<1>最近の政治・経済・社会情勢
(2)経済情勢
*1:ペルーの1人当たりGNP(世銀)
1989年:1,090ドル
1997年:2,610ドル
*2:エル・ニーニョ現象
ペルー沖の赤道付近太平洋の海水温が上昇することを言う。この海水温の上昇により大気循環に変化を及ぼし、ペルーやエクアドルの沿岸部では上昇流が強まることにより積乱雲が発生し大雨をもたらすこととなる。
97年春頃から98年夏まで続いたエル・ニーニョ現象では、ペルーでは大雨に見舞われることとなり、経済活動全般に影響を及ぼした。
<2>開発上の課題
(1)ペルーの開発計画
*3:OECD/DAC「新開発戦略」
1996年5月、経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会(DAC)において、21世紀の援助の目標を定めるものとして「新開発戦略(21世紀に向けて:開発協力を通じた貢献)」と題する文書が採択された。この開発戦略は、地球上のすべての人々の生活向上を目指し、具体的な目標と達成すべき期限を設定している。具体的には、(A)2015年までの貧困人口割合の半減、(B)2015年までの初等教育の普及、(C)2005年までの初等・中等教育における男女格差の解消、2015年までの(D)乳幼児死亡率の3分の1までの削減、(E)妊産婦死亡率の1/4までの削減、(F)性と生殖に関する健康(リプロダクティブ・ヘルス)に係る保健・医療サービスの普及、(G)2005年までの環境保全のための国家戦略の策定、(H)2015年までの環境資源の減少傾向の増加傾向への逆転という目標を掲げている。この目標達成に向け、先進国及び開発途上国が共同の取組みを進めていくことが不可欠として、グローバル・パートナーシップの重要性を強調している。
(2)開発上の主要課題
*4:人間としての基本的なニーズ(Basic Human Needs)
食糧、住居、衣服などの最低限の必要消費物資や、安全な飲料水、衛生設備、公共輸送手段、保健、教育など地域社会に不可欠なサービスのこと。
*5:債務返済比率(Debt Service Ratio(DSR))
1年間の債務返済額(利払い+元本返済額)の財・サービスの輸出額に占める割合。債務負担の大きさを示す尺度の1つ。
<3>我が国の対ペルー援助政策
(2)ODA大綱原則との関係
*6:ODA大綱原則
我が国のODAの理念と原則を明確にするために、援助の実績、経験、教訓を踏まえ、日本の援助方針を集大成したODAの最重要の基本文書であり、平成4年6月30日に閣議決定された。内容は、基本理念、原則、重点事項、政府開発援助の効果的実施のための方策、内外の理解と支持を得る方策及び実施体制の6部から構成される。「基本理念」において、(A)人道的見地、(B)相互依存関係の認識、(C)自助努力、(D)環境保全の4点を掲げている。また「原則」において、「相手国の要請、経済社会状況、二国間関係等を総合的に判断」しつつ、4項目への配慮、すなわち(A)環境と開発の両立、(B)軍事的用途及び国際紛争助長への使用回避、(C)軍事支出、大量破壊兵器・ミサイルの開発・製造、武器の輸出入等の動向に十分注意を払うこと、(D)民主化の促進、市場指向型経済導入の努力並びに基本的人権及び自由の保障状況に十分注意を払うこと、を定めている。
(3)我が国援助の目指すべき方向
*7:セクター・プログラム・ローン
国際収支の改善のために商品借款を供与するとともに、そこからもたらされる見返り資金を、借款供与国と借入国との間で予め合意された重点セクターの開発支援に振り向ける形態の借款。
*8:零細農家支援
ペルーにおいては、山岳地域の貧困層の集落を対象として衛生・社会・経済インフラ整備を住民参加型で行う事業(実施機関:国家社会開発基金(FONCODES))、山岳地域の貧困地域の農村コミュニティを対象として植林、土壌保全型農地造成、小規模灌漑施設整備を行う事業(実施機関:農業省水資源土壌保全国家計画(PRONAMACHCS))を実施しており、双方とも住民参加型で行われている。
*9:ノンプロジェクト無償
世銀、IMFとの合意のもと経済構造調整計画を実施中、または実施予定である無償資金適格国に対し、同計画推進のため、緊急に必要とされる商品の輸入を支援する無償資金協力。
*10:日米コモン・アジェンダ
「地球的展望に立った協力のための共通課題」であり、ますます深刻となりつつある地球環境問題、世界的な人口問題、各種の災害等地球規模の課題に対し日米両国が共同で対処することを目的で93年7月に発足。現在、「保健と人間開発の促進」、「人類社会の安定に地する挑戦への対応」、「地球環境の保護」及び「科学技術の進歩」の4つの柱の下、18の分野で各種のプロジェクトが実施されている。
*11:小規模企業対策
セミナーへの参加等を通じて、中小工業・中小企業開発政策の立案・実施に係る人材育成を行うもの。ペルーでは、幹部職員を対象とし途上国のよりよい工業政策を探ることを目的とする中小工業開発セミナー、中小企業政策の促進のための政府機関、中小企業振興機関における中小企業政策立案に携わる人材育成を目的とする中小偉業政策セミナー、中小企業振興に携わるコンサルタント、専門指導員を対象に、企業診断・経営コンサルティング・指導等に必要な知識を習得させもって中小企業振興に寄与することを目的とする中小企業診断が行われている。
*12:ロングリスト
円借款の年次供与国から複数年に亘る要請案件を提出させ、これを前提に両政府間で協議を行い確認・策定する多年度鳥瞰式の要請リストのことを言う(本リストに取り上げられた案件に対する我が国のコミットを意味するものではない)。多年度鳥瞰式の要請がなされ、援助国・被援助国の対話による要請リストの確認が行われることにより、我が国の資金協力を政策志向的かつ一貫性のあるものとすることができる。
*13:コンセッション
所有権を政府もしくは政府関係機関が保有したまま、事業運営権、開発許諾権が民間事業者に付与されること。一般的には政府が自ら事業を行うよりも効率的な経営・運営がなされることが期待される。
*14:政策助言型専門家
経済諸改革、制度造りの人材育成に資する国造り知的支援を行うことを目的として、政策の立案形成を担当する途上国政府の中枢機関に専門家を派遣するもの。
*15:ISD構想(21世紀に向けた環境開発支援構想)
今後のODAを中心とした日本の環境協力政策を包括的にとりまとめたもの。1997年6月の国連環境特別総会において発表された。(A)人類の安全保障(環境破壊は人類生存の脅威となりうる広い意味での安全保障の問題である)、(B)自助努力(途上国で第一義的な責任と役割を担って主体的に環境問題に取り組むことが重要であり、援助国はこうした自助努力を支援する)、(C)持続可能な開発(途上国が持続可能な開発の観点から発展していくために、その国の経済的・社会的状態を勘案しつつ環境協力を実施する)を理念としている。