ODAとは? 援助政策

バングラデシュ国別援助計画/【注釈】

<2>開発上の課題

(1)バングラデシュの開発計画

1:開発面で持つバングラデシュの特殊性

 バングラデシュはLLDCの中で最大の人口を擁する国であり、天然ガス(埋蔵量については確定的な情報無し)を除き天然資源もなく、独立以降、主として外国よりの援助を軸に国家建設に努力してきた。

2:「DAC新開発戦略」

 1996年5月、経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会(DAC)において、21世紀の援助の目標を定めるものとして「新開発戦略(21世紀に向けて:開発協力を通じた貢献)」と題する文書が採択された。この開発戦略は、地球中の全ての人々の生活向上を目指し、具体的な目標と達成すべき期限を設定している。具体的には、(1)2015年までの貧困人口割合の半減、(2)2015年までの初等教育の普及、(3)2005年までの初等・中等教育における男女格差の解消、(4)2015年までの乳幼児死亡率の1/3までの削減、(5)妊産婦死亡率の1/4までの削減、(6)性と生殖に関する健康(リプロダクティブ・ヘルス)に係る保健・医療サービスの普及、(7)2005年までの環境保全のための国家戦略の策定、(8)2015年までの環境資源の減少傾向の増加傾向への逆転という目標を掲げている。この目標達成に向け、先進国及び開発途上国が共同の取り組みを進めていくことが不可欠として、グローバル・パートナーシップの重要性を強調している。

<3>我が国の対バングラデシュ援助政策

(1)対バングラデシュ援助の意義

3:LLDC(後発開発途上国)

 開発途上国の中でも特に開発の遅れた国を指し、国連の開発計画委員会が一人当たりGDP(99年現在一人当たりGDPが899ドル以下)、人的資源開発の程度(平均余命等)、経済構造の脆弱性(GDPに占める製造業の割合等)を基準として決定する。現在、全世界で48ヶ国(アフリカ33ヶ国、アジア8ヶ国、大洋州5ヶ国、その他2ヶ国)がLLDCに指定されている。

(2)ODA大綱原則との関係

4:ODA大綱(政府開発援助大綱)

 我が国のODAの理念と原則を明確にするために、援助の実績、経験、教訓を踏まえ、日本の援助方針を集大成したODAの最重要の基本文書であり、平成4年6月30日に閣議決定された。内容は、基本理念、原則、重点事項、政府開発援助の効果的実施のための方策、内外の理解と支持を得る方策及び実施体制の6部から構成される。「基本理念」において、(1)人道的見地、(2)相互依存関係の認識、(3)自助努力、(4)環境保全の4点を掲げている。また「原則」において、「相手国の要請、経済社会状況、二国間関係等を総合的に判断」しつつ、4項目への配慮、すなわち(1)環境と開発の両立、(2)軍事的用途及び国際紛争助長への使用回避、(3)軍事支出、大量破壊兵器・ミサイルの開発・製造、武器の輸出入等の同行に十分注意を払うこと。(4)民主化の促進、市場志向型経済導入の努力並びに基本的人権及び自由の保障状況に十分注意を払うこと、を定めている。

(3)我が国援助の目指すべき方向

5:債務救済無償資金協力

 1978年に開催された国連貿易開発会議(UNCTAD)第9回特別貿易開発理事会(TDB)の決議に基づき、貧困開発途上国の債務救済を目的として実施している。円借款取極を締結したLLDC及び石油危機で最も深刻な影響を受けた国(MSAC)が対象となる。このうちLLDCの場合、円借款(87年度以前締結分)債務の返済が行われた際には、返済された元利合計額相当額の無償資金を供与する。我が国は、1978年度~1998年度約3,400億円の債務救済無償資金協力を行った。

6:債務救済無償の見返り資金

 債務救済無償資金協力において義務づけられた積立金制度。我が国から供与された物資の売却代金等を被援助国政府が中央銀行などの指定口座に供与額の1/4に相当する額を見返り資金として積み立てる制度。見返り資金は日本政府との協議を通じて被援助国の経済社会開発のために活用される。

7:アドバイザー型専門家

 相手国政府の中央省庁等に派遣され、政策形成などに係る助言等を行う専門家。

8:資金協力連携専門家

 我が国の無償・有償資金協力案件の円滑な実施の促進、フォローアップ等のために派遣される専門家。

(4)重点分野・課題別援助方針

9:マイクロ・クレジット

 担保手段を持たないために民間銀行等からは融資対象として不適確と見なされる貧困層(特に女性)に対し、生産手段の確保・拡充、所得向上のために少額・無担保の信用を供与するものであり、貧困削減の一手段として近年その必要性・重要性が国際的に認められている。

10:リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)

 人口・家族計画問題を基礎保健医療、エイズ対策、初等教育、女性の権利などとの関連で捉える包括的な概念で、その定義は国際人口開発会議(ICPD)「行動計画」第7章2項によれば、「人間の生殖システム、その機能と活動過程の全ての側面において、単に疾病・傷害がないというばかりでなく、身体的、精神的、社会的に完全に良好な状態にあることを指す」となっている。

11:ツーステップローン

 借款の供与形態の一つで、第1段階として資金を開発途上国の開発金融機関に対して直接、あるいは当該国政府を通して供与し、第2段階として当該開発金融機関がさらに途上国内の中小企業や農業部門に貸し出すという方式。

12:国家水管理計画(National Water Management Plan

 バングラデシュ政府は、国家的な観点から全土の水管理計画を策定中であり、2001年度末の完成を目指している。

13:多目的サイクロン・シェルター

 ベンガル湾沿岸地帯はサイクロンによる度重なる高潮災害に見舞われ、多くの人命、家畜、財産に被害が生じていることから、平常時は小中学校等として利用し、サイクロン襲来時には避難所として機能する建築物を建設。高潮の波高を考慮し、高床式(ピロティー式)となっている場合が多い。

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