ODAとは? 援助政策

ザンビア国別援助計画/【注釈】

<1>最近の政治・経済・社会情勢

(1)政治情勢

1:大統領立候補資格に関する憲法改正(96年)

 96年の大統領選挙にあたり、MMD(多党制民主主義運動:党首チルバ)は大統領立候補資格に関する憲法改正を強行採決した。新憲法は大統領の任期を5年(2期まで)とし、大統領候補者は両親がザンビア人でなければならないと規定。前大統領で独立以来91年まで政権を握ったUNIP(統一民族独立党)党首カウンダの出馬を妨害するねらいがあったと言われている。選挙結果は、主要野党が選挙をボイコットしたため、結果的にMMDが圧勝した。

2:軍内部によるクーデター未遂事件(97年)

 97年10月、兵士がクーデターを試み、国営ラジオ局を占拠。チルバ大統領の追放を宣言した。政府軍の反撃で鎮圧されたものの、政府は非常事態を宣言し、カウンダなどがクーデター首謀者と共謀したとして12月に身柄を拘束した。米、英などはこの身柄拘束が法的手続なしに行われたとしてチルバ政権を批判。

(2)経済情勢

3:南部アフリカ開発共同体(Southern African Development Community:SADC)

 92年に設立された南部アフリカの経済統合を目指す地域国際機関。14ヶ国がメンバー国。

4:東・南部アフリカ共同市場(Common Market for Eastern and Southern Africa:COMESA)

 94年に東・南部アフリカ特恵貿易地域(PTA)より変更。東・南部アフリカ共同市場、最終的には経済共同体設立を目途とする。21ヶ国がメンバー国。

5:構造調整

 世界銀行や国際通貨基金(IMF)の指導下、市場原理の強化、規制緩和、経済自由化などの経済改革プログラムを進め経済の建て直しを図ること。

6:キャッシュ・バジェットシステム

 中央銀行からの借入を禁止し、歳出を利用可能な現金歳入に厳格に制限する緊縮財政方式。歳出と歳入を均衡させ、財政の健全化を図ることを目的とする。

7:貧困削減成長ファシリティ(Poverty Reduction and Growth Facility:PRGF)

 従来IMFが実施してきた拡大構造調整融資制度(ESAF)が、99年9月の世銀・IMF総会を契機に名称変更したもの。従来以上に、貧困削減に資する被融資国の取り組みを重視するものとなりつつある。

8:拡大HIPCイニシアティブ

 99年6月のケルン・サミットにおいて、96年に成立した国際金融機関、二国間債権者、商業債権者を包含する全債権者による重債務貧困国(Heavily Indebted Poor Countries:HIPCs)に対する債務の持続可能なレベルまでの低減を目的としたHIPCイニシアティブを拡充し、二国間ODA債権の100%削減を含む「より早く、深く、広範な」救済を行うこと等につき合意がなされた(拡大HIPCイニシアティブ)。なお、我が国は、HIPCイニシアティブの下で債務削減が行われた後は、適用国に対し新たな円借款供与は困難となり、資金協力を行う場合には無償資金協力が原則となる旨表明している。

<2> 開発上の課題

(1)ザンビアの開発計画

9:貧困削減戦略ペーパー(Poverty Reduction Strategy Paper:PRSP)

 貧困削減に向けて、如何に被援助国自身の取組を促進させ、パートナーによる援助を効果的なものにするかとの議論が高まる中、貧困削減と債務救済とのリンクを強化するために、HIPCイニシアティブ対象国は同イニシアティブ適用決定までに貧困削減戦略ペーパーを策定すべきことが99年9月の世銀・IMF合同開発委員会で決定された。同ペーパーは、各国の「国家開発戦略」をベースに貧困削減という目的に焦点を絞ったもので、全ての開発パートナーにとっても当該国を支援するにあたっての指針となり、国家開発戦略のプライオリティ付け及び開発実施のプロセスを促進させるものである。

10:セクタープログラム(Sector Program:SP)

 1993年に、サブサハラ・アフリカの調整政策支援に取り組んでいる「サブサハラ・アフリカ特別援助プログラム」(SPA:Special Program of Assistance for Low-Income Debt-Distressed Countries in Sub-Saharan Africa)において、従来の構造調整支援中心の協力から、生産セクターへも資金を振り向けるべきとの観点から、我が国が提唱したアプローチ。援助国間の援助の重複や援助国の人材・財源の非有効活用、被援助国の開発計画との整合性の不足等の問題を解決すべく、被援助国が中心となって各セクターの開発計画を作成し、被援助国・ドナー間で同計画を吟味し、ドナーが右計画に従って調整を行った上で援助を行うアプローチである。当初セクター・インベストメント・プログラム(SIP:Sector Investment Program)と呼ばれたが、現在はセクター・プログラムと呼ばれている。DAC新開発戦略との関係でも、被援助国のセクター開発計画の策定や援助国間協調におけるオーナーシップ、それを踏まえた援助国間協調や援助手続の共通化等のパートナーシップというコンセプトとも合致している。

(3)主要国際機関との関係、他の援助国、NGOの取組み

11 国際機関 ODA NET (支出純額、単位:百万ドル)

暦年 1位 2位 3位 4位 5位 その他 合計
98 IDA 39.6 CEC 20.5 AfDF 13.2 UNDP 5.9 IFAD 2.9 11.1 93.2
99 IDA 151.6 CEC 80.9 AfDF 19.2 IMF 13.7 UNDP 5.5 18.0 283.4
00 IDA 205.8 IMF 26.4 CEC 25.7 AfDF 24.4 UNHCR 8.6 20.8 308.6
IDA International Development Association(国際開発協会(第二世銀))
CEC Commission of the European Communities(欧州委員会)
AfDF African Development Fund(アフリカ開発基金)
UNDP United Nations Development Programme(国連開発計画)
IFAD International Fund for Agricultural Development(国際農業開発基金)
12 DAC諸国 ODA NET (支出純額、単位:百万ドル)

暦年 1位 2位 3位 4位 5位 うち日本 合計
98 50.0 33.6 33.4 ノルウェー 31.8 オランダ 22.5 33.6 256.5
99 64.7 63.6 59.4 ノルウェー 27.4 26.6 59.4 340.0
00 112.2 111.4 オランダ 51.2 46.1 31.9 31.9 486.2
DAC Development Assistance Committee(OECD開発援助委員会)
13:保健セクタープログラム

 99年11月、我が国、独を除く全ドナーの間で具体的実施に向けた覚書(MOU)を締結し、コモン・バスケットを設置した。コモン・バスケットにはスウェーデン、英、オランダ、デンマーク、アイルランド、米、EUが拠出している。

<3>我が国の対ザンビア援助政策

(1)対ザンビア援助の意義

14:日・ザンビア二国間関係

 貿易関係については、我が国はザンビアからコバルト・銅等を輸入し(00年輸入額100億6,800万円)、同国に自動車等を輸出している(同輸出額18億900万円)。また、98年12月に高円宮・同妃両殿下がザンビアをご訪問され、2000年にはチルバ大統領、カルンバ蔵相等が訪日するなど我が国との友好関係は深まりを見せている。

15:アフリカ開発会議(TICAD:Tokyo International Conference on African Development

 日本政府が呼びかけ、国連機関及び「アフリカのためのグローバル連合」(GCA)とともに東京で開催(1993年10月、1998年10月)。TICAD IIにおいては、21世紀に向けたアフリカ開発のため、アフリカ諸国とそのパートナーの具体的な政策に指針を与えることを目的に「21世紀に向けたアフリカ開発:東京行動計画」が採択された。東京行動計画は、アフリカにおける貧困を削減するため、また、急激にグローバル化している世界経済にアフリカ経済が一層参画できるようになるため、短期的な緊急課題について、アフリカの指導者とそのパートナーの長期に亘る議論に基づき作成された。次の分野で具体的目標を定め、優先的政策行動につき合意した。1)社会開発:教育、保健と人口、貧困層を支援する施策、2)経済開発:民間セクター開発、工業開発、農業開発、対外債務及び3)開発の基盤:良い統治、紛争予防と紛争後の開発。

(2)ODA大綱原則との関係

16:政府開発援助大綱(ODA大綱)

 我が国のODAの理念と原則を明確にするため、援助の実績、経験、教訓を踏まえ、日本の援助方針を集大成したODAの最重要の基本文書であり、平成4年6月30日に閣議決定された。内容は、基本理念、原則、重点事項、政府開発援助の効果的実施のための方策、内外の理解と指示を得る方策及び実施体制の6部から構成される。「基本理念」において、1)人道的見地、2)相互依存関係の認識、3)自助努力、4)環境保全の4点を掲げている。また、「原則」において、「相手国の要請、経済社会状況、二国間関係等を総合的に判断」しつつ、4項目への配慮、すなわち1)環境と開発の両立、2)軍事的用途及び国際紛争助長への使途回避、3)軍事支出、大量破壊兵器・ミサイルの開発・製造、武器の輸出入等の動向に十分注意を払うこと、4)民主化の促進、市場志向型経済導入の努力並びに基本的人権及び自由の保障状況に十分注意を払うこと、を定めている。

(3)我が国援助の目指すべき方向

17:政府開発援助に関する中期政策

 政府開発援助に関する中期政策(以下中期政策)は、今後5年程度にわたるODAの進め方を体系的・具体的にまとめたものであり、援助の一層効果的・効率的な実施を目指すとともに、内外に我が国ODAについての基本的考え方や具体的援助の進め方をより明らかにしていくことにある。
 厳しい我が国の経済財政事情の下で、99年発表の今次策定の中期政策には数値目標は掲げず、策定過程においてODAの改革に関する各界の提言や意見、国会での議論、NGOとの意見交換など国民の意見を最大限取り入れる努力を行った。
 中期政策は、「はじめに」、「基本的考え方」、「重点課題」、「地域別援助のあり方」、「援助手法」、「実施・運用上の留意点」の6つの部分からなっており、今次政策ではDACの新開発戦略を踏まえ、重点課題においては、経済・社会インフラ整備への協力とのバランスを配慮しつつ、従来以上に「人間中心の開発」及び「人間の安全保障」という概念を強調している。

18:セクター・プログラム無償

 世銀、国際通貨基金などと連携して実施される経済構造調整計画、貧困削減計画等の促進に必要な物資を輸入するための資金を供与する一方で、その見返資金の使途を、被援助国が立案し我が国政府との間で合意した保健、教育、都市開発などの環境・社会開発のための特定セクター開発に活用することを義務づけることで、当該被援助国を支援し、DACの新開発戦略の趣旨に沿った援助を行うもの。

(5)援助実施上の留意点

19:域内協力

 例えば、HIV/AIDS、マラリア等の感染症・寄生虫への取り組みについては、特定国のみならず地域レベルでの取り組みがその効果を高めるためにも重要であることから、我が国が長年に亘り協力しているザンビア大学を感染症・寄生虫対策の南部アフリカにおける拠点として、ケニア中央医学研究所やガーナ野口記念医学研究所との有機的な連携を図りつつ、域内他国への効果の普及を図る等、域内協力の促進を積極的に検討していく。

20:南南協力

 経済開発のより進んだ途上国(南)が、他の途上国(南)に対して支援を行うもの。我が国は、様々な機会に南南協力の推進を促しており、98年5月には、「新興援助国(経済開発が順調に進んだ開発途上国で、援助を受けながら、他方で他の開発途上国の開発の支援も一部行う国)」が一堂に会し、今後の対応策について協議するための、南南協力支援会合を沖縄で主催した。98年10月に我が国が主催した第2回アフリカ会議(TICAD II)においても、南南協力の一つの具体化として「アジア・アフリカ協力」を推進することとされた。また、国連開発計画(UNDP)を通じて南南協力を支援するため、97年度には400万ドルをUNDPに拠出した。

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