1.円借款の選択的供与
- 円借款資金の効率的な使用を確保するために、重点国・分野に対して、より戦略的な視点に立ったメリハリのきいた円借款供与を行う。年次供与国に対する円借款供与が既得権益化しないように、開発課題に対する政策改善を着実に実施し、良好な実績を達成した国に対し、より重点的な資金配分を行うよう不断の点検を行う。
- 途上国の発展状況に応じた円借款の供与のあり方について検討していく。具体的には、民間資金による経済インフラ整備が主流になっている国については、円借款の対象を経済インフラ整備から、より収益性の低い貧困や環境分野等に移行するような要件等について検討する。
2.貧困削減と経済成長
- 現在、国際的な開発努力の最大の焦点となっているのは、貧困の問題である。我が国やアジアの開発の経験に基づけば、持続的な経済成長の達成が貧困削減に大きな役割を果たしてきたことは疑いのない事実である。我が国としては、インフラ分野ではIT等技術革新が目覚ましい分野に支援の幅を広げ、途上国の経済的自立を後押しするとともに、貧困や環境などの分野にも援助を展開していく考えである。具体的には、円借款により、IT分野や外貨獲得能力向上のための輸出産業関連など新たなインフラへの支援を実施するとともに、貧困層・社会的弱者に直接裨益する案件に対応していく。また、貧困アセスメントを実施する。
- 債務問題を再び引き起こさないとの観点から、円借款は援助吸収能力が比較的高く、借款を有効に活用してきた実績のある国(アジア諸国)を中心に供与していく。
3.援助協調への積極的参加と開発途上国の国造りへの知的貢献
- 冷戦後の国際社会においては援助資源の効果的・効率的な使用が各ドナー共通の課題となっており、国際的な援助協調(パートナーシップ)を進めることが重要となっている。我が国としても、パートナーシップ確立のため、開発に関する国際的な議論(CDF、PRSP等)に引き続き積極的に参画していく。
- 貧困削減や環境といった多様な開発ニーズに対応し、国際的な援助協調の議論に積極的に参加していくためには、開発援助を支える幅広い層の参加を確保し、拡大していくことが重要である。援助機関のみならず、国内の関係省庁、学界、NGO、シンクタンク、民間企業など開発関連の専門的知見を有する人材を活用し、我が国援助の「知的貢献基盤」を形成する。具体的には、地域・開発戦略研究のための拠点造り、知的貢献人材のネットワーク化等を図る。
4.説明責任の向上と広報の強化
- 円借款事業の実施につき、国民の理解と支持を引き続き得ていくために、様々なレベルにおける円借款事業の評価を充実させるとともに、インターネットを活用し、ODA関係の資料・データが全て揃う場を設置する等広報の強化を図る。