核軍縮・不拡散
原子炉区画陸上保管施設建設協力事業
1 事業の概要
ロシアが沿海地方ラズボイニク湾に建設している原子炉区画陸上保管施設(注)に対し,その運用に不可欠な設備(浮きドック1隻,タグボート1隻,クレーン2基)を供与した。
(注)原子炉区画陸上保管施設
原子力潜水艦を解体した後に残る原子炉区画を,陸上で安全かつ安定的に長期保管するための施設。極東で解体された原潜約100隻分の原子炉区画を保管する予定。
2 背景
(1)原子力潜水艦を解体する際,艦体の大部分はスクラップとして処理されますが,内部の残留放射線が多い原子炉区画(艦体の中央部)については,直ちに解体することができないため,長期の保管が必要となります。これらの原子炉区画は,現在,放射性物質の流出を防ぐ密閉処理などを施した「3原子炉区画ユニット」(注)の形でロシア沿海地方のチャジマ湾に海上保管されていますが,今後海上保管が長期にわたる場合には,海水による腐食や海象の影響による事故等も懸念され,核・放射性物質の流出や海洋汚染の潜在的リスクは排除されません。
(注)3原子炉区画ユニット
原子炉区画及び前後の2区画(海上保管時の浮力確保のため必要)の計3区画を1つのユニットとして,密閉処理等を施したもの。陸上保管施設に収容する際には前後の浮力区画を切り離し,原子炉区画のみを保管します。
(2)2003年,ロシア政府は,これらの原子炉区画をより安全かつ安定的に長期保管するため,陸上保管施設の建設を開始し,我が国に対しても協力の要請がなされました。
(3)原潜解体事業は,潜水艦自体の解体のみならず,解体によって発生した原子炉区画や放射性廃棄物の安全な管理を達成することにより,核軍縮・不拡散(核汚染物質のテロリストへの流出等)及び日本海の環境保護に寄与するものです。このプロセスの一環として,陸上保管施設の早急な完成が必要となりました。(注)
(注)なお,ロシア極東と並んで退役原子力潜水艦の解体が行われているロシア北西部においても,G8グローバル・パートナーシップの枠内で,ドイツの協力を得て,同様の原子炉区画陸上保管施設が建設され,運用を開始しています。
3 経緯
- (1)2006年11月,現地調査を経て,建設事業への協力を決定。
- (2)2007年1月,日露非核化協力委員会第29回総務会にて,日露間で本件協力に正式に合意。
- (3)2009年5月,プーチン首相訪日の機会に同実施取決めに署名。
- (4)2009年10月,機材供与に係る調達代理機関を決定。
- (5)2010年7月,供与する各アイテム(以下4.)につき,国際入札を経て請負業者を決定。
- (6)2011年7月,タグボートを供与。2011年11月,ジブクレーンを供与。2012年5月,浮きドックを供与。
- (7)2012年5月,沿海地方ラズボイニク湾にて原子炉区画陸上保管施設建設協力事業完了式典
4 供与アイテム
- (1)タグボート「すみれ」:海上保管中の「3原子炉区画ユニット」の浮きドックへの曳航に使用します。
- (2)浮きドック「さくら」:海上保管中の「3原子炉区画ユニット」の陸上保管施設への搬入に使用します。
- (3)ジブクレーン2基(32トン及び10トン):陸揚げした「3原子炉区画ユニット」から浮力区画を除去する際に発生するスクラップ及び固体放射性廃棄物の搬出に使用します。