グローカル外交ネット

令和7年3月21日

佐賀県地域交流部国際政策グループ

1 フィンランドとの交流のきっかけとこれまでの取組

フィンランドの「育児パッケージ」を参考に生まれた、「さが子育てエール便」

 佐賀県は、フィンランド代表による東京2020大会事前キャンプの誘致をきっかけに、同国との「交流」を超えた「連携」を目指し、駐日大使館をはじめとしたフィンランド各関係団体と協力して、両地域におけるWin-Winの関係構築と新たな価値の創造に取り組んできました。
 2021年12月には、佐賀県とフィンランドの連携の象徴となるロゴ「FIN-SAGA」(フィンサガ)を駐日フィンランド大使館で発表。その後、子育て政策や、歩くライフスタイルの推進など、多様な分野で連携を進めてきました。
 その後2022年10月には、政策連携のさらなる進化を目指して、佐賀の次世代を担う若手リーダーを中心に産学連携で編成した「佐賀県フィンランド使節団」がフィンランドに派遣されました。

これまでの取組について:
事前キャンプ誘致から政策連携へ FIN-SAGAの取組

(グローカル通信2023年3月号)

2 肥前吉田焼産地再生プロジェクト

駐日フィンランド大使による取組の視察

 使節団が訪問した「フィスカルス村」は、オレンジ色の鋏で有名な《FISKARS》社を中心に、かつては製鉄業で一時代を築いた製鉄の村だったそうです。その後、時代の変化とともに一時は廃村になりかけましたが、今では国内外から来た100名以上のアーティストが暮らし、世界中の人々がアートやデザインを目指して訪れる「アートヴィレッジ」として復活を遂げています。
 現在、使節団に参加した「肥前吉田焼」の窯元が、産地の再生、そして、次の100年に向けた取組を推進しています。その取組の一つに、このフィスカルス村から着想を得て、官民連携で発足した「肥前吉田焼産地再生チャレンジ推進協議会」があります。(肥前吉田焼やその他の取組について ホームページ:よしださんち別ウィンドウで開く
 同協議会では、産地の喫緊の課題であり、最大のテーマでもある「若手職人の育成・増加」や、これからの社会に必要不可欠な「持続可能なものづくりシステムの構築」に取り組んでいます。取組の中では、水力発電で電力を賄いながら、環境に配慮したものづくりを進めるフィスカルス村の考えに学び、生産時に排出される二酸化炭素の量を40%削減しながら、従来の磁器に比べて約1.5倍の強度を持つ新たな陶土が生み出されました。この陶土を使用して、開発された製品「うづら」は、地球の環境を守り持続可能な生活を生み出す器として、佐賀からはじまる、佐賀を心地よくするデザインを表彰する「SAGA DESIGN AWARD 2025別ウィンドウで開く」の大賞を受賞しました。
 また、「若手職人の育成・増加」の取組の一つとして、産地の関係人口を増やすため、クリエイターが一定期間その土地に滞在しながらコラボレーションや創作活動を行う「アーティストインレジデンス(AiR)」を実施し、自由な発想を持った国内外のクリエイターを受け入れています。

3 アーティストインレジデンスが繋いだフィンランドとの連携

(左)窯元とのミーティングの様子 (右)サーレライネン氏作品

 2024年にはペッカ・オルパナ佐賀県フィンランド交流大使(前駐日フィンランド大使)の協力によって、文化・教育・経済等、フィンランドと日本における様々な交流の推進をサポートする「フィンランドセンター」との連携が実現。同センターがクリエイターを派遣し、肥前吉田焼の窯元とのコラボレーションによって創作活動を行うプログラムを企画しました。そして11月には、第1号となるデザイナー/トゥーリ・サーレライネン氏が派遣され、約1カ月創作活動を行いました。
 滞在中、サーレライネン氏は吉田焼の窯元と共同で制作に励み、伝統的な技術や文化を学んでいきました。彼女が滞在中に創作した作品の一つには、市内の散策中に見つけた消波ブロック(テトラポッド)からヒントを得た花瓶があります。日本人にとっては見慣れた消波ブロックは、穏やかな海のフィンランドとは大きく異なる形で、文化や風土の違いに面白さを見出したそうです。その一方で、受け入れを行った産地にとっても、自分たちの「日常」の中に面白さを見つけ、作品に転化していく彼女の視点は、新たな刺激につながりました。
 同協議会では、このプログラムが肥前吉田焼の産地再生の促進につながるとともに、佐賀とフィンランドの架け橋になることを期待し、次の受入れについてもフィンランドセンターと協議を開始しています。
 これからも、佐賀県とフィンランドの絆が大きく育つよう、連携を進めていきたいと考えています。

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