共同議長:
ノラニ・イブラヒムEPU(首相府経済企画院)対外協力担当局長
廣野良吉・成蹊大学名誉教授
平成19年11月29日
第7回ODA評価ワークショップは、11月28、29日の2日間、クアラルンプールにおいて、マレーシア・日本両政府により共催された。
ワークショップ全体会合が、アリ・ハムザ・EPU副次官及び廣野良吉・成蹊大学名誉教授の開会の辞により開始され、小田克起・外務省国際協力局審議官が、マレーシア政府による本ワークショップの共催と参加者全員への歓待に対し、感謝する旨の歓迎の辞を述べた。
最初の発表として、マレーシア戦略・国際問題研究所(ISIS)により日本がこれまで実施してきた対マレーシア援助に関する評価結果が、マレーシアの様々な分野をカバーするいくつかの主要プロジェクトについて触れつつ報告された。報告に対する質疑では、いくつかのプロジェクトで実施上多少の問題が伴ったものもあるが、全体として、わが国の援助はマレーシアにおける人材育成、制度の構築に大きく寄与していることにつき概ね共通の認識が得られた。また、日本の対マレーシア援助に対する評価を通じて得られた教訓がマレーシア国内および地域開発のプロジェクトとプログラムにすでに生かされていることが強調された。
次に、デンマークにより、現在進行中のパリ宣言実施状況の評価について報告があり、援助効果のさらなる向上にむけたプロジェクト・プログラム評価のための重要な課題が示された。マネジメントグループとレファレンスグループという体制により実施されているこのパリ宣言実施状況の評価が、2008年のガーナハイレベルフォーラム及び2012年のハイレベルフォーラムを目標においていることが示された。
次に、OECD/DACにより、DACの評価品質基準につき紹介があった。質疑応答では、普遍的な評価基準や手法の重要性を認識しつつ、状況の異なるパートナー国で評価を行うにあたり多様性を容認する必要性に問題意識が集中した。
1日目午後2つの分科会が開催された。分科会Aでは制度面での評価能力向上(ECD)につき、分科会Bでは人的側面でのECDを中心に扱った。分科会Aでは、ベトナム、フィリピン、スリランカがそれぞれの経験について発表を行い、分科会BではJICA、ADB、ネパールが発表を行った。分科会における報告や議論の主要点は以下の通り。
分科会Aでは、(1)評価へのトップレベルにおける強い政治的コミットメント(2)教訓を得ることと説明責任を果たすという評価の目的間のバランス(3)評価の様々な段階における政策決定者の関与(4)評価の品質向上(5)パートナー国のECDを重視した評価地域ネットワークの促進および地域における評価基準策定と手法の向上の重要性、が強調された。
また、パリ宣言5原則のすべてがドナー/パートナー双方に効果的な評価の実施を求めていることについて認識が一致した。しかし、パリ宣言5原則をパートナー国におけるECDの進展度合いとドナー国の政策に照らしてどのように実施していくかについては課題が残された。
分科会Bでは、4つの問題に焦点をしぼって議論が行われた。(1)プロジェクトの管理、データ分析、プロジェクト目標設定、予算管理およびパフォーマンス監査の技術と方法(2)評価とECD研修を提供している国家組織の多様性(3)将来の評価者候補はどこに求めるべきか、多彩な評価者によるプラス面とマイナス面はなにか(4)政策決定者から実施機関、学術機関まで、多様な評価結果ユーザーの多様な要請。
2日目の全体会合では、分科会からの概要報告に続いて行われた議論において、2つの分科会の概要報告と共通する論点が提示された。ECDの資金をいかに調達すべきか、ECDをプロジェクト、プログラム、国別評価にいかにつなげていくべきか、多様なパートナー国が直面する固有の状況や評価に対する需要に経済・社会のグローバル化がどのような影響を与えているか、等の点が議論された。
第7回ODA評価ワークショップの参加者は共催者の優れた運営に対し衷心からの感謝を表明するとともに、2つの主要なワークショップの議題に関し包括的で示唆に富んだ発表を行った発表者に謝意を表した。また、このワークショップを実り多いものとしたマレーシア政府の歓待に感謝を表明した。すべての参加者が、今後もこのような各国の経験の共有と率直な対話を通じてアジアのパートナー国における評価および評価能力を向上させ、アジア地域における評価者のネットワーク設立のプロセスを促進する緊急の必要性を表明した。