ODAとは? 援助政策

対中国経済協力計画【注釈】

(※1)「社会主義初級段階論」

 87年の第13回党大会で趙紫陽総書記(当時)が提起し、97年の第15回党大会でも江沢民総書記が繰り返した中国の社会主義の現状認識。貧困から抜け出すという主要任務達成のために商品経済や市場メカニズムを導入するとし、資本主義的手法の導入の理論的根拠となっている。なお、初期段階は中華人民共和国成立の49年から100年続くとされている。

(※2)「六・四」事件」

 89年4月の胡耀邦元総書記の死去をきっかけに民主化を求める学生運動が広まり、北京の天安門広場に座り込んだ学生などに対し、同年6月4日未明に、人民解放軍戒厳部隊が天安門広場に突入し鎮圧した。事件の日をとって「六・四」事件と呼ぶ。「天安門事件」とも呼ばれるが、76年に周恩来総理の死去をきっかけに起きた事件と区別するため「第二次天安門事件」と呼ぶこともある。

(※3)「南巡講話」

  92年1月、トウ小平氏が武昌、深?、珠海、上海を視察した際、改革・開放の堅持と経済成長の加速を呼びかけた講話。89年の天安門事件で低迷した経済を回復させ、92年以降の高成長のきっかけとなった。「南方講話」ともいう。

(※4)「三講」

 98年11月、中国共産党が提起した思想教育運動。「学習、政治、正しい気風の三つを重んじよ」と呼びかけ、職場で政治思想学習会などを展開。汚職の蔓延やイデオロギーの希薄化などで失墜している党の権威を回復し、党・政府幹部の綱紀粛正を進めるのが目的となっている。

(※5)「三つの代表」

 2000年2月、江沢民国家主席が広東省を視察した際に発表した新たな理論。中国共産党は(1)中国の先進的な社会生産力の発展の要求、(2)中国の先進的文化の前進の方向、(3)中国の最も広範な人民の根本的利益、の三つを代表すべきであるというもので、「三講」教育とともに党内思想引締めキャンペーンの一つとして強力に展開されている。

(※6)「全方位外交」

 特定の国や勢力と同盟関係を結ばず、各国との友好関係を追求する中国外交の基本原則。82年9月の中国共産党第12回全国代表大会では「独立自主外交」と呼んだ。また、中国は冷戦後の国際秩序を多極化した世界を捉え、その一極となるべく日、米、露、EUなど大国との関係を重視している。

(※7)中国政府の国内人口見通し

 2000年12月19日、中国国務院新聞弁公室発表「中国の21世紀の人口と発展」より。

(※8)「第10次五ヵ年計画」の目標

 具体的な達成目標は以下の通り。
(1)マクロ経済
 経済成長率年平均約7%、2005年の国内総生産約12.5兆元(一人当たり9,400元)、新たな雇用の創出と農村労働力の移転(各4,000万人)、都市登録失業率の抑制(約5%)など。
(2)経済構造調整
 農業の基礎的地位の強化、産業構造の最適化を通ずる国際競争力の強化、第3次産業の発展、情報産業の発展、情報化の推進、インフラ整備の強化、西部大開発を通ずる地域の協調的発展、都市化の推進など。
(3)科学技術と教育の発展、人材育成
 2005年のGDPに対する研究開発費を1.5%以上、科学技術進歩と革新を推進し持続発展能力の向上、教育の発展の加速(中学進学率90%以上、高校進学率60%、大学等進学率15%)、人材戦略の推進など。
(4)持続可能な発展
 人口の自然増加率を0.9%、2005年の総人口を13.3億人に抑制、資源の節約・保護及び永続的な利用、生態系の整備強化(森林被覆率を18.2%に拡大(1999年は13.9%)、都市環境の改善、主要汚染物質の排出の抑制(2000年比で10%減))など。
(5)改革・開放の推進
 経済体制の整備、対外開放の拡大。
(6)国民生活水準
 就労機会の拡大と社会保障制度の健全化、収入の増加(年平均約5%)、住民生活水準の質的向上など。


(※9)日中民間緑化協力委員会の設置

 98年11月の江沢民国家主席訪日時に発出された「共同プレス発表」においても森林の保全・造成を官民双方で推進していくことの重要性が認識され、99年7月には小渕総理(当時)が民間団体などによる日中間の民間植林緑化協力を促進するための基金設置を提案し、これを受けて同年11月、「日中民間緑化協力委員会」が設置された。

(※10)ADF

 Asian Development Fund。アジア開発銀行(ADB)が実施する低利長期の借款資金の財源とする目的で設けられた特別資金であり、一般的な借款資金であるOCR(Ordinary Capital Resources)よりも融資条件が緩い。

(※11)対中円借款の実績例

 例えば、中国における鉄道電化総延長(約13,000km)の約35%(約4,600km)、港湾における1万トン級以上の大型バース(約470ヵ所)の約13%(約60ヵ所)、下水処理場処理能力(約1,100万トン/日)の約35%(約400万トン/日)が円借款によるものとされる(国際協力銀行調べ、いずれも98年時点)。

(※12)無償資金協力や技術協力の実績

 例えば、我が国無償資金協力によって設立された日中友好病院では、一日に約3,000人の患者の治療を行うなど、中国における主要な医療機関の一つとなっている。
 技術協力についても、行政官の養成支援などの分野を中心に、98年度までの累計で9,000人近い研修員を受け入れたほか、4,000人の専門家を派遣した。
 また、無償資金協力と技術協力双方を通じ支援を行っている日中友好環境保全センターは、環境保全に係る人材育成及び公害防止技術の開発・研究の中心的機関として、大気汚染・酸性雨対策などの面で積極的な活動を行っている。

(※13)我が国による留学生支援

 近年、中国からの留学生は大幅に増加しており、留学生全体でも最大の割合を占めている。我が国は国費留学生制度を通じ、98年度は1,767名、99年度には1,749名の中国人留学生を受け入れている他、両年度とも6,000~7,000名の中国人私費留学生に対して学習奨励金の給付を行っている。

(※14)DACによる「日本の開発協力政策及び計画に関する審査報告書」

 DACでは各DACメンバー及び全体の開発援助活動の向上を図るために定期的な相互審査を実施しており、各メンバーは約三年に一度の割合で審査を受ける。相互審査はDAC事務局の代表とDACメンバーから選ばれた二ヶ国の審査国によって実施される。99年に発表された対日審査の審査国はフランス及び英国である。我が国の対中ODAについては、審査報告書中の付属資料「中国訪問に関する報告」において引用のような記述例がある。

(※15)対中ODAに関する中国側発言など

 98年11月の江沢民国家主席訪日時に発表された日中共同宣言において、「中国側は日本がこれまで中国に対して行ってきた経済協力に感謝の意を表明した」旨述べられている。また、2000年10月の日中首脳会談において、朱鎔基総理は「日本のODAは、中国の経済発展、国家建設にとって大きな助けとなっており、両国の経済的関係の促進にも大きく寄与している。」旨述べている。
 また、日中経済協力二十周年記念式典において、項懐誠財政部長(大臣に相当)は「中日経済友好協力は我が国の経済発展を支え、投資環境を改善し、人民の生活水準を引き上げ、人材を育成するなどの分野で積極的な働きがあった。」旨述べている。また、呉儀国務委員は同記念式典において「中国政府を代表し、日本政府に対し、これまでの中国経済建設に対し提供いただいた支持に感謝申し上げる。」旨述べている。

(※16)「ODA大綱」の「原則」

 92年6月30日、閣議決定。国際連合憲章の諸原則(特に、主権、平等及び内政不干渉)の他に以下の四点をODA実施の原則としている。(1)環境と開発を両立させる、(2)軍事的用途及び国際紛争助長への使用を回避する、(3)開発途上国の軍事支出、大量破壊兵器・ミサイルの開発・製造、武器の輸出入等の動向に十分注意を払う、(4)開発途上国における民主化の促進、市場指向型経済導入の努力並びに基本的人権及び自由の保障状況に十分注意を払う。

(※17)円借款の単年度供与方式

 複数年度にわたって供与限度額を決定するラウンド方式に対して、単年度方式とは、年度ごとに政府間協議によって供与限度額を決定する方式。単年度方式での案件の採択に際しては、被援助国が作成する向こう3~5年程度にわたる要請案件のリスト(ロング・リスト(円借款案件候補リスト))を基に、各々の案件のニーズ、成熟度などを検討する。

(※18)UNAIDS

 The Joint United Nations Programme on HIV/AIDS(国連合同エイズ計画)。94年、国連経済社会理事会において、5つの国連機関及び世界銀行が共同スポンサーとして参画する機関として設置が承認され、96年、開発途上国のエイズ対策強化支援、エイズ対策への政府の取組み強化支援、国連のエイズ対策の強化と調整などを目的として、正式に発足した。なお、同機関は共同スポンサー各機関の有する資金、専門性、ネットワークの調整・強化を主目的としており、開発途上国へ資金供与したり、プロジェクトを直接実施したりする機関ではない。
 2000年10月現在の共同スポンサー機関はUNICEF(国連児童基金)、UNDP(国連開発計画)、UNFPA(国連人口基金)、UNDCP(国連薬物統制計画)、UNESCO(国連児童基金)、WHO(世界保健機関)、The World Bank(世界銀行)である。

(※19)環境分野の対中支援

 わが国の環境協力については97年6月に公表した「21世紀に向けた環境開発支援構想(ISD構想)」において、地球規模で広がっている環境破壊は人類生存の脅威となり得るものであり、人類が共同で取り組むべき安全保障の問題であるとの認識を示し、「自助努力」、「持続可能な開発」への支援といった基本理念を掲げた。また、2000年11月の日中韓首脳会合では、国境を超えたネットワークの構築や環境共同体としての意識醸成の重要性などが指摘されている。環境分野での援助は、こうした理念を具体化するものである。
 大気汚染や水質汚濁の防止などに関しては、わが国が国内で培ってきた経験や技術、政府間のみならず地方公共団体や民間における協力の成果を活用して積極的に対応していく必要がある。

(※20)我が国ODAによる中国の野生株ポリオ根絶

 我が国は91年から99年までプロジェクト方式技術協力(研修員受入れ、専門家派遣及び機材供与の三つの協力形態を総合的に組み合わせて実施する事業)である「ポリオ対策プロジェクト」及び無償資金協力「ポリオ撲滅計画」でのワクチン供与などを通じ、WHOが掲げた2000年までのポリオ根絶目標達成に大きな貢献を果たした。中国では94年を最後に野生株ポリオの発生は見られない。なお、2000年10月、WHOは中国を含む西太平洋地域から野生株ポリオが根絶された旨宣言した。

(※21)観光の促進のための政策提言、人造りなどの支援

 観光の促進のための政策提言、人造りなどの支援に当たっては、中国各地域の特色あるいは、日本からの交通の便、業界など関係者からの意見なども十分に勘案する必要がある。
 また、観光資源となる文化財などの保護や関連分野の人材育成、更に観光開発計画の策定などの協力も考えられる。

(※22)新開発戦略

 96年にDACが採択した21世紀に向けての援助指針。本戦略は「すべての人々の生活の向上」を目的に、貧困人口の割合の半減を含めたいくつかの具体的目標を定めており、その実現のために開発途上国の自助努力と国際社会による一致した協力の重要性を指摘している。日本はその策定過程において主導的な役割を果たした。

(※23)日中間の新たなパートナーシップ

 98年11月、江沢民国家主席訪日の際に発表された「日中共同宣言」では従来の二国間関係「善隣友好」という関係を越えて、「平和と発展のための友好協力パートナーシップ」の確立が謳われるに至った。

(※24)東アジア域内での環境分野での協力

 例えば、2000年から酸性降下物対策として「東アジア酸性雨モニタリングネットワーク」が中国を含む東アジア十ヵ国で正式稼働し、本格的なモニタリングが開始された。また、日本海や黄海の海洋汚染についても「北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP)」のもとに対策が進められようとしている。さらには、「アジア太平洋地域渡り性水鳥保全戦略」を策定し、中国を含む東アジアからオーストラリアにかけての生息地ネットワークが構築され、情報交換、調査研究などが開始される予定である。

(※25)中国におけるNGOの動向

 中国においては、非政府組織として活動する多くの社会団体が存在しているが、党や行政機関により設立された団体も多いといわれる。一方で、例えば、環境分野のNGOのように国内資金のみならず、海外からの資金を積極的に利用して活動している団体もある。
 これらの団体規模は様々であり、活動分野についても、文化・学術、国際交流、経済活動支援から、環境保護、貧困対策(「扶貧」)、女性の地位向上などの援助活動まで多岐にわたっており、近時は教育、医療、環境などの分野で海外NGOの活動も増えてきている。
 また、我が国のNGOも学術交流、保健医療、人口問題、貧困対策、教育、環境・生態保全などの分野で積極的な活動を行っている。

(※26)草の根無償資金協力

 開発途上国の多様な開発ニーズに応えるため、開発途上国の地方政府、教育・医療機関及び開発途上国において活動しているNGOなどが実施する比較的小規模な事業に対し、当該国の諸事情に精通している我が国の在外公館が中心となって資金協力を行うもの。中国に対しては99年度に78件の事業に対し支援を行い、事業実績は全世界において第一位となっている。

(※27)シニア海外ボランティア派遣事業

 増加する開発途上国からの技術援助の要請に応えるため、幅広い技術、豊かな経験を有する中高年(40~69歳)で、かつ、ボランティア精神に基づき開発途上国の発展のために貢献したい人々を派遣する事業。90年にシニア協力専門家派遣制度として発足した。派遣期間は原則として1~2年間であり、2000年12月末現在で265名を派遣中(累計509名)。なお、中国に対するシニア海外ボランティアの派遣開始については、現在先方政府と協議中。

(※28)ラウンド方式及び単年度方式

 (※17)参照。

(※29)日中環境開発モデル都市構想<

 97年9月の日中首脳会談において提唱された「21世紀に向けた日中環境協力」を構成する二つのプロジェクトのうちの一つ。本プロジェクトは、大連、重慶及び貴陽の三都市を対象にして、大気汚染対策を中心として循環型社会システムを築くために主要な汚染源対策やモニタリング・システムの構築を円借款を通じて支援するとともに、人づくりや制度作りなどのソフト面も技術協力よって支援しモデル・ケースを作り、それを他の都市に普及しようとするプロジェクトである。

(※30)OOF

 Other Official Flows(その他の公的資金の流れ)。開発途上国への公的資金の流れのうちODAに含まれないもの。
【ODAとは(DAC基準)】
ODAとは以下の三つの用件を満たす資金の流れを指す。
(1)政府ないし政府の実施機関によって供与されるものであること。
(2)開発途上国の経済開発や福祉の向上に寄与することを主たる目的としていること。
(3)資金協力については、その供与条件が開発途上国にとって重い負担とならないようになっており、グラント・エレメント(G.E.:供与条件の緩やかさを表す指標。商業条件(金利10%と仮定)の場合、G.E.が0%、贈与の場合、同100%)が25%以上のものであること。


(※31)アンタイド・ローン

 我が国の輸出入若しくは海外における海外経済活動の推進又は国際金融秩序の安定に寄与することを目的とした準商業的な条件による融資。我が国からの資機材の調達を資金供与の条件としないため「アンタイド・ローン」と呼ばれる。中国に対する累積承諾認額は99年度まで約2兆2,300億円(2000年3月現在の残高は約4,200億円)である。

(※32)マイクロクレジット・プロジェクト

 インフラ支援など大規模な資金援助とは対照的に、文字通り小規模の資金援助を行うプロジェクト。同プロジェクトの例としては、バングラデシュの貧困農民を主な対象として小規模の融資を無担保で行い、大きな成果を上げている「グラミン銀行」が上げられる。

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