人権・人道

人権理事会の制度構築に関する決定(概要)

平成20年1月

1.経緯

(1)人権理事会は2006年3月、国連総会決議により、国連の人権問題への対処能力強化のため、従来の人権委員会に替えて、総会下部機関としてジュネーブに設置された。

(2)人権理事会は、人権委員会の全ての任務、組織を引き継ぎ、設立決議により2007年6月18日までに組織・活動方法の見直しを行なうこととされていた。

(3)理事国数は47カ国であるが、アジア・アフリカ諸国だけで過半数を占める等途上国に優位な議席配分とされている。

2.制度構築に関する決定

 第5回人権理事会(2007年6月11日~18日ジュネーブにて開催)においては、人権理事会の制度構築について先進国と途上国との間で厳しい協議が行われたが、最終日である18日、作業方法や組織等を包括的に取り纏めた制度構築に関する議長テキストが纏まり、同理事会で採択された。また、第62回国連総会においても、人権理事会の制度構築に関する決定が確認された。

(1)普遍的定期的レビュー(UPR:Universal Periodic Review)

 「協力」を基本理念とし、全ての国の人権状況を審査する枠組みであるUPRが新設された。国連加盟国各国は4年に1度審査され、理事国は任期中に優先的に審査される。最終的結論は理事会本会議で採択される。結論は、人権状況の評価や被審査国の同意を得た技術協力を含む人権促進のための協力等を内容とする。また、UPRの結果を検討する際には、理事会は、フォローアップが必要か否かを決定するとし、UPR制度への継続的な非協力については、当該国に協力へのあらゆる奨励を尽くした後に、理事会が対処する旨が定められるなど、一定のフォローアップ制度が整えられた。

(2)特別手続き(Special Procedures

 全てのテーマ別特別報告者及び以下の国別報告者のマンデート(委任)が延長され、今後の人権理事会において各特別報告者のマンデートを順次見直していくこととされた。また、特別報告者の議長による選出、理事会による確認手続きにつき定められた。

(イ)国別特別報告者(特定国の人権状況の報告のための専門家)制度

 国別特別報告者制度については、途上国側の反対が強く、キューバ、ベラルーシの国別特別報告者が廃止されたが、北朝鮮、ミャンマー特別報告者の任期は延長された。従来から人権委員会で人権分野での協力との議題の下で、派遣対象国も同意の上でコンセンサスにて設置されてきた8名の国別特別報告者(ブルンジ、カンボディア、コンゴ、ハイチ、リベリア、ソマリア、スーダン、パレスチナ)については全て延長された。また、本件制度自体は維持された。

(ロ)国別人権状況決議

 国別特別報告者の任命の根拠とされている国別人権状況決議については、提案国は予め可能な限り広い支持(15ヶ国が望ましい)を確保する責任を有することとされた。

(3)議題

 パレスチナにおける人権状況や発展の権利等が個別の議題として設定される一方、国別の人権状況を柔軟に議論可能な「人権理事会の注意を要する人権状況」も議題として設定された。

(4)人権理事会諮問委員会

 従来の人権小委員会が人権理事会諮問委員会に改組され、専門家委員の人数を26名から18名、年間会期を3週間から2週間とした上で、テーマ別問題に限定して人権理事会への助言を行うとの機能が明確化された。

(5)個人通報手続き(1503手続き)

 個人通報を基に組織的かつ重大な人権侵害を認定する制度について、これまでの制度を基礎としてその改善が図られた。作業部会について委員の任命・交代手続きが明確化され、作業部会の活動期間についてもこれまで総計3週間だったが、より効果的な機能を果たすため4週間に延長された。

(6)その他

 以上のほか、「活動方法」、「手続き規則」、「特別報告者の行動規範」が合意された。

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