平成14年2月
<1>最近の政治・経済・社会情勢
(1)政治情勢
カンボジアは、インドシナ半島の中心に位置する、面積18.1万平方キロメートル、人口約1140万人(98年国勢調査)の国である。南部はシャム湾に面し、周囲をベトナム、タイ、ラオスに囲まれている。国土の大半は平野で、そのほぼ中央にはメコン河が南北に流れている。
カンボジアは、1953年にフランスから独立し、一定の繁栄を享受していたが、1970年のクーデター以降20年に及ぶ内戦および政治的混乱の状態は、国土を破壊し、疲弊させた。
90年代に入り、国際社会のカンボジア和平に向けた努力が活発になり、91年のパリ和平協定を受け93年には内戦当時交戦関係にあったフンシンペック党(ラナリット第一首相)と人民党(フン・セン第二首相)の連立政権によるカンボジア王国が成立した。その後平和な国造りが期待されたが、両党間の軋轢は次第に高まり、97年7月には再び大規模な武力衝突が発生した。これに対し、事態を重く捉えた国際社会は、民主的な政権の樹立を強く求め、98年に総選挙が実施されることとなった。総選挙では人民党が単独で過半数を制し、再度フンシンペック党との連立政権を組み、国内は安定期を迎えたところである。フン・セン首相は、これを好機と捉え、自らの新政権を「経済政権」と名付け、国内の平和、安定及び治安の維持、国際社会への統合及び社会経済開発に努めており、99年にはASEANにも加盟した。しかし、引き続き同国の平和、安定の継続が課題となっている。
(2)経済情勢
カンボジアは、本来、メコン水系に開けた肥沃な土地と豊富な水資源に恵まれた農業を基幹産業とした国家であり、1960年代には、食料の自給を達成し、米やゴムの輸出を行っていた。
しかし、1970年代、長期に亘る内戦と混乱により国土が荒廃し、農業施設の破壊等生産手段の喪失、技術者・知識人を含めた人材の喪失、労働人口の減少等に見舞われ経済は落ち込んだ。
その後80年代には、東側諸国等の支援を受けてかなりの回復を見せ、90年代には、市場経済体制に移行し、UNTAC
※1による民主化支援、国際社会の援助を受け、多くの困難に直面しつつも、荒廃した国家の再建が図られている。
しかしながら、97年に至り、7月の武力衝突とアジアの通貨危機という二重の苦しみから、海外からの援助と投資が急速に減少したこともあり、97、98年のGDP成長率はそれぞれ3.7%、1.5%に止まった。新政権成立により政治的安定を達成した98年11月以降は、99年に6.9%のGDP成長率を達成するなど経済は上向き、今後も同様な伸びが期待されている。
一方、財政面では、歳入における国内税収の割合が低く、関税収入に大きく依存し、歳出面においては軍事・公安経費が4割(37%:2000年)近くを占めている等、未だ改善の余地が多くある。このため政府は、これら予算構造の抜本的強化を図るため、歳入の安定と増加の観点から付加価値税を99年から導入し、また、歳出の削減に向け、軍人、警察官及び公務員の削減等の諸改革に果断に取り組む姿勢を見せている。
(3)社会情勢
政治的安定と、経済の回復によりカンボジアの社会は安定化の傾向にあるものの、特にポル・ポト政権時代における知識層に対して集中的に行われた粛清及び長年の内戦の後遺症として、人材不足、社会経済基盤の荒廃等が大きな問題として残っており、国民は教育、保健・医療等の基本的な生活分野における社会サービスへのアクセスが制限される生活を余儀なくされている。カンボジアの1人当たりのGDPは300米ドルを下回る水準であり、特に農村部における貧困は深刻な状況にある。
また、行政機能が不完全であり、汚職、貧困、一般犯罪等の社会問題への改善が求められているとともに、カンボジア政府が現在推進している諸改革の結果として解雇される人員の雇用問題が新規労働人口の雇用問題と重なり、新たに社会問題化することが懸念されている。また、土地所有制度が確立していないため、権力者による恣意的な土地の独占及び難民や国内避難民の帰還に伴う新旧居住者間での土地所有を巡る争い等が発生し、貧困層等社会的弱者が被害者となっており、早期の土地制度の確立が求められている。さらに、兵員削減(除隊兵士)、対人地雷、小型武器、薬物に関する対応も重要な課題となっている。
<2>開発上の課題
カンボジアにおいては、長年の内戦と政治的混乱の時期に受けた被害が甚大であり、依然として全ての基礎的な分野において国家の基礎を作ること、すなわち「復興」へ向けた施策がまず重要である。カンボジアが直面する重要課題としては、99年の支援国会合(CG)
※2以降の議論を通じ、(i)財政改革、(ii)行政改革、(iii)兵員削減、(iv)自然資源管理、(v)社会セクターの5つの改革と、(vi)グッドガバナンス、(vii)土地管理の7点であることにつき援助国側と同国との間で合意しており、それぞれの課題毎にワーキング・グループを作り、一定期間毎にモニタリング会合を実施し、進捗状況についてチェックしている。一方で、ASEAN域内の経済格差が大きくなっていることから、域内格差を早期に是正するための開発も同時に検討することが求められる。
(1)カンボジアの開発計画の推移
カンボジアの第1次社会経済開発5ヶ年計画(SEDPI:1996-2000年)は2000年に終了した。現在、第2次社会経済開発5ヶ年計画(SEDPII:2001-2005)を策定中である。また、同SEDPIIを基に、貧困削減を目標とする貧困削減戦略ペーパー(PRSP)も策定する予定であり、暫定版(I-PRSP)は2001年初めに策定済みである。
(イ)第1次社会経済開発5ヶ年計画(1996-2000)
SEDP1では、カンボジアが市場経済国家を目指す一方で、貧困層の90%が農村に居住していることから、農村開発による貧困撲滅こそ政府が取り組むべき緊急課題であるとされていた。その上で、5年間のマクロ経済主要目標として、実質GDP成長率を年率7.5%に設定し、投資額については、期間中投資額2200万米ドル、都市と農村の投資配分は35:65とすることなどが目標として掲げられた。
しかし、1997年の政情不安、アジア経済危機及び農業の低成長が響き、GDPは年率4%(東南アジア平均は3%)、投資額についても、目標の26%、農村部への投資は35%に止まった。その他社会開発の主要指標についても、ある程度の改善は見られたものの、目標達成には及ばなかった。
(ロ)第2次社会経済開発5ヶ年計画(SEDPII:2001-2005)
現在策定作業中のSEDPIIにおいても国家の最大目標は引き続き貧困削減に置かれている。SEDPIIにおいて主要な部分を占める貧困削減戦略は、I-PRSPの内容に基づき策定が進められており、現段階では、(i)迅速かつ持続的な経済成長を実現し、貧困層の経済機会を拡大すること、(ii)貧困層の教育レベルや健康状態、自然資源や資金へのアクセスを改善し、人的資本を高めること、(iii)社会的弱者や、経済成長の恩恵が届かない層については、セーフティーネットを設けることの3つの目標が挙げられている。
また、マクロ経済主要目標である実質GDP成長率目標は、諸改革の確実な実施、ガバナンスの改善で着実な成長が見込まれるとして、年率6~7%とされている。
(2)開発上の主要課題
(イ)セクターをまたぐ基本的な課題
(a)貧困対策
カンボジアの貧困要因としては、(i)経済機会の欠如に加えて、(ii)教育と保健が不十分であることによる潜在能力の低さ、(iii)食料供給が不十分であることによる脆弱性、(iv)識字率の低さ、社会的意思決定過程からの除外及び腐敗や差別等により社会的に阻害されていること等、広範囲にわたる項目がI-PRSPで挙げられている。従って、貧困に資する援助を行うにあたっては、これら要因を十分踏まえた上で実施する必要がある。
(b)人材の不足
ポル・ポト政権時代の知識人の粛正や教育システムの破壊、またその後の内戦のための人材育成の立ち遅れにより、社会の中枢を担うべき世代が極端に不足している。また、15歳未満の世代が全人口の43%(98年国勢調査)を占めるなど、基礎教育へのアクセス不足が貧困から脱却できない要因の一つとも言われており、中長期的な視点に立ち、人材育成・能力開発を推進することが必要である。
(c)諸改革と社会資本の整備
長年の内戦による人材不足や法整備の遅れのため、行政サービスや司法機能が非効率かつ不透明であり、汚職・腐敗が問題視されており、健全な経済開発の上で大きな課題となっている。カンボジア政府は、これらを改善するため、(i)軍隊、(ii)公的サービスの効率向上を担う行政部門、(iii)民主化、法の支配、人権尊重の促進を担う司法部門、(iv)教育・保健等の社会セクター、(v)森林の違法伐採問題への取り組みという5つの改革を推進し、グッド・ガヴァナンス、土地管理の実現にむけ精力的に取り組んでいる。中でも、付加価値税の導入による財政基盤の強化や森林違法伐採取り締まり等は一定の成果を上げてきている。
(d)対人地雷除去及び被災者支援
カンボジアには、長年の内戦の期間中に敷設された4~6百万個ともいわれる対人地雷が残存しており、被災者は毎月50~90人に上り、その約9割は民間人である。こうした残存地雷は、人間の生命に対する脅威であるとともに農業分野等の社会開発を阻害している。カンボジア地雷対策センター(CMAC、政府機関)やNGOの実施する地雷除去活動には主として人海戦術が用いられ、全て除去するには数百年かかるとも言われている中、引き続きNGO支援を行うと共に、効率の良い除去技術を研究開発していく必要がある。また、地雷回避教育や、被災者に対する職業訓練、心理的ケアなど総合的な地雷問題への対策に取り組む必要がある。
なお、CMACについては汚職問題もあったが、改革に取り組み、現在ほぼ正常に活動を行っている。本件に関しては、カンボジアで新たに地雷対策庁(CMAA)を設立し、事態の打開に努めているが、CMACとの役割分担が明確でないなどの問題点を抱えており、引き続き注視が必要である。
(ロ)セクター毎の課題
(a)社会経済開発のための基盤整備
道路、橋梁、情報通信、発電施設、上下水道等の社会経済インフラが破壊され、また長期間に亘り十分な維持管理が行われず放置されてきた状況を踏まえ、経済社会の一層の安定と民生向上のためには、引き続き社会経済インフラ整備が重要な課題となっている。また、AFTA構想
※3、将来のWTO加盟など国際化にも対応し、経済成長を実現していくため、法制度等の制度インフラ整備、国際競争力ある産業の育成が喫緊の課題である。また、ASEAN諸国との格差を縮める手段の一つとして、ITはチャンスとの認識の下、ITを浸透させる情報通信基盤、法制度等の整備を行うことも新たに必要となろう。
(b)農業・農村の開発
農業は、GDPの約4割を占めるカンボジアの主要産業であるが、長年の内戦により灌漑水路等の農業用施設が破壊され、農業技術の近代化が著しく遅れており、低い生産性と低い作付け率及び天候に左右されやすい非常に不安定な農業が行われている。国民の84%が農村に居住し、その約40%が貧困ライン
※4以下の生活を強いられており、農業・農村の開発を推進し、農業生産性の向上を図ることは、カンボジアの持続的な経済成長、貧困削減の観点から最重要課題である。
農業部門の発展の鍵としては、(i)効率的な灌漑・水管理システムの開発、(ii)農産物の生産性の向上、(iii)作物の多様化・集約化等営農システムの改善、(iv)畜産部門の強化・拡大、(v)米の生産、魚の養殖の技術向上、(vi)共同体に立脚した農業経営の実現が挙げられる。
長年の内戦の結果、国民の基礎的な生活環境が悪化し、教育、保健・医療等の最低限の社会サービスが十分提供されておらず、その状況は特に地方部の低所得者層において深刻な状況である。特に医療サービスについては、地方で医療機関が不足し、そのためアクセスが制限されており、国全体での医師、看護婦の絶対数の増加、病院数の確保、地方での保健・医療水準の向上が重要な課題である。また、近年、同国のHIV/AIDS感染者・患者数が急増しており(感染者総数22万人)、結核も世界でも高い罹患率を示しており、両者の重複感染の増加も深刻となっている。こうした感染症対策は、同国の開発や貧困削減を進める上でも緊急の課題である。
更に、学校、教師の不足と、低所得層の子供は学校よりもやむを得ず日々の生活を優先することから、就学率は低くなり、非識字率も61.5%と高い(男性が43%、女性が80%)。教育水準の低さは貧困問題の解決を難しくしている。
安全な水へのアクセスを有する人口割合は13%であり、農村部の多くでは川やため池の水を飲料水として利用する状況にある。貧困削減のためには、これら公共社会的サービスへのアクセス改善を含めたBHNへの大きなニーズに対応していく必要がある。
(d)自然資源の保全及び適正管理・利用の推進
カンボジアの森林資源は、かつては豊かなものであったが、近年、違法伐採や焼き畑等により、1969年から1997年の間に国土面積に占める森林面積の割合が73%から58%に減少するなど深刻な状況にある。カンボジア政府は、99年のCG会合において森林問題への取組強化を改革の1つとして表明し、現在までに違法伐採が殆ど行われなくなるなど成果を上げているが、適切な森林管理と森林の再生措置が取られない限り、場所によっては5~10年以内に森林の商業的価値が失われる危機的な状況が報告されている。森林資源は、輸出の約20%を占める主品目であり、経済振興を図る上で貴重な資源であるとともに、生態系に対する役割も大きく、その適正な保全・造成が緊急的な課題である。
また、トンレサップ湖やメコン水系は豊かな漁業資源を有し、カンボジア人の主要な動物性蛋白源となっていることから、湖周辺の保水林の保全を図り、最近の乱獲による漁業資源の減少を踏まえた持続的な資源管理型漁業への転換が緊急的な課題である。また、これらの水系は、カンボジアのみならず、下流も含め、地域の生態系の維持に大きな役割を果たしており、その洪水調整や水資源利用に当たっては地域の生態系への短期的、長期的影響に特段の配慮を払う必要がある。
更に、カンボジアでは希少な野生動植物が多数存在し、豊かな生物多様性を有しているが、最近の開発の進展と密猟、乱獲等により、これら希少種が存亡の危機に直面しており、その保全対策の確立が必要となってきている。
(3)主要国際機関との関係、他の援助国、NGOの取り組み
世界銀行(世銀)・国際通貨基金(IMF)の構造調整融資の再開に伴い、カンボジア及びドナー間の援助協調への議論が活発化している。99年のCG会合で、カンボジアが抱える問題点が挙げられ、分野毎に、ワーキンググループ(以下WG)を設け、世銀、IMF等の国際機関が議長となり、改革に向けた議論が行われているが、かかる中、教育・保健セクターにおいては、セクターワイドアプローチ(SWAP)
※6が導入されつつある。かかるアプローチでは、開発関係者間でセクター毎の情報共有により認識ギャップを回避し、開発上の目標を共有することが重要である。
(イ)国際機関との関係
(a)世界銀行(世銀)
世銀は、すでに策定した国別援助戦略(CAS)
※8を実現するため、3000万ドルの構造調整融資
※9を実施中である。また、99年CG会合のフォローアップとして、除隊兵士支援事業(CVAP)のとりまとめを行い、カンボジア経済財政省をカウンターパートとして企画立案、援助調整、資金協力等を行っている。
(b)国際通貨基金(IMF)
IMFは、カンボジア政府との間で、貧困の削減、経済成長、一人当たり所得の増加を目標とするPRGF
※10の実施につき合意し、現在実施中である。また、99年CG会合のフォローアップとして、財政改革WGの議長を務めている。経済財務省をカウンターパートとしており、世銀と共に貧困削減戦略ペーパーの策定に貢献している。
(c)アジア開発銀行(ADB)
ADBは、農村開発とインフラ整備を中心に支援を実施している。また、貧困削減について、独自に国別援助計画(CAP)を作成し、アセスメントを実施している。CGフォローアップでは、国連食料農業機関(FAO)と共に自然資源WG(旧森林WG)の共同議長を務めている。計画省をカウンターパートとしており、第2次社会経済開発5ヶ年計画(SEDPII)策定支援を行っている。
(d)国連開発計画(UNDP)
UNDPは、第2次国別協力枠組み(CCF)を策定し、農村開発を中心として、貧困削減に取り組む他、カンボジア地雷対策センター(CMAC)支援で中心的な役割を果たしており、CMACの改革問題(<2>(2)(イ)(d)参照)では、カンボジア政府及びドナーの調整等を行っている。また、CGフォローアップにおいては、行政改革WGの議長を務めている。
(ロ)他の援助国の取り組み
我が国は、カンボジアにおける最大の援助国であるが、他の主要援助国は、フランス、ドイツ、オーストラリア、米国(99年実績)等である。米国は、民主化の促進を最大の課題とし、NGOを通した人道援助を中心に実施している。
(ハ)NGOの動向
1980年代から主として人道援助を担ってきたNGOの役割は現在も重要視されており、CG会合への参加、主要法案起草段階における政策提言など発言力は大きい。NGOの活動領域は、保健・医療、社会開発、地域開発、人的資源開発、農村開発、人権等の他、地雷除去に対する支援など多岐に亘りかつ実施地域も広範に及んでいる。カンボジア開発評議会(CDC)に登録されているNGOの数は、国際NGO143団体、国内NGOは171団体(00年7月現在)であることから、カンボジアで活動しているNGOは約350団体を上回ると推計される。
我が国NGOも、我が国とカンボジアの国交樹立前の1980年代初頭から活躍しており、教育・医療・農村開発などで支援活動を展開している。
<3>我が国の対カンボジア援助政策
(1)対カンボジア援助の意義
(イ)70年代以降約30年に亘る内戦と政治的混乱を経て、現在、懸命に国家再建に取り組むアジアの同胞たる同国を支援することは、同国が再び政治的に不安定な状況へ逆戻りすることを阻止するものであり、我が国外交上最も重要な地域の一つであるアジアの平和と安定に大きく寄与するものである。
これまで、我が国は、かかる観点から、同国の和平及び復興支援に対し、国際社会をリードする能動的な外交を展開してきている。92年に我が国初のPKOを派遣したこと、同国支援会合に於いて積極的な貢献を行って来ていること等は、その一例である。
また、同国支援への我が国国民の関心も極めて高く、我が国NGOが最も活発に活躍している国となっていることもあり、政府としても適切な対応が必要とされている。
かかる我が国の姿勢は、同国国民はもとより、シハヌーク国王、フンセン首相自身にも理解されており、同国より我が国の支援に大きな期待と感謝が寄せられているのみならず、同国は、国際場裏での我が国の政策を強く支持する等、様々なレベル、機会に於いて、両国間に、緊密な友好関係が根付きつつある。
(ロ)更に、同国への支援の意義は、世界経済のグローバル化の文脈に於けるASEAN全体の経済的底上げの観点からも強調されるべきである。
AFTAに見られる関税障壁の撤廃等経済統合を推進するASEANにとり最大のネックは、ASEAN域内に存在する経済格差である。中でも、長期にわたる紛争等により疲弊したカンボジアは、多大な開発ニーズと著しい経済的ハンディキャップを有しており、同国の開発と復興を支援することは、同国一国への支援に止まるものではなく、長期的なASEAN全体の経済の活性化、或いはASEANの優先課題であるメコン地域開発にも大きく貢献するものであり、ひいては、我が国経済にとっても有益な結果をもたらすものである。
(2)ODA大綱原則との関係
現フン・セン政権については、97年7月の武力衝突を経て事実上ラナリット第一首相を失脚させ国内を掌握したとして、その手法に関し、一部の国からは非民主的であるとの批判もあった。しかし翌年実施された選挙は国際社会が「概ね自由・公正」と認めるものであり、また現在の政策についても民主化を重視しているほか、市場経済化や軍事支出の削減を推進しており、我が国ODA大綱原則との関連では、望ましい方向に向かっていると言える。但し、基本的人権の保障状況については、内戦終結後間もないことからも、今後引き続き注意深く見守って行く必要がある。
(3)我が国援助の目指すべき方向性
(イ)我が国のこれまでの援助
我が国は、これまで、カンボジア政府との政策対話を踏まえ、(i)社会経済インフラの整備、(ii)保健・医療等の基礎生活分野、(iii)農業・農村の振興、(iv)人材育成の分野で、無償資金協力、技術協力を中心に援助を実施している。また、カンボジアは最貧国(LDC)
※11であり、政治的にも不安定であったことから1968年以来円借款を供与していなかったが、最近の政治的安定及び新政権による経済再建のための種々の政策の着実な実施状況を踏まえつつ、同国で唯一外洋に面した主要港でありながら老朽化が著しかったシハヌークヴィル港に対し、その改修が同国の経済復興に極めて重要であるとの判断から、99年には約30年振りに同港改修事業に円借款41.42億円までの円借款を供与した。
また、99年CG以降において、援助国とカンボジア政府の間で課題として挙げられている、行政改革・財政改革・兵員削減・森林保護(自然資源管理)、更にその後追加された社会セクター・グッドガバナンスの各分野においても、我が国は積極的に関与している。
(ロ)カンボジア援助全体に占める我が国援助の割合
我が国は、内戦により荒廃した国土の復興開発に向け積極的に協力してきており、過去10年間に亘るカンボジアに対するODA(支出純額ベース)累積総額は、7.2億ドル(国際機関経由1.7億ドル、二国間ベース5.5億ドル)である。カンボジアに対する全体の援助額の内、我が国が占める割合は25.0%となっており、トップドナーの地位を占めている。
(ハ)今後5年間の援助の方向性
我が国は、上記にて述べてきたとおり、一貫してカンボジアの再建のため、常に国際社会をリードして支援を実施してきた。その結果、これまでそうであったように、今後の同国の経済社会開発に於いても、我が国の貢献は他のドナー国・機関に比し、相当に重要な役割を担っており、この認識の下、より効果的・効率的な支援を実施していく必要がある。
同国は、これまで復旧・復興に尽力し、現在、更に基礎的経済社会開発の充実にも向かいつつあり、そのためには、同国自身が解決すべき多くの困難があることは事実であるが、一方、我が国が他ドナー諸機関・国を引き続きリードして、こうした同国の開発努力に適切に対処していく必要がある。更なる同国の開発の喫緊の課題は、内戦の結果としての人材不足を補うべき人造りと制度の再構築、そして基礎的経済インフラの整備等々であり、持続可能な開発を前提としつつ、持続的な経済成長と貧困削減の視点から支援していくことが必要である。
かかる観点から、我が国は、今後ともカンボジア政府との政策対話等より緊密な協議を通じて第2次社会経済開発5ヶ年計画(SEDP2)や、貧困削減戦略ペーパー(PRSP)
※12の内容も十分踏まえつつ、カンボジアの持続的な経済成長ならびに貧困削減に資する支援を実施していく方針である。
なお、世銀・IMFの譲許的融資供与の条件の一つである貧困削減戦略ペーパー(PRSP)は、計画省にて策定中であるが、これは、ドナーを含む幅広い参加型プロセスの下で策定され、同国向け援助を実施するに際しての一つの指針となるもので、我が国としてもSEDP2に加えて、本ペーパーの策定、実施、モニタリングに係わる参加型プロセスに積極的に関与していくことが必要である。
(a)復興努力に対する支援の継続
カンボジアが今後更なる発展を遂げて行くためには、持続的な経済成長を更に押し進めると共に、貧困層にも配慮した、教育・職業訓練、保健等基礎的経済社会分野の開発への取り組みが不可欠であることは言うまでもないが、これを円滑かつ効果的に進めていくためにも、依然深い傷跡を残す様々な負の遺産を払拭すべき復興努力への支援が、未だ同国の開発にとり必要不可欠である。
かかる観点から、我が国は、上述の対カンボジア援助の意義を十分踏まえつつ、内戦と政治的混乱の時期に被った被害からの「復興」を無償資金協力、技術協力を中心に引き続き支援していく必要がある。
(b)経済動向を踏まえた支援
経済成長は、同国の更なる発展に不可欠であるが、援助資源の投入に際しては、同国の経済動向、就中対外債務の現状等、同国の経済成長に応じた適切な支援が検討されるべきである。
カンボジアは最貧国(LDC)
※12に分類されているが、99年末の対外債務残高は約22.6億ドル、対GNP比は約73.4%、輸出の約194%であり重債務貧困国(HIPCs)
※13には含まれてはいない。また、同国の対外債務の殆どが譲許性が高く、債務返済比率(DSR)
※14もリスケジュール合意後は1~2%台と安定的な水準を保つことが予想されている。しかしながら、ルーブル建て債務を抱えており、未だロシアとの間でリスケジュールの合意に至っていないこと、経常収支の赤字を援助資金、外国投資で補填している構造となっていること等から、円借款案件については経済改革の進捗・経済動向等に留意しつつ、小規模インフラ案件から試行的に実施していく等の配慮が必要である。かかる観点から、無償資金協力、技術協力の有効な活用につき検討していく必要がある
(c)都市と農村のバランスある発展に向けた支援
更に、考慮されるべき重要な開発上の課題は、都市と地方のバランスの取れた開発の実現にある。これまでの我が国援助は、治安上の配慮もあり人口100万人を抱える首都プノンペン市周辺地域に集中してきた。他ドナーの支援等もありプノンペン市の基礎的な社会経済インフラは整備されつつあるが、その一方で、首都と地方との間で貧富の格差が拡大してきている。首都と地方のバランスある発展を推進する観点から、今後は貧困層が多い農村地帯への支援を強化することが重要である。特に農業・農村開発、BHN分野や地雷除去分野につき、各地域の治安状況を確認しつつ、地方展開を進めていく必要がある。これら地域への支援を進めることにより中央政府との一体感を醸成することが重要である。また、地方部で活動を行うNGOとの連携を強化していくことにも十分に配慮していく必要がある。
(d)ASEAN内での地域格差是正へ向けた支援
同国の開発に於いて重要なもう一つの要素は、ASEAN全体の開発の文脈の中で同国の開発をとらえる視点である。
ASEAN内でも、インドシナ地域の各国と他の諸国との経済格差は拡大傾向にある。従って、カンボジアの持続的な経済成長に向けた支援を行う際には地域格差是正の観点が重要であり、この観点からは、インドシナ全体に裨益する「メコン地域開発」及び「IT」普及のためのインフラ整備に十分配慮する必要があり、また市場経済化関連の法制度、金融システム、民間投資誘致のための諸環境の整備や人材育成に取り組む必要がある。
(4)重点分野・課題別援助方針
カンボジアの開発ニーズは広範かつ膨大である。それだけに、重点分野、優先順位を明確にし、かつカンボジアの伝統や価値観を尊重しつつ、効果的・効率的な援助を実施していく必要があり、上記今後5ヶ年の方向性を踏まえつつ、以下の4つの課題に対し重点的に援助を実施していくこととする。
その実施に際しては、持続的な経済成長及び貧困削減を最大のテーマに据え、社会的弱者対策等に十分配慮しつつ、長年の内戦で破壊された基礎的インフラの整備と疲弊した諸制度の再構築及び深刻な人材不足を回復するための人造り、すなわち、ハードとソフトの両面にバランスのとれた支援を実現するとの観点から、メリハリを付けた援助を展開していく必要がある。
(i)持続的な経済成長と安定した社会の実現、
(ii)社会的弱者支援、
(iii)グローバルイシューへの対応
(iv)ASEAN諸国との格差是正のための支援
(イ)持続的な経済成長と安定した社会の実現
同国の開発にとり最も必要なことは、持続的な経済成長にある。そのためには、諸改革が円滑に遂行され、グッドガバナンスが確保されていく中で、社会・経済インフラの整備が効果的に進められていく必要がある。更に、そうした援助の実施に於いては、同国の基幹産業である農業の振興と地域間格差の是正に留意することが必要であり、これは同時に貧困問題にも貢献するものである。また、こうした開発努力の過程で避けて通れない地雷問題にも十分な配慮が払われる必要がある。
(a)5つの改革支援とグッドガバナンス
カンボジア政府が自らの問題として取り組む、行政改革、財政改革、兵員削減、自然資源管理、社会セクターの5つの改革の推進及びグッド・ガヴァナンスの強化は、カンボジアが健全な経済開発を進め、国家として十全に機能していくために不可欠である。かかる観点から2000年1月にカンボジアを訪問した小渕総理(当時)は、フン・セン首相に対し、我が国がこれまで行ってきた専門家の派遣や研修員の受入等の技術協力を強化し、また諸改革の成功に向けた支援として、利用可能なスキームを総動員し、柔軟かつ迅速な協力を実施していく旨表明した。この方針の下、現在司法改革については、重要政策中枢支援(法整備支援)として民法、民訴法の起草を支援しており、これら法律の早期の起草完了及び法律の成立のための支援を行っていく。また、法曹界の人材育成についても様々な研修プログラムの活用を通して協力していく。
(b)社会・経済インフラ整備推進と経済振興のための環境整備
カンボジアが国家としての機能を高めるべく努力する一方で、国家を形成する社会経済インフラは依然として不足しており、我が国がこれまで積極的に支援してきた社会・経済インフラ整備のニーズは依然として高い。農業・農村振興、産業活性化や観光振興等の観点から、道路建設センター等の既存施設が活用されるよう配慮し、対象を地方各州へも広げ引き続き支援を行うとともに、全国的視点に立った運輸・交通分野における支援を検討する必要がある。また、メコン河流域では大規模な洪水が発生することがあり、道路等に被害が発生していることから、災害に強いインフラ整備への配慮も必要。一方、首都プノンペン市は、急激な経済活動の活発化や人口増加等により将来的に都市問題が深刻化し環境問題の発生が予想される中、都市行政機能強化につき協力を行っていく。さらに、電力や電気情報通信等インフラ整備率の面で首都と地方との格差が著しく、中長期的かつ全国的な視点に立ち、政策立案、技術・技能者育成のための技術協力、資金協力に取り組んでいく。
(c)農業・農村開発と農業生産性向上
カンボジア国民の84%が農村に居住しており、内乱による農業施設の破壊の結果、現在でも農村人口の約40%が貧困状態にあることから農業・農村開発分野での協力を推進し、支援の地方展開を図っていくことは貧困削減の観点から重要である。また、かかる中でも、農業はGDPの約40%を占めることから、農業・農村開発はカンボジア経済全体の底上げにつながるという意味でも重要である。具体的には、灌漑施設の整備、水管理システムの改善、水利組織の育成、農業生産性の向上、作物の多様化、農業関連インフラの整備、小規模金融、畜産・漁業振興への支援及び農民の組織化を含む農村開発行政強化への資金協力、技術協力に積極的に取り組んでいく。また、よりきめ細かい援助を実施するためには、農村地域で活動するNGOとの連携を図り、農村の基礎的な社会経済小規模インフラ整備(小規模灌漑、農道整備等)を草の根無償等の活用により支援していくことも重要である。
ただし、特に地方への援助の実施にあたっては、カンボジアの治安状況に充分留意する必要がある。
(d)対人地雷問題への包括的支援
カンボジアの復興、発展にとって地雷の存在は大きな阻害要因であり、上記社会・経済インフラ整備および、農業・農村開発を支援していく際にも、地雷問題は避けて通れない。
我が国は、カンボジアを地雷対策支援のモデル国として、同国のオーナーシップを尊重しつつ、これまで積極的に支援してきた。しかし、前述(<2>(2)(イ)(d))のCMAC自体の問題に加え、カンボジア政府部内での組織再編上の問題もあり、今後のカンボジアの対応を踏まえ、援助が適正に実施されるよう注視していく必要がある。
今後は、除去活動支援については、これまでのUNDP信託基金への資金拠出やバイでの機材供与等に加え、効率の良い除去技術の導入・開発による地雷除去活動のスピードアップについても支援していく。被災者支援については、医療体制の充実整備に加え、被災者がリハビリを経て社会復帰を果たすまでを一貫して支援していく協力のあり方を検討していく。また、地雷回避教育及びコミュニティー単位での取組も重要である。かかる地雷対策に関しては、地域に根ざして活動しているNGOとの連携、協力が必要であり、積極的に支援を行う。
(ロ)社会的弱者支援
上記の持続的な経済成長を支える重要な基礎は、BHN(教育、医療分野等)の充実である。本分野は、国民生活に直接裨益する分野であると同時に、経済成長が貧困層にもたらす負の側面に対処する社会のセーフティーネットとしても、極めて重要な協力分野である。
我が国は、これまで教育、保健・医療や上水道整備等のBHN分野を重点分野として協力を行ってきたが、本分野は人道的観点、貧困削減の観点から極めて重要であり援助需要もまだまだ高い。また、カンボジアの成長に伴い、いわゆる社会的弱者の増加も見込まれることから、社会のセーフティーネットを形成すべく、引き続き積極的に協力していく。教育分野については、絶対数が不足している学校建設支援を引き続き草の根無償等により継続するほか、教員の質の向上や教育行政能力の向上、経済振興を図る上で重要な理数科分野を対象に技術協力を行っていく。保健・医療分野では、日米間で連携を図りながら引き続き母子保健・医療技術の向上、感染症対策、特にHIV/AIDS政策、結核対策並びに両者の合併症を含む対策及びマラリア・寄生虫対策への協力に積極的に取り組んでいく。また、都市部を含め医療従事者の絶対数が不足しているため、技術協力を重点的に実施すると共に、地方における初等医療サービスの充実の観点から、NGO等と連携しつつ取り組んでいく。
(ハ)グローバルイシューへの対応
更に、カンボジアは、同国一国のみならず、近隣諸国にも影響を与え得る課題や、同国だけでは解決の困難な課題(グローバル・イシュー)を抱えている。すなわち、森林資源等に係わる環境問題と麻薬問題である。かかる諸問題に対しては、地球的規模の課題として、その解決に向けた支援に取り組む必要がある。
(a)環境保全
カンボジアが持続的な経済成長の達成を目指していく過程で、現在生じているような同国の財産である豊かな自然環境の破壊の進行は避けるべきであり、我が国として持続可能な開発という視点から、環境保全に係る支援を実施する。具体的には、現在カンボジア政府が取り組んでいる森林犯罪の監視モニタリングプロジェクト等を積極的に支援する。また、荒廃した森林資源の再生、持続可能な森林経営の観点から、造林、苗畑、コミュニティ・フォレストリー等の観点から人材の育成を支援する林業訓練プロジェクト、森林計画の策定及び造林技術等を積極的に支援していく。また、漁業資源等についてもトンレサップ湖における漁業資源の保全、適正管理が緊急的課題であり、治安状況に留意しつつ、湖の周辺環境を踏まえたマスタープランの策定を推進する。更に、専門家の派遣により漁業資源の現状を把握し、東南アジア漁業開発センター(SEAFDEC)との連携も配慮しつつ、その保全、適正は資源管理及び生物多様性の保護のための協力を検討していく。さらに、中長期的な視点から環境管理の基盤整備や適正な環境管理技術の移転への協力を検討していく。
(b)薬物対策
カンボジアは、麻薬生産の黄金の三角地帯南部に位置し、法規制も不十分であることから、同国内の薬物の密売や外国人観光客による密輸・消費が行われているとの情報もある。このような状況を放置すると域内諸国での薬物対策努力の効果を減退させるとともに、我が国にも深刻な影響を及ぼす恐れがある。我が国は、かかる薬物問題の重要性を認識し、豪州と共にミニダブリン会合議長国を務めており、可能な協力を行っていく。
(ニ)ASEAN諸国との格差是正のための支援
同国の開発上のもう一つの重要な視点は、ASEAN域内の格差是正である。同国が位置するインドシナ地域の各国と、他の諸国との経済格差は拡大傾向にあり、既にこの格差是正はASEAN自身の開発課題となっている。我が国としてもそうしたASEAN全体の努力を支援すべく、積極的に協力を進めていくことが、地域の安定と更なる発展に大きく寄与することとなる。
かかる支援の実施に際しては、、インドシナ全体に裨益する「メコン河流域開発」および「IT」普及のためのインフラ整備等にも十分配慮する必要がある。
(a)メコン地域開発
メコン地域開発は、カンボジアの経済開発上重要な課題であると同時に、ASEAN諸国間の経済格差を是正し、ひいてはASEAN統合の強化を実現するとの観点からも重要である。具体的には、「第2東西回廊」の建設を始めとして、ハード(インフラ整備等)及びソフト(開発調査、技術協力等)の両面で積極的に支援を行っていく方針であり、また、民間投資の促進に資するような法・制度整備等の支援を行っていく。
(b)IT支援
ITは国際的な情報・知識格差を解消し、発展途上国に大きな機会を提供し得る。カンボジアにおいては、情報通信インフラの整備等を中心に、長期的な開発戦略の作成、人材育成等、総合的な協力を検討していく。但し、全体的な経済開発とのバランスを考慮していく必要がある。
(5)援助実施上の留意点
教育、保健、経済・社会活動への参加において、様々な面で男女格差が存在している。経済発展、貧困削減に向けカンボジア国民が一丸となって取り組むためにも女性の開発への参加に配慮し、女性が開発の利益を公平に受け、開発の担い手として参加し、十分な能力を発揮できるようにする必要がある。このため、大規模なプロジェクトから草の根レベルのプロジェクトにいたる援助の各段階において、両性間の社会的・文化的格差の是正の観点からジェンダー平等の視点を一層取り入れ、男女の格差是正に取り組む。
(b)各国、国際機関との連携
多くの援助国・国際機関(ドナー社会)が開発に関与するカンボジアでは、ドナー社会とカンボジア政府が年に1回のCG会合と2回のモニタリング会合及び、これら会議のためのドナー間の意思統一を図るサブワーキンググル-プ会合等が頻繁に開催されている。我が国も引き続きこれらの会議に積極的に参画し、我が国の政策意図を反映していくとともに、相互補完性があるなど援助効果の観点から有意義である他ドナーとの連携については積極的に取り組む。特に、日米コモン・アジェンダ
※16に基づく保健・医療分野での日米協調を引き続き重視していく。
但し、援助にあたっては、カンボジアの自助努力を重視し、国内的合意形成や能力開発を促進していくことが重要である。
(c)各経協スキームの連携
重点分野・課題別援助方針を上記で示したが、全ての分野に際限なく資金を投じることは不可能であり、メリハリを付けた援助を重点的に実施すべきことは言うまでもないが、限られた援助リソースをより有効に活用するためには、有償資金協力、無償資金協力(含む草の根無償)、技術協力の各スキームの有機的連携が必要となる。
例えば、資金協力により供与された施設、資材は、これを効果的に活用し得る人材と管理体制が確保されて初めて、生きた援助となる。また、経済インフラが有効に機能するためには、マクロ経済的な周到な事前の調査と共に、市場経済化等政策面での制度・人材の整備が必要となる。更には、経済インフラや保健・教育施設等に係る援助が、真に貧困層に裨益していくためには、地域コミュニティーの育成等ソフト面での手当にも十分な配慮が払われる必要がある。
(d)NGOとの連携
我が国が援助を効果的に進めるにあたっては、案件の形成、実施、モニタリング等において当該地域で豊富な経験を有するNGOとの連携を強化していくことが有用かつ有効である。また、援助の実施に際しても、NGOと意見交換等を行うとともに、我が国のODAスキームとの連携を積極的に図っていくことで、よりきめ細かい援助並びに地域社会に根付いた援助の実施に配慮する必要がある。