エネルギー安全保障

(IRENA: International Renewable Energy Agency)の概要

令和2年8月6日

1 目的・活動

 国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は、再生可能エネルギー(太陽、風力、バイオマス、地熱、水力、海洋利用等)の普及及び持続可能な利用の促進を目的として設立された国際機関。2011年4月に正式に設立された。主な活動は、再生可能エネルギー利用の分析・把握・体系化、政策上の助言の提供、加盟国の能力開発支援等。

2 設立経緯

  • (1)2011年4月、第1回総会にて正式に設立。
  • (2)IRENA憲章の発効には署名した25の国・地域からの批准書の寄託が必要であるが、2010年6月にイスラエルが25か国目として締結し、同年7月に発効した。我が国については2010年7月に批准書を寄託し、同月に発効した。2020年7月現在、加盟国数は160か国とEU。

3 事務局本部等

  • (1)2011年4月、第1回総会で、事務局本部がアブダビ(ア首連)に決定した。同年10月、ボン(独)にイノベーション・テクノロジー・センター(IITC)が開所した。
  • (2)IRENAの主たる活動は、再生可能エネルギーに関する調査・政策及び財務を担当する知識・政策・財務局(KPFC)、国及び地域別の事案について、メンバーとの窓口の役割を果たす国別関与・パートナーシップ局(CEP)、再生可能エネルギープロジェクトの資金・投資を促進するプロジェクト円滑化・支援局(PFS)、イノベーションのシナリオ策定等を行うイノベーション・テクノロジー・センター(IITC)の4局で実施されている。

4 事務局長

 2019年1月、第9回総会において、フランチェスコ・ラ・カメラ氏(Francesco La Camera)(イタリア)が第2代事務局長に任命された。任期は2019年4月から4年間。

5 理事国

 理事国として、地域ごとに計21か国を選出。現理事国は以下のとおり(2019年1月から2年間。日本は、2019年のアジア大洋州地域の理事国を務め、2020年は代替国(注1)に就任。下記理事国のうち、(注2)の任期は2020年1月から1年間。)。

(注1:「代替国」とは、ある理事国が諸事情により会合に参加できない場合や、投票による決定事項の公正性を保つため投票を辞退する必要がある場合、当該理事国の代理の役割を果たす加盟国。)

(1)欧州その他:7か国

 (ベルギー(注2)、キプロス(注2)、ドイツ、イタリア(注2)、ニュージーランド(注2)、スイス、米国)

(2)アジア大洋州:6か国

 (バングラデシュ(注2)、ヨルダン(注2)、キリバス、マレーシア(注2)、フィリピン(注2)、アラブ首長国連邦)

(3)アフリカ:5か国

 (ブルキナファソ、チャド(注2)、エジプト、モザンビーク、ウガンダ)

(4)中南米カリブ諸国:3か国

 (アンティグア・バーブーダ、ドミニカ共和国、メキシコ)

6 組織

  • (1)IRENAの最高意思決定機関である総会は2011年4月に第1回目が開催され、以降毎年開催されている。総会では、作業計画及び予算、理事国の選出等の重要事項について議論及び採択が行われる。
  • (2)理事会は2011年7月に第1回目が開催されて以降、半年ごとに開催され、IRENAの作業計画及び予算案の審議等を行っている。

7 日本との関係

  • (1)日本はIRENAの諸活動に積極的に参加しており、設立当初から2019年まで連続して理事国を務めた。また、日本の分担金分担率は米国に次ぎ第2位(2020年は10.923%)。IRENAの職員約90名のうち邦人職員は3名(2020年7月現在)。外務省、農林水産省、経済産業省、環境省が共管。
  • (2)日本は2015年1月に開催されたIRENA第5回総会の議長国となり、宮沢経済産業大臣(当時)及び中山外務副大臣(当時)が共同議長を務めた。
  • (3)日本は、分担金に加え、任意拠出金を拠出し、系統安定化、蓄電、水素、地熱、アジアにおける再生可能エネルギー導入促進、バイオマスの利活用などの分野の活動強化を支援している。2019年度については、任意拠出金により、再エネと水素(電力系統との関係、技術・経済性、コモディティとしての取引)に関する調査の実施等を支援し、IRENAは2019年9月に「再生可能エネルギーの視点からみた水素」に係るレポートを発行。2020年度については、任意拠出金により、ア 再エネと水素利活用、イ 地熱利用促進、ウ 東南アジアにおける再エネ導入推進、エ アジアにおけるバイオエネルギー利用促進(資源調査及びポテンシャル調査)を支援している。
  • (4)IRENAは、日本の支援の下、2018年1月に開催されたワールド・フューチャー・エネルギー・サミット(WFES)2018にてワークショップを主催。日本からは、急速に復興が進む福島の様子を伝えつつ、福島県を未来の新エネ社会を先取りするモデル創出拠点とするための取組を紹介した。
  • (5)2018年4月2日から8日まで、アドナン・アミン事務局長(当時)は、外務省の閣僚級招へいにより訪日した。期間中、河野外務大臣への表敬を行った他、福島県訪問、国際セミナー「再生可能エネルギー外交の時代と日本の進路」への参加、「エネルギーと女性」を語る意見交換会に参加した。
  • (6)2018年8月、日本はグローバル地熱アライアンス(GGA)へ正式加盟した。GGAは、世界的な地熱開発促進に向けた政府、開発金融機関、開発援助機関、民間企業等の幅広い関係者による国際組織であり、IRENAが事務局を務める。主な活動としては、ア 地熱関連機関による対話やワークショップ等の開催、イ 地熱開発に係る技術支援及び政策アドバイス、ウ 地表調査・試掘を対象としたファイナンススキームの調査分析、エ 人材育成、オ 普及啓発等がある。
  • (7)日本は、2018 年9月にドイツ・ボンにて開催されたIRENA Innovation week 2018に参加した。約70カ国から300名以上が参加し、再エネ大量導入に関する課題(効率向上及び変動対策)に関して、デジタル化、電力供給の分散化、システムの柔軟性及び最終消費セクターの電化を中心に議論した。日本からは、ハイレベルセッションにおいて日本のエネルギー政策について紹介するとともに、エネルギーシステム変革の際の蓄電池や水素の可能性について発表した。
  • (8)日本は、IRENA/アブダビ開発基金プロジェクト(注)の諮問委員として、IRENAが公募した開発途上国における再生可能エネルギーのプロジェクトの審査に参画し、国際的な再生可能エネルギーの開発・普及促進に貢献している(任期:2019年1月~2020年11月。)。 (注)IRENA/アブダビ開発基金プロジェクト:アラブ首長国連邦が2009年に同国の政府系金融機関であるアブダビ開発基金を通じ、7年間で計3億5千万ドルをコミットし、諮問委員会及び専門家パネルの審査を経て推薦されたプロジェクトに対して低利で融資を行うもの。
  • (9)日本は、2014年以降継続的に、再生可能エネルギーを普及させるための人材育成の観点から、IRENAと共催し、アフリカやアジア・太平洋島嶼国等を対象とした再生可能エネルギーに関する研修プログラム/ファイナンスワークショップ等(注)を開催している。
    (注)研修プログラム/ワークショップの対象地域、内容は年度により異なる。
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