その他外務省、JICA、JBICからなっています。中村教授は現在殆どコロンボに滞在し、コロンボ大学で教えられる一方、コロンボ政府等との折衝等にあたって頂いています。
 12月12日に第1回会合を開き、今後のスケジュール等について話し合いました。昨日モラボダ経済改革大臣が来日していましたので、話し合いをしました。12月26日に第2回会合を開き、論点の整理をした上で、平成15年1月15日に関係府省及び各グループとのヒアリングを予定しています。そして、1月末から2月にかけてコロンボでワークショップを開きます。それに基づいて第1次案を作成し、3月に東京でワークショップを開き、コロンボ側からもコメントを頂いた後に、4月末頃に第2次案を作成します。各省庁との協議を経た後で、6月末にはこの「ODA総合戦略会議」へ報告をするということを予定しています。
 私はスリランカの専門家ではありませんが、評価の立場からということで参加をさせて頂きました。先程砂川委員が大変良いこととおっしゃいまして、国別援助方針か計画かというお話をされましたけれども、計画に近い方針になるのかと個人的には思っています。先程も発言したことでありますが、評価の立場ということであれば、5年間の国別援助計画を作れば、当然5年後に国別評価を行うべきである、すなわち、評価と計画は表裏一体だと思っています。
 評価を行う際、この国別援助計画がきちんと実施できたかわからなければなりません。そのためには達成すべき目標が書いていないことには評価できませんので、この国別援助計画の中に評価ができるような水準の目標を書き込むことが重要だと思います。また、目標には様々な階層があり、上位目標から中位、具体的目標までありますが、その階層構造についても、きちんと示し、5年後にこの計画に書かれた目標が達成されたかを評価できるように、わかりやすい計画を書きたいと考えています。

(渡辺議長代理) ありがとうございました。中間報告を楽しみにしていますが、よろしくお願い致します。


(5)平成15年度ODA予算

(渡辺議長代理) 次に、来年度予算について、本日財務省原案が内示され、24日に閣議決定することになっていますので、古田経済協力局長より、手短にお話頂きます。

(古田経済協力局長) 本日内示がありまして、閣議決定まで復活折衝が続きますが、それに先立ち一昨日、川口外務大臣と塩川財務大臣の間で事前折衝がありました。そこで、ODA予算全体について、今年度の9106億円から約530億円減のマイナス5.8%で基本的に合意に達しました。それを前提として、各省庁に項目毎に振り分けたものが本日内示されるという運びになっています。
 政府全体の一般歳出は微減であり、公共事業がマイナス3%台と言われていますが、その中でODAを思い切って切りたいという議論がありました。ただし、ODAは一般歳出の約2%のシェアですので、その分を深掘りしたからといって、全体の財政構造改革が占めるシェアもその程度です。私どもとしてはもちろんODA重点化や質の充実は図らなければなりませんが、ODA予算の量そのものについても、日本政府のODAへの取り組みに関する内外へのメッセージとして重視しており、外務省の予算だけではなく、オールジャパンのODAの仕上がりをどうするかということについて、かなり議論してきました。
 昨年がマイナス10.3%で、この5年間で22%減ってきており、最大では1兆2000億円近かった予算が現在は9100億円です。これがさらに530億円削られるということですので、昨年のマイナス幅10.3からすると、マイナス幅においては半減したので、一定の歯止めをかけたことにはなろうかと思います。引き続き中身を精査すると同時に、来年度以降もODA予算量の確保についても、一つのメッセージとしてがんばっていきたいと思っています。予算の詳細については、決定したところで次回にも詳しくご紹介したいと思います。
 また、ベトナムとスリランカの話がありましたが、ベトナムについては、来年DACの対日審査が予定されており、その一環としてベトナムの現地調査が行われる、すなわち日本の援助がベトナムでどのように行われているかについての調査が、対日審査の一環として行われることになっています。また、日本とアジア開発銀行との共催で、援助の調和化に関するセミナーを来年1月末にベトナムで開催することになっています。
 スリランカについては、12月4日、首相が来日し、2003年5月乃至6月に援助国会議を日本で開催するということで了解をしています。

(渡辺議長代理) ありがとうございました。草野委員の著書にもありますけれども、日本のODAといえば1兆円という言葉が暫く刷り込まれてきたのですが、そのようなことも言えない時代になってきました。それだけ、限られた援助資源をどう使うかという我々の会議に課せられたテーマは非常に大きくなってきたとも考えられます。次回の会議は、1月27日月曜日午前8時から開催予定です。1年間お世話になりましたが、来年もよろしくお願い致します。ありがとうございました。

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