ODAとは? 援助政策

チュニジア国別援助計画/【注釈】

<1> 最近の政治・経済・社会情勢

(1)政治情勢

1. EU・チュニジアパートナーシップ協定

 1995年7月、チュニジアは地中海南岸諸国では初めて、EU所得とのパートナーシップ協定に署名した。右協定は98年3月発効し、2008年までに農産品以外の産品の関税を撤廃し、EUと自由貿易圏を形成することとなる。

2. アラブ・マグレブ連合(AMU)

 1988年アルジェリアで開催されたマグレブ諸国首脳会議をきっかけに、マグレブ3カ国(モロッコ、アルジェリア、チュニジア)にリビアとモーリタニアを加えた5カ国が89年2月アラブ・マグレブ連合(以下AMU)を結成した。AMUは外交、国防、経済、文化面における域内協力促進とアラブ諸国との連携強化をその目的とする。94年チュニスにおいて第6回AMU首脳会議が開かれて以来、西サハラ問題を巡るモロッコ・アルジェリア間の対立やモーリタニアのイスラエル承認によるリビア・モーリタニア間の不和等の域内諸国間の関係悪化により、AMU加盟国全体としての活動は実質的に停滞していたが、モロッコ及びアルジェリアの新政権の誕生、リビア制裁の一部凍結等を契機として、近年その再活性化の兆しが見られている。

(2)経済情勢

3. レベル・アップ戦略

 チュニジアのWTO協定加入、EUとのパートナーシップ協定締結等に伴う将来の自由経済への移行を見据えて、1996年より開始された自国産業の近代化を目指した企業支援計画。第9次経済・社会開発5カ年計画(1997-2001年)においても政府の重要課題とされ、企業の生産性向上、産業の国際市場での競争力強化等のための様々な投資プロジェクトに対し、国が低利で資金を貸し付けたり助成金を供与する等して支援を行う。これまでに約1,624企業、803件のプロジェクトに対し総額229百万ディナールの資金がレベル・アップ政策により投じられた。

4. 国家雇用基金(FNS:FONDS NATIONAL D'EMPLOI

 ここ数年15%台の高い失業率を低下するため、チュニジア政府が2000年より導入した雇用促進への支援政策。特に、高等教育卒業者・失業者の雇用創設のため、個人の起業プロジェクト、企業の職業訓練制度強化等雇用促進を目的とする計画に対し国が資金支援を行う。2000年は本基金の活用により、6万8千人の雇用増を達成した。

5. 国家連帯基金(FNS:FONDS DE SOLIDARITE NATIONALE

 貧困地域住民の生活条件改善、収入源の確保のために政府が1993年創設した資金支援制度。創設以来これまでに約3,400件の小規模プロジェクトに資金援助を行い、約23,000人の新規雇用を創出するとともに、約1,327の地域、約22万人が裨益している。

<2>開発上の課題

(3)国際機関・他の援助国との関係、NGOの動向

6.Country Assistance Strategy(CAS)

 持続可能かつ社会的平等を実現する開発のためには、マクロ経済面と構造的、社会的、人間的な側面のバランスのとれた発展を同時に達成する必要があるとの認識に基づき、多くの開発課題に包括的に取り組むことを目的とした開発アプローチ。世銀ウォルフェンソン総裁が99年1月に提唱。開発のアクター(ドナー、途上国、市民社会等)と各種セクターを軸とした一覧表で当該国の開発状況を一元的に把握しようとする方法に特徴がある。

<3> 我が国の対チュニジア援助政策

(1)対チュニジア援助の意義

7.経済関係の拡大、緊密化傾向

(i)貿易関係

(単位:千円、日本貿易月表)
  1995 1996 1997 1998
我が国の輸出 5,169,664 9,328,540 10,524,331 12.624.463
我が国の輸入 1,841,020 2,628,446 1,898,687 2.426.975
日本の主要輸出品目: 自動車、ゴム製タイヤ、電気電子機器
日本の主要輸入品目: 魚介類(くろまぐろ)、パルプ、衣類

(ii)民間投資

(イ)いすず・GM・マグレブ機械工業提携の自動車・小型トラック組立工場(5%、180万ドルの資本参加、1991年12月より操業開始)
(ロ)日本発条・COTREL(チュニジア)合弁のトラック用板バネ製造工場(6%、111万ドルの資本参加)
(ハ)日本企業(丸紅)がチュニジア最大級のラデス火力発電所建設・事業計画に米独立系発電事業者(IPP)PSEG社及びSithe Energies社と共同で出資し、現在建設中(丸紅40%)。
 なお、投資ではないが、SONYのライセンス提供により、テレビの組立てを行なっている。

8. TICADプロセス

 貧困と紛争に悩むアフリカ諸国がオーナーシップをもって21世紀に向けて立ち上がるために、国際社会が対等なパートナーとして支援するとの考えの下に、我が国、国連及び「アフリカのためのグローバル連合(GCA)」の共催により、93年のTICAD I(第1回アフリカ開発会議)に引き続き、1998年10月、TICAD II(第2回アフリカ開発会議)が80カ国、40国際機関、22NGOの参加を得て東京で開催された。右会議においては、今後の対アフリカ支援の優先的政策・行動に関する「21世紀に向けたアフリカ開発:東京行動計画」が採択された。東京行動計画は、アフリカにおける貧困を削減するため、また、急激にグローバル化している世界経済にアフリカ経済が一層参画できるようになるため、短期的な緊急課題について、アフリカの指導者とそのパートナーの長期に亘る議論に基づき作成された。次の分野で具体的目標を定め、優先的政策行動につき合意した。

 (1)社会開発:教育、保健と人口、貧困層を支援する施策、(2)経済開発:民間セクター開発、工業開発、農業開発、対外債務及び(3)開発の基盤:良い統治、紛争予防と紛争後の開発。

(2)ODA大綱原則との関係

9. 政府開発援助大綱(ODA大綱)

 我が国のODAの理念と原則を明確にするために、援助の実績、経験、教訓を踏まえ、日本の援助方針を集大成したODAの最重要の基本文書であり、平成4年6月30日に閣議決定された。内容は、基本理念、原則、重点事項、政府開発援助の効果的実施のための方策、内外の理解と支持を得る方策及び実施体制の6部から構成される。「基本理念」において、1)人道的見地、2)相互依存関係の認識、3)自助努力、4)環境保全の4点を揚げている。また「原則」において、「相手国の要請、経済社会状況、二国間関係等を総合的に判断」しつつ、4項目への配慮、すなわち1)環境と開発の両立、2)軍事的用途及び国際紛争助長への使用回避、3)軍事支出、大量破壊兵器・ミサイルの開発・製造、武器の輸出入等の動向に十分注意を払うこと、4)民主化の促進、市場指向型経済導入の努力並びに基本的人権及び自由の保障状況に十分注意を払うこと、を定めている。

(3)我が国援助の目指すべき方向

10. 日・「テュ」三角協力枠組み文書

 1999年3月31日、日・「テュ」間で署名。右枠組み文書は、2005年3月までの間の両国の三角協力の計画(いわゆる南南協力)の促進を規定するものであり、1)第三国研修実施に当たっての双方のコスト負担率、2)チュニジア人専門家の第三国派遣、3)年次計画策定、の3点が合意されている。

11. チュニジア債務管理セミナー
 TICAD IIのフォローアップ及び南南協力の一環として、日・「テュ」共催で2000年4月チュニスにおいて開催。アフリカ諸国の債務管理能力の向上を目的として、アフリカ各国の実務者(仏語圏アフリカ24カ国)の参加を得て、我が国、チュニジア、国際金融機関、地域金融機関等の講師による研修を行った。

(5)援助実施上の問題点

12. ロングリスト化

 チュニジアが円借年次供与対象国に昇格して以来、中・長期的な観点から、日・「テュ」間の協議により「テュ」に対する円借供与候補案件をリスト化及び毎年の見直しを行っており、援助の効率化、透明化を図っている。

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