グローカル外交ネット

令和4年2月25日

外交実務研修員 伊東 孝将
(北海道から派遣)

1 はじめに

 私は、2020年4月から国際協力局地球規模課題総括課で勤務しております。
 外務省に派遣される前は、私自身、外務省と仕事をする機会がほぼ無く、外務省と地方自治体の連携といっても姉妹友好提携に関することくらいなのかなと思っていました。しかし、2年間の外務省勤務を通じて、外務省と連携しながら国際社会で活躍している地方自治体や地方に拠点を置く企業、NGO・NPO等が多く存在し、姉妹友好提携以外にも外交において地方が果たす役割が種々あるということを実感しました。
 本寄稿では、地球規模課題総括課での勤務を振り返りつつ、外務省と地方自治体の連携について紹介させていただきます。今後、外務省との連携や職員派遣を検討している地方自治体、実際に派遣される職員の皆様の御参考になりましたら幸いです。

2 地球規模課題総括課での勤務について

 「地球規模課題総括課」といってもピンと来ない方が多いかと存じます。グローバル化が進み、人、物、情報等が、大量かつ短時間に国境を越えて移動する現代においては、感染症や気候変動など世界各地のあらゆるリスクが国境を越えて波及していきます。また、貧困や飢餓、教育、ジェンダー平等、エネルギーや経済成長、差別の解消等、全世界が取り組むべき課題が多く存在します。地球規模課題総括課では、そうした地球規模の課題を解決すべく、持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた取組や、国際機関やJICA等と連携した経済協力に取り組んでいます。私は、その中でも主にSDGs広報を担当しており、ジャパンSDGsアワードの運営やSDGs関連動画の作成、SDGsに関する講演・取材対応等に携わりました。

(1)ジャパンSDGsアワード

(写真3)表彰式の様子 第5回ジャパンSDGsアワード表彰式
出典:首相官邸ホームページ別ウィンドウで開く

 ジャパンSDGsアワードは、SDGs達成に資する優れた取組を行っている企業や団体等を表彰する制度です。受賞者は、NGO・NPO、有識者、民間セクター、国際機関等の広範な関係者が集まるSDGs推進円卓会議構成員から成る選考委員会の意見に基づき決定され、表彰式は、毎年12月に総理大臣や官房長官、外務大臣の御列席のもと執り行われます。
 私は本アワードの主担当として、実施方法の検討から、全体スケジュール管理、公募手続き、応募案件の整理、選考委員や受賞団体との調整、選考委員会及び表彰式の実施準備等を担当しました。半年以上に及ぶ政府表彰プロセスに最初から最後まで携われたことは非常に貴重な経験となりました。
 なお、本アワードはこれまでに5回開催され、地方自治体はじめ多くの地方企業や団体等が受賞してきています。受賞者の中には、自らの取組状況を検証し、国内外に発信・共有するVLR(Voluntary Local Review=自発的自治体レビュー)を世界で初めて実施した地方自治体もあり、国内だけでなく、地方自治体の国際的な相互の学び合いや連携にも繋がっています。
 既に多くの自治体がSDGsに関する取組を進めている日本の現状は、国際社会からも高く評価されており、外務省としてもこうした地方での優れた取組を国内外に共有すべく、本アワード受賞者等と連携して国際社会に発信してきました。以下はその一例です。

(2)国連ハイレベル政治フォーラム(HLPF)での発表

 HLPFは、SDGsが掲げられた「持続可能な開発のための2030アジェンダ」において、同アジェンダの実施をレビューするグローバル・レベルでのフォローアップ・プロセスと位置づけられている会合です。2021年の同会合において、日本は2017年以来2回目となるVNR(Voluntary National Review=自発的国家レビュー)を発表しました。
 2021年の同会合に際し、私は閣僚級セグメントで発表するVNRプレゼンテーション動画の作成を担当し、制作業者との契約事務や全体スケジュール管理、動画構成案の作成、出演者をはじめとした関係者との調整等を行いました。
 本動画には、外務大臣のほか、JICAや民間企業、市民社会の皆様に出演いただき、地方自治体として大牟田市教育委員会にも協力いただきました。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で移動に制限があったことから、撮影はオンラインツールを活用して実施しましたが、事前にスピーチ内容の相談や撮影日程・方法の調整等を密に行い、無事に撮影することができました。慣れない方法での撮影にもかかわらず柔軟に対応いただいた大牟田市教育委員会の皆様には感謝の気持ちでいっぱいです。多くの関係者に協力・出演いただいた動画が完成し、HLPF閣僚級セグメントで無事に放映されたときは大変感慨深かったです。

3 おわりに

 2年間の本省勤務も残りわずかとなり、4月からは在外公館での勤務が予定されています。実際に海外に身を置くことで見え方も変わってくるかと思います。世界から日本の自治体はどのように見られているか、自治体が外交においてどのような役割を果たすことができるかということを意識しながら、引き続き業務に取り組んでいきたいと思います。

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