ODAとは? 援助政策

バングラデシュ国別援助計画

<1>最近の政治・経済・社会情勢

(1)政治情勢

 1975年のクーデター以降、長期にわたり軍事政権が継続したが、民主化の進展により軍事政権が崩壊し、91年に行われた初の民主的総選挙によりジア政権が誕生して以降、民主的手続による政権交代は一応定着した。しかしながら、国会運営、公正な選挙の実施等民主主義の実際の運用面では問題が残っている。
 91年の民主化以降、現与党のアワミ連盟と野党第一党のバングラデシュ民族主義党の二大政党は、過去の確執等を背景に政権の座をめぐり激しく対立しており、ゼネスト等の反政府運動により経済活動が麻痺する等、市民生活のみならず国家経済にも影響が及んでいる。これまでのところ、与野党対立が収束する気配は見られないが、経済発展を達成するためにも与野党間の対話による内政の安定が極めて重要である。

(2)経済情勢

 バングラデシュは近年一定の経済成長は遂げているものの、最大の課題である貧困緩和を実現するに十分な経済発展を遂げるには至っていない。
 91年3月に成立した前ジア政権下では、世銀・IMFの指導の下、経済構造改革に取り組んだ結果、財政赤字の削減(対GDP比90/91年度7.2%→95/96年度5.7%)、国際収支の改善、インフレ抑制等、マクロ経済の改善において成果を挙げたが、GDP成長率は伸び悩み経済は低迷した。
 96年6月に誕生した現ハシナ政権下では、工業・建設及びサービス部門の好調に支えられて、GDP成長率が漸増に転じ、95/96年度は5.3%、96/97年度は5.9%、97/98年度は5.6%を達成した。しかし、98年の大洪水の為、98/99年度は5.2%に落ち込むものと推定される。
 現政権は、経済自由化の一層の促進、民間活力の有効活用、外国投資の誘致促進及び農村開発等を柱とする経済施策を掲げ、一定の経済成長を遂げている。
 貧困緩和を実現するには更なる高成長率の実現が必要だが(世銀の試算によれば、貧困克服には年率7%台の経済成長を持続的に達成することが不可欠)、そのためには国営企業の民営化、銀行部門の抱える不良債権の処理等、適切なマクロ経済運営及び経済・金融改革の実施が鍵となる。また、貧困緩和には、過剰労働人口を吸収する農業関連産業(アグロビジネス)等の有望産業の育成が急務である。

(3)社会情勢

 バングラデシュは、人口過多、教育水準の低さ、大きいジェンダー格差、生活環境の悪化等多岐にわたる問題に直面しており、これら諸問題が貧困の原因、結果を形成するという悪循環に陥っている。
 人口に関しては、後発開発途上国の中で、世界最大の人口を擁し、人口増加率は、1.5%(90~97年平均)まで低下したものの、依然として人口増加の絶対数は大きく、独立時約7千万人であった人口は、現在約1億2千万人、2020年には2億1千万人に達すると見られている。UNICEFの報告によれば5歳未満の乳幼児死亡率は約10%(1997年)に留まり、男性の識字率50%に対して女性27%と、男女間の格差が大きい。これは、宗教的、慣習的価値観に基づく男女役割意識を反映しており、教育に限らず、保健、雇用等あらゆるサービス、機会に対する女性のアクセスは男性に比べて制限されている。
 農村部での貧困は、農業以外の就業機会が限られているため、急速な都市への人口移動を促し、ダッカやチッタゴンといった大都市に人口が集中している。その結果、大都市には、衛生、治安、環境の面で深刻な問題が生じている。
 環境に関しては、洪水、サイクロン等の自然災害に加え、大都市の大気汚染、広範囲にわたる地下水の砒素汚染等基本的ニーズに関わる問題がある。

<2>開発上の課題

(1)バングラデシュの開発計画*1

 バングラデシュの現行第5次五ヶ年計画(97/98年度~2001/02年度)の概要及び「DAC新開発戦略」*2の目標との関連は次のとおりである。

(イ)第5次五ヶ年計画の概要

 (a)開発目標
 貧困緩和を最大の開発目標に据えて、年平均7%台の経済成長の達成を目指している。開発の具体的な重点分野として以下があげられている。
 1)貧困緩和、2)雇用促進、3)穀物生産拡大、4)人的資源開発、5)インフラ整備、6)人口増加率抑制、7)科学技術向上、8)女性・児童教育の普及
 (b)投資総額
 年率7%台の経済成長を達成するために必要とされる投資総額は1兆9600億タカ(約400億ドル)であり、そのうち44%を公共投資、56%を民間投資にて調達することが想定されている。特に、政府開発計画予算に占める外国資金の比率を、初年度の51%から最終年度には30%程度に削減する(5年間の平均で39%)ことを目指している。
 (c)開発戦略の基本的な構図
民間投資の促進を基軸として、農業・農村開発、工業及び運輸交通セクターへの投資に力点を置き、工業及びエネルギー・セクターが経済を牽引することを想定している。工業については、繊維業・皮革製品等の輸出産業に重点を置く。このようにして、民間主導の経済開発を図りつつ、同時に社会開発の観点からは、教育、保健衛生、給水、人口家族計画等に重点を置く方針である。

(ロ)第5次五ヶ年計画と「DAC新開発戦略」の目標との関連

 「DAC新開発戦略」に掲げられている諸目標(貧困層の削減、初等教育の普及、乳児・妊産婦死亡率の削減等)につき、第5次5ヶ年計画においても、DAC新開発戦略」の方向性に沿った分野への配慮は見られ、具体的な目標値として明確に反映されているものもあるが、達成困難なものも多い。

(2)開発上の主要課題

(イ)貧困緩和、人口増加の抑制

 80年代においては、年率4%台のGDP成長にとどまったことに加えて、農村部と都市部の所得格差が拡大したため、経済成長が貧困層の削減に必ずしも結びつかなかった。90年代に入り貧困層の比率は幾分低下したものの、国民の半数以上は依然として貧困層に属している。こうした経緯に鑑みれば、貧困緩和のためにはGDP成長率を高めるのみならず、所得格差の拡大を抑制することが必要である。さらに貧困層の生活改善に資する教育、保健・医療等の社会的分野の開発努力や貧困軽減の足かせとなっている人口増加率を一層抑制するために包括的な取組みが重要である。

(ロ)農業・農村開発

 農業部門のGDPに占める比率は年々低下傾向にあるが、依然として雇用の約60%、GDPの約30%を占め、最重要産業としての地位を保持している。今後も農業が引き続き重要な産業であることを念頭に、耕地の保全と農業生産性の向上により、5ヶ年計画上の目標でもある食糧自給の達成に向けて取り組むとともに、農業関連分野における新たな所得創出の機会を確保する等農業・農村開発を推進することが必要である。

(ハ)工業化の推進

 農業に代わって新たな経済の牽引力となるべき工業は依然としてGDPの10%程度を占めるに過ぎず、工業の迅速な成長を確保することが今後の経済政策にとって重要である。国内市場は貧困により購買力が制約されていることから、工業化の推進には国際競争力を有する輸出産品の開発育成が極めて重要である。総輸出の過半を占め現在の主要輸出品となっている既製服・ニット製品については、付加価値が小さい上にMFA(繊維製品の国際貿易に関する取り決め)上の優遇措置が2005年に失効し比較優位を失うことが予想されることから、新たな輸出産品の創出が求められている。

(ニ)自然災害の克服

 98年には国土の約6割が冠水するなど大規模な洪水が頻発しているほか、例年サイクロンによる高波や風水害によりかなりの被害がみられ、自然災害の克服は開発上の大きな課題である。
 自然災害はバングラデシュ一国で対処するのには大規模過ぎることから、バングラデシュの自助努力に加えて国際社会による支援が強く望まれる課題であり、また、洪水対策には河川流域を共有する隣国との協調が不可欠である。

(ホ)環境の改善

 バングラデシュの広範囲に渡り地下水が砒素に汚染され、バングラデシュ政府の推定では約2千万人が被害を被っており、被害地域は拡大傾向にある。また、急激な都市化の為、大都市での生活環境は悪化し、特に自動車の排気ガスによる大気汚染は都市住民の健康に悪影響を与えている。これらの環境問題は大規模なものであり、バングラデシュ政府、他の援助国・機関との緊密な連携のもとに早急に対処する必要がある。

(3)主要国際機関との関係、他の援助国、NGOの取組み

(イ)国際機関との関係

 国際機関としては、世界銀行(IDA)、アジア開発銀行(ADB)が借款等を通じて主要援助機関の地位を占めている。世界銀行は、インフラ整備、農業分野、洪水対策分野を中心に、アジア開発銀行は、インフラ分野、人的資源開発(教育、保健)等を中心に援助を実施している。その他の国際機関としては国連児童基金(UNICEF)が子供の健康を、また、世界食糧計画(WFP)が最貧困層及び貧困地域に対する食料援助をそれぞれ中心とする無償援助を実施している。

(ロ)他の援助国の取組み

 97年の主要援助国の国別援助実績は、日本、英国、オランダ、カナダ、ドイツの順であり、我が国は近年バングラデシュへの最大の援助国となっている。加えて、97年の我が国の援助実績は二位の英国の2倍程度に達しているように、我が国はバングラデシュへの海外からの援助の中でかなりの割合を占めている。

(ハ)NGOの動向

 バングラデシュでは、社会分野を中心にNGOが行政サービスの末端の機能を実質的に果たしている。同国内で活動するNGOは約2万団体といわれており、首相府NGO局登録済みのNGOのうち(海外の援助を受ける為の要件)、国内NGO約1300、国際NGOは約150となっており(99年現在)、NGOによる援助実施額は2~3億ドルにも達していると見られている。なお、米国、英国の援助は、NGOを通じたものが中心であり、NGOを通じた援助の比率はそれぞれ98%、40%程度となっている。

<3>我が国の対バングラデシュ援助政策

(1)対バングラデシュ援助の意義

(イ)我が国は、バングラデシュの独立を西側諸国に先駆けて72年に承認して以降、一貫して友好関係を維持してきた。両国間には大きな政治的懸案はなく、経済・技術協力を中心に極めて良好な関係を構築しており、親日的な対日感情と相まって我が国への協力期待感には極めて強いものがある。

(ロ)また、バングラデシュは国連、非同盟グループ、イスラム諸国会議等を通じて第三世界の穏健派として活発な外交を展開しているほか、平和維持活動にも積極的に参加している。特に2000年からは国連安保理非常任理事国(2年間)、2001年には非同盟諸国会議議長となるなど、近年、国際場裡における存在感を高めている。こうした活動を背景にバングラデシュはLLDC*3(後発開発途上国)の代弁者を自認していることから、同国との関係強化は我が国の途上国外交全般にも資するものと考えられる。

(ハ)さらに、SAARC(南アジア地域協力連合)の提唱国として南アジア諸国の協力関係強化に尽力しており、バングラデシュへの援助は同国の民主化・安定化に貢献し、ひいては南アジア地域全体の政治的安定にも大いに資することとなる。

(ニ)こうした重要性を有するバングラデシュは、貧困緩和を優先課題とする世界最大のLLDCであり、同国の大きな援助需要を踏まえて、同国の債務負担能力に十分留意しつつ、援助を実施していく必要がある。

(2)ODA大綱原則*4との関係

 75年の大統領暗殺以降、事実上の軍事政権が続いていたが、91年の総選挙以来、民主的手続きによる政権交代が定着するとともに、通信・電力部門の民間への開放など市場経済化が進んでおり、我が国ODA大綱原則との関連では総じて望ましい方向に向かっているといえる。ただし、軍事費支出、基本的人権及び自由の保障状況については、ODA大綱原則との関連で今後注視していく必要がある。

(3)我が国援助の目指すべき方向

(イ)我が国のこれまでの援助

 我が国は、90年4月に派遣した経済協力総合調査団がバングラデシュ側と合意した重点分野(投資促進・輸出振興のための基盤整備、農業・農村開発と農業生産性向上、洪水対策、人的資源開発、基礎生活分野)を中心に積極的に援助を展開し、バングラデシュ側より評価を受けてきた。しかし、援助対象分野が多岐にわたるため、結果として総花的な援助となったことも否めない。

(ロ)貧困緩和が最大の課題

 貧困緩和は、バングラデシュの最大の開発目標として明確に位置づけられている。貧困緩和はDAC新開発戦略にも適うものであることから、我が国としても、この最重要課題の克服に向け重点的に援助する姿勢を明確にしていく。

(ハ)今後5年間の援助の方向性

 バングラデシュの政治的、外交的重要性や最大の援助国としての我が国に対する期待感の大きさを踏まえるとともに、我が国の厳しい経済・財政状況等を総合的に勘案し、今後5年間の対バングラデシュ援助の方向性を概ね以下の通りとする。

 (a)我が国の対バングラデシュ援助は近年かなりの額に上っていることから、今後はより一層、質に重点を置く援助を目指す。なお、援助実施に際しては、バングラデシュが外国援助に過度に依存する体質に陥らないよう自助努力を促す援助を行うよう留意するとともに、1)同国の改革努力、2)援助受入能力、3)同国の資金需要・債務負担能力等を併せて考慮していく必要がある。
 (b)バングラデシュがLLDCであることに鑑み、今後、無償資金協力及び技術協力を基本として援助を実施していく。なお、98年度の無償資金協力は200億円程度であるが、うち債務救済無償資金協力*5が約160億円を占めており、今後5年間、債務救済無償資金協力も同程度で推移することが見込まれることから、債務救済無償資金及びその見返り資金*6を一層効果的に活用して協力を実施していく。
 (c)円借款については、経済インフラ(電力、運輸セクター等)、農村地域のインフラ整備などを中心とした協力に対するバングラデシュ側の必要性が高いことから、債務負担能力に十分留意した上、経済効果が高く、かつ、適正な規模のインフラ案件等につき環境配慮に留意しながらケース・バイ・ケースで対応する。
 (d)アドバイザー型専門家*7や資金協力連携専門家*8の派遣等により、技術協力と資金協力との連携を引き続き強化していくとともに、セクターワイドな援助方策の導入を検討していく。
 (e)貧困層に対して直接支援しているNGOに対して、草の根無償資金協力等をさらに強化することを検討する。

(4)重点分野・課題別援助方針

 開発上の最大の課題である貧困緩和を実現するため、1)農業・農村開発と農業生産性向上、2)社会分野(基礎生活、保健医療等)の改善、3)投資促進・輸出振興のための基盤整備、4)災害対策を我が国援助実施上の戦略的重点分野と位置づける。なお、こうした重点分野への援助実施に際しては、共通する課題である人材育成、制度面の強化(Institution Building)及び環境の側面についてもそれぞれ配慮していく。

(イ)農業・農村開発と農業生産性向上

 我が国は、農村部と都市部との地域間格差是正や貧困緩和を目的としてインフラ整備を中心に援助を実施してきたが、増大する人口を前に依然として貧困は解消されておらず援助需要も大きい。
 今後は、農業・農村開発のためのインフラ整備、農業技術の普及、農業研究等による農業生産性向上と、耕地の保全により、食糧自給率の改善を図るとともに、農村における貧困層(特に土地なし農民等)の雇用創出・所得向上を目指す。
 小規模金融(マイクロ・クレジット)*9を活用した援助は、貧困層の生活改善に大きな効果をあげてきている。今後は、マイクロ・クレジットのより効果的な実施を進めると同時に、農村における生産活動の活性化と所得の向上、ひいては農村経済全体の成長を目指す。
 また、我が国や現地のNGOとの連携により、住民の社会開発への参加を促し、経済・社会インフラ整備(小規模灌漑、農道整備等)を積極的に支援していく。

(ロ)社会分野(基礎生活、保健医療等)の改善

 我が国は、上水道施設、保健・医療分野の施設・機材の供与のための無償資金協力や青年海外協力隊による貧困層を対象にした基礎医療分野への協力をこれまでも実施してきたが、バングラデシュの厳しい福祉状況に鑑み、本分野への協力をより一層強化していく必要がある。
 具体的には、他の援助国やNGOと連携して、1)基礎的な衛生・医療事情の改善や子供の健康、母子保健・人口家族計画を含むリプロダクティブ・ヘルス*102)教育事情の改善として初等教育、特に女子教育などの分野において、DAC新開発戦略の目標達成に向けて支援していく。

 (a)保健・医療に関しては、バングラデシュ政府も15年の長期計画と5ヶ年計画を策定するなど積極的な姿勢をみせているが、5歳未満の乳幼児死亡率は109(対千人、1999年、ユニセフ)である等保健状況は極めて悪く、また医療施設及び医療従事者が都市部に集中しており、医療サービスが受けられない状況にあることから、途上国の真のニーズに見合うような医療施設の整備、医薬品等機材の供与、保健衛生分野の人材育成などに取り組んでいく。また、98年より実施されている第5次保健・人口プログラムは、DAC新開発戦略でも推奨されているリプロダクティブ・ヘルスの考え方を基に取り組まれており、同戦略を推進してきた我が国としても望ましい方向性であることから、これを積極的に支援していく。
 (b)教育に関しては、初等教育の改善に力を入れていく。重点課題とされている理数科教育の拡充を重視し、教育行政、カリキュラム開発・教員養成における質の向上を目指す。あわせて、小学校の建設等についても引き続き協力を行い、総合的な基礎教育向上を支援していく。
 また、教育分野における我が国援助人材を育成する観点から、特に本分野で経験豊富なUNICEFと連携して協力を実施し、人的交流を含めこの分野における我が国の人材開発を進めていくことも必要である。
 (c)水問題については、安全な水の供給を中心に取り組むことが重要である。特に、南西部地域については、バングラデシュ一国のみならず地域協力によりガンジス河等の国際河川の水資源開発を長期的に推進する観点からも検討することが必要である。また、バングラデシュの広範囲で深刻化している地下水への砒素流出問題及び年々悪化しつつある大都市での大気汚染、交通渋滞については、国際機関、他の援助国、NGOとも連携しつつ対応を検討する。
(ハ)投資促進・輸出振興のための基盤整備

 貧困緩和には、経済成長が必要であり、その推進役となる投資促進・輸出振興を図るためには経済インフラの整備(電力、運輸、通信等)が不可欠である。これまでの援助の結果、近年一定の工業化の進展が見られることは評価すべきであるがまだ緒についたばかりであり、引き続き経済成長が順調に軌道に乗るよう同分野への支援を検討していく。
 特に、ダッカ~チッタゴン、ダッカ~クルナ(モングラ)を結ぶ地域を成長センターとして育成するため同地域におけるインフラ(港湾、空港、道路、通信、天然ガス、電力等)への重点的な支援が必要である。
 さらに、今後は国際的な競争力を高める観点より、育成すべき産業セクターを特定し、これらのセクターを支援するといった視点も加えていく。
 また、円借款によるツーステップローン*11を検討していくためには信頼性のある仲介金融機関が育つことが必要であり、長期継続的な専門家派遣と資金協力を連携させ、制度金融機関の育成を支援する可能性を検討する。

(ニ)災害対策

 洪水対策としては国際協調の下で洪水行動計画(Flood Action Plan)が推進中であり、バングラデシュ政府はこれに基づく調査協力の結果を受けて総合的かつ長期的な「国家水管理計画(NWMP)」*12を策定中であることから、この計画に沿った協力を検討していく。
 また、サイクロン対策については、多目的サイクロン・シェルター*13の建設、気象観測や早期警戒システム等について協力を実施しており、これらの成果を踏まえて情報通信網の一層の利活用なども含めさらに効果的・効率的な援助を促進する。

(5)援助実施上の留意点

(イ)援助受入能力、特にプロジェクト実施能力の強化

 バングラデシュ政府の援助受入体制は必ずしも十分とは言えず、特にプロジェクトの実施能力については、実施機関の維持・管理体制の強化、手続きの簡素化、プロジェクトのモニタリングにおける窓口機関の責任の明確化、強化等が課題である。今後とも援助実施に際しては、バングラデシュ側の実施能力を慎重に見極めていくことが肝要であるとともに、専門家派遣等を通じて能力向上を図ることが必要である。

(ロ)援助国、国際機関との連携

 バングラデシュには、多くの援助国・国際機関が関与し、20を越える分野毎の援助協調会合が存在している。我が国も引き続きこれら議論に積極的に参画し、援助協調により相互補完的に援助を実施していく。特に、人口・保健分野におけるUSAIDとのコモン・アジェンダ協議を引き続き重視していく。

(ハ)NGOとの連携

 バングラデシュの援助依存体質は改善されつつあるが、如何に自立を促しながら援助を実施していくかが重要である。LLDCの抱える諸問題を解決するには、援助国・機関、政府のみならずNGOを含めた住民の協力が不可欠である。かかる観点に立ち、政府のみならず草の根レベルでも自立に向けた住民の組織化への努力を支持していく必要がある。このような組織化を図るに際しては、活発な活動を行っている我が国をはじめとする各国のNGO及び現地NGOと積極的に連携を図っていく必要がある。


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