<1>最近の政治・経済・社会情勢
(1)政治情勢
※1:サンディニスタ政権と反革命勢力(コントラ)との内戦
1979年7月、43年にわたるソモサ一族による独裁政権が倒れると革命政権が樹立された。その後政権を握ったサンディニスタ政権が急速に左傾化していくのを見て、国内の他の民主勢力、教会、ラ・プレンサ紙、民間企業連合等による反発が起き、こうした反革命勢力(コントラ)とサンディニスタ政権との間で内戦が勃発した。1988年3月に60日間の暫定停戦合意がなされ、その後、最終的停戦の実現に向けて4回にわたる交渉が行われたが、結局交渉は決裂した。しかしながら、停戦状態は事実上継続されていった。
※2:チャモロ政権
1987年制定の新憲法に基づいて実施された1990年2月の大統領選挙は、国連などの国際監視下で行われ、野党連合(UNO)が擁立するチャモロ候補が、サンディニスタ党のオルテガ大統領を破って当選した。
※3:アレマン政権(立憲自由党)
1997年1月-2002年1月まで政権を運営。1998年のハリケーン・ミッチの被害の中で復興と変革を掲げて、IMFの構造調整の条件を受け入れながら、自由主義経済、国家の近代化に努力し、特にインフラ整備に実績を残した。
※4:ボラーニョス政権(立憲自由党)
2001年11月の大統領選挙において、雇用創出、行政機構改革、汚職・腐敗撲滅等を選挙公約に掲げ、最大野党サンディニスタ党のオルテガ候補を大差で破り当選し、2002年1月共和国第23代大統領に就任した。
(2)経済情勢
※5:コンディショナリティー
国際通貨基金(IMF)は融資をするにあたり借入国政府が採るべき経済調整プログラムの履行を融資条件とすることがある。この融資条件となるIMFにより示された経済調整プログラムのこと。種々のマクロ経済政策をその内容とするが、財政赤字削減、貿易赤字削減、公的補助金削減、為替レート切り下げ、税制改革などにつき具体的な政策が示される。
※6:貧困削減成長ファシリティ(Poverty Reduction and Growth Facility:PRGF)
従来IMFが実施してきた拡大構造調整融資制度(ESAF)が、99年9月の世銀・IMF総会を契機に名称変更したもの。従来以上に、貧困削減に資する被融資国の取り組みを重視するものとなりつつある。
※7:拡大HIPCイニシアティブ
99年6月のケルン・サミットにおいて、96年に成立した国際金融機関、二国間債権者、商業債権者を包含する全債権者による重債務貧困国(Heavily Indebted Poor Countries:HIPCs)に対する債務の持続可能なレベルまでの低減を目的としたHIPCイニシアティブを拡充し、二国間ODA債権の100%削減を含む「より早く、深く、広範な」救済を行うこと等につき合意がなされた(拡大HIPCイニシアティブ)。なお、我が国は、HIPCイニシアティブの下で債務削減が行われた後は、適用国に対し新たな円借款供与は困難となり、資金協力を行う場合には無償資金協力が原則となる旨表明している。
<2> 開発上の課題
(1)ニカラグアの開発計画
※8:貧困削減戦略書(Poverty Reduction Strategy Paper:PRSP)
貧困削減に向けて、如何に被援助国自身の取組を促進させ、パートナーによる援助を効果的なものにするかとの議論が高まる中、貧困削減と債務救済とのリンクを強化するために、HIPCイニシアティブ対象国は同イニシアティブ適用決定までに貧困削減戦略ペーパーを策定すべきことが99年9月の世銀・IMF合同開発委員会で決定された。同ペーパーは、各国の「国家開発戦略」をベースに貧困削減という目的に焦点を絞ったもので、全ての開発パートナーにとっても当該国を支援するにあたっての指針となり、国家開発戦略のプライオリティ付け及び開発実施のプロセスを促進させるものである。
※9:リプロダクティブ・サービス
カップルおよび個人が自分の子供の数、出産間隔、出産時期を責任を持って自由に選択・決定でき、そのための妊娠・不妊・避妊に関する情報・相談・手段にアクセス出来るようにすること。
※10:家族計画
両親が望む時期に子供を計画的に産むこと。
(3)主要国際機関との関係、他の援助国、NGOの取組み
※11 国際機関 ODA NET (支出純額、単位:百万ドル)
暦年 |
1位 |
2位 |
3位 |
4位 |
5位 |
その他 |
合計 |
96 |
IDA |
67.4 |
IDB |
47.5 |
CEC |
43.9 |
UNDP |
15.0 |
WFP |
5.5 |
8.3 |
187.5 |
97 |
IDA |
58.7 |
IDA |
49.4 |
CEC |
30.2 |
UNDP |
8.3 |
WFP |
6.9 |
8.9 |
162.4 |
98 |
IDA |
103.5 |
IDB |
99.3 |
CEC |
30.7 |
WFP |
8.8 |
UNFPA |
2.2 |
4.3 |
248.9 |
99 |
IDA |
119.2 |
IMF |
107.1 |
IDB |
76.1 |
CEC |
26.8 |
WFP |
16.5 |
2.9 |
351.3 |
IDA |
: |
International Development Association(国際開発協会(第二世銀))
|
IDB |
: |
Inter-American Development Bank(米州開発銀行) |
CEC |
: |
Commission of the European Communities(欧州委員会) |
UNDP |
: |
United Nations Development Programme(国連開発計画) |
WFP |
: |
World Food Programme(世界食糧計画)
|
UNFPA |
: |
United Nations Population Fund(国連人口基金) |
※12:FAO:Food and Agriculture Organization of the United Nations(国連食糧農業機関)
※13:UNICEF:United Nations Children's Fund(国連児童基金)
※14 DAC諸国 ODA NET (支出純額、単位:百万ドル)
暦年 |
1位 |
2位 |
3位 |
4位 |
5位 |
うち日本 |
合計 |
96 |
独 |
403.0 |
日 |
70.5 |
スウェーデン |
49.4 |
オランダ |
38.1 |
デンマーク |
33.6 |
70.5 |
764.0 |
97 |
日 |
49.0 |
米 |
41.0 |
独 |
29.0 |
デンマーク |
25.8 |
オランダ |
23.6 |
49.0 |
258.3 |
98 |
米 |
65.5 |
独 |
49.6 |
日 |
29.0 |
デンマーク |
28.5 |
オランダ |
26.0 |
29.0 |
313.3 |
99 |
日 |
44.8 |
オーストリア |
43.8 |
独 |
25.7 |
フィンランド |
25.1 |
デンマーク |
24.4 |
44.8 |
364.9 |
DAC |
: |
Development Assistance Committee(OECD開発援助委員会) |
<3>我が国の対ニカラグア援助政策
(1)対ニカラグア援助の意義
※15:開発と民主主義(二つのD):Development and Democracy
(2)ODA大綱原則との関係
※16:政府開発援助大綱(ODA大綱)
我が国のODAの理念と原則を明確にするため、援助の実績、経験、教訓を踏まえ、日本の援助方針を集大成したODAの最重要の基本文書であり、平成4年6月30日に閣議決定された。内容は、基本理念、原則、重点事項、政府開発援助の効果的実施のための方策、内外の理解と指示を得る方策及び実施体制の6部から構成される。「基本理念」において、1)人道的見地、2)相互依存関係の認識、3)自助努力、4)環境保全の4点を掲げている。また、「原則」において、「相手国の要請、経済社会状況、二国間関係等を総合的に判断」しつつ、4項目への配慮、すなわち1)環境と開発の両立、2)軍事的用途及び国際紛争助長への使途回避、3)軍事支出、大量破壊兵器・ミサイルの開発・製造、武器の輸出入等の動向に十分注意を払うこと、4)民主化の促進、市場志向型経済導入の努力並びに基本的人権及び自由の保障状況に十分注意を払うこと、を定めている。
(3)我が国援助の目指すべき方向
※17:政府開発援助に関する中期政策
政府開発援助に関する中期政策(以下中期政策)は、今後5年程度にわたるODAの進め方を体系的・具体的にまとめたものであり、援助の一層効果的・効率的な実施を目指すとともに、内外に我が国ODAについての基本的考え方や具体的援助の進め方をより明らかにしていくことにある。
厳しい我が国の経済財政事情の下で、99年発表の今次策定の中期政策には数値目標は掲げず、策定過程においてODAの改革に関する各界の提言や意見、国会での議論、NGOとの意見交換など国民の意見を最大限取り入れる努力を行った。
中期政策は、「はじめに」、「基本的考え方」、「重点課題」、「地域別援助のあり方」、「援助手法」、「実施・運用上の留意点」の6つの部分からなっており、今次政策ではDACの新開発戦略を踏まえ、重点課題においては、経済・社会インフラ整備への協力とのバランスを配慮しつつ、従来以上に「人間中心の開発」及び「人間の安全保障」という概念を強調している。
※18:経済協力総合調査団
政策対話の充実化、強化の一環として、個々の開発途上国に対して援助の総合的な政策対話の実施を目的に派遣される調査団。外務省が中心となり、その他の援助関係省庁が参加した政府全体のハイレベル政策対話ミッション。
(4)重点分野・課題別援助方針
※19:見返り資金
我が国が実施する無償資金協力のうち、食糧援助、食糧増産援助、ノン・プロジェクト無償において義務づけられた積立金制度。無償資金協力によって供与された物資の売却代金を被援助国政府が中央銀行などの指定口座に振り込み、積み立てる方法が中心だが、政府が供与物資を無償配布したり、政府自ら使用する場合は、政府の財政措置により積み立てられることもある。被援助国政府は、見返り資金を使用する際には、日本政府との事前の使途協議を行うこととなっており、その使途は、日本の在外公館を通じてモニタリングされる。
※20:アグロ・フォレストリー
同じ土地で作物・家畜と樹木とを組み合わせて生産する土地利用法。
(5)援助実施上の留意点
※21:ノン・プロジェクト無償資金協力
世銀、IMFとの合意のもと経済構造調整計画を実施中、または実施予定である無償資金適格国を中心に、同計画推進のため、緊急に必要とされる商品の輸入を支援する資金協力。