ODAとは? ODA評価

第9回ODA評価ワークショップ
議長サマリー(仮訳)

議長:牟田博光・東京工業大学副学長

 2010年2月18日,日本において,日本外務省と国際協力機構(JICA)の共催により,第9回ODA評価ワークショップを開催した。

 本ワークショップは,議長を務める牟田東京工業大学副学長の開会挨拶により開始し,大脇外務省国際協力局審議官並びに黒田国際協力機構理事より,参加者全員に対して歓迎の辞が述べられた。

 議題1から議題3までは,和田義郎・政策研究大学院大学(GRIPS)教授が,モデレーターとして,議論の活性化を図った。

 議題1では,プロジェクトレベルとプログラムレベルの評価の事例研究を中心に,原口孝子・株式会社国際開発アソシエイツ・シニアコンサルタントが,「日本のODA事業のプロジェクトレベル評価のケーススタディ」について,また,カオ・マン・クオン・ベトナム計画投資省海外経済関係局次長が,「合同評価の事例とベトナムのモニタリング・評価の取組」について発表した。発表の後,参加者は,(1)インフラや能力開発プロジェクトの評価から期待される利益とその利用,(2)期待される利益に見合う適切な評価費用(経費と時間),(3)ODA評価のための方法,手段,指標や計画,(4)評価者:内部評価と外部評価,(5)合同評価の長所と短所,について議論を行った。

 議題2では,「PDCAサイクルにおける評価の役割」及び「評価結果のフィードバック」について,2つのプレゼンテーションが行われた。最初の発表は,藤澤外務省国際協力局評価・広報室上席専門官による「外務省のODA評価(政策レベル)とフィードバック体制」であり,次に,マヘシュ・バンスコタ・カトマンズ大学学部長による「参加国による政策レベル評価:ネパールの報告」の発表があった。その後,課題や成功例を明らかにするために,(1)ドナーやパートナー国政府の評価結果や提言のPDCAサイクルへの反映,(2)PDCAサイクルを実施するために必要な能力,(3)評価結果に対する政府のフォローアップとその終了基準,を中心に議論が行われた。議論は,各国の評価の質,評価体制や政策策定状況など,評価を実施する際の問題点等が中心となった。

 議題3では,ODA効果の向上とパートナー国のオーナーシップに対する意識向上のための方法を明らかにし,ODA評価体制の現状・改善とその成果を検証した。ローランド・トゥンパラン・フィリピン国家経済開発庁次官が,「開発評価の改善努力:フィリピンの事例」についての発表を行った後,ズフラン・カシム・パキスタン経済統計省経済課アシスタント・チーフにより,「パキスタンにおけるODA評価体制の改善努力とその成果」について,援助協調の観点から発表を行った。参加者は,(1)各国のODAモニタリング・評価体制の進展に関する評価,(2)既存のモニタリング・評価体制内での,セクター開発成果を強化するための効果的な方法,(3)各国のモニタリング・評価体制の今後の見通し,について議論を行った。

 プレゼンテーションの後,ほぼ半数の参加者が,上記3つの論点について,各国の事例や経験などを基に意見を述べた。プロジェクトレベル及びプログラムレベルの評価事例,例えば,PDCAサイクルの構築,合同評価や第三者による外部評価などを通したモニタリング機能の強化などについての議論を行った。参加国の評価体制にはある程度の進捗が見られた。また,開発評価ネットワーク(EVALUNET)より,一部の国についての「パリ宣言」の枠組みの評価・中間報告書を閲覧できるとの情報を共有した。

 議題4は,参加ドナーと国際機関による以下の基調講演であった。
(1)「効果的な評価におけるシンガポールの経験」 デニス・チェン シンガポール外務省技術協力局長補
(2)「パリ宣言の評価」 ニールス A. デーベルシュタイン パリ宣言評価事務局長
(3)「CLEAR:評価・成果研修センター」 ハンス マーティン・ボーマー世界銀行独立評価グループ・マネージャー

 基調講演の後,廣野良吉成蹊大学名誉教授から,アジア太平洋評価学会(APEA)の設立状況について報告があった。

 このように,今年のワークショップでは,第1セッションで,評価の各プロセスの情報を共有するために,プロジェクトレベルとプログラムレベルの事例を検証した。第2セッションでは,日本の政策レベル評価とフィードバックシステム及びパートナー国の政策評価を概観することによって,どのように評価結果を政策に反映させるかについて探った。第3セッションでは,パートナー国が自国の評価メカニズムを改善する際に直面する問題と成果について学んだ。参加者は,双方向的な議論により,アジア太平洋地域における幅広い事例や見識を共有した。この経験は,評価能力向上のためだけでなく,効果的で説明責任のある開発介入という共通目標を達成するのに役立つと思われる。なお,このワークショップの概要は公開し,外務省ホームページにも掲載される予定である。

 牟田議長は,活発で刺激のある議論への参加に対して,全ての発表者と参加者に謝辞を述べ,ワークショップを閉会した。

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