企業の社会的責任(CSR)

令和7年3月19日

1 OECD責任ある企業行動に関する多国籍企業行動指針の概要

  • (1)1976年、OECDは、参加国の多国籍企業に対して、企業に対して期待される責任ある行動を自主的にとるよう勧告するためのOECD多国籍企業行動指針(OECD Guidelines for Multinational Enterprises)を策定しました。「行動指針」は、世界経済の発展や企業行動の変化などの実情に合わせ、これまで6回(1979年、1984年、1991年、2000年、2011年、2023年)改訂されています。現在、「行動指針」には、OECD加盟国38か国の他、アルゼンチン、ブラジル、ブルガリア、クロアチア、エジプト、ヨルダン、カザフスタン、モロッコ、ペルー、ルーマニア、チュニジア、ウクライナ、ウルグアイの非加盟国13か国が参加しています。
  • (2)「行動指針」には、法的な拘束力はありませんが、一般方針、情報開示、人権、雇用及び労使関係、環境、贈賄及びその他の形態の腐敗の防止、消費者利益、科学、技術及びイノベーション、競争、納税等、幅広い分野における責任ある企業行動に関する原則と基準を定めています。
  • (3)前回2011年の改訂では、企業には人権を尊重する責任があるという内容の人権に関する章の新設や、リスク管理の一環として、企業は自企業が引き起こす又は一因となる実際の及び潜在的な悪影響を特定し、防止し、緩和するため、リスクに基づいたデュー・ディリジェンスを実施すべき等の規定が新たに盛り込まれました。(「OECD多国籍企業行動指針(2011年改訂版仮訳)」(PDF)別ウィンドウで開くをご覧下さい。)
  • (4)直近の2023年の改訂では、前回改訂から12年が経過したことを踏まえ、企業によるサプライチェーンの下流へのデュー・ディリジェンスの適用範囲の明確化、企業に対する気候変動や生物多様性について国際的に合意された目標との整合性を図ることへの期待、データの収集や使用を含めた技術に関するデュー・ディリジェンスの期待等の規定が新たに盛り込まれました。またこれを機に、名称が「責任ある企業行動に関する多国籍企業行動指針」に変更されました。(「OECD責任ある企業行動に関する多国籍企業行動指針(2023年改訂版(仮訳))(PDF)別ウィンドウで開くをご覧ください。)

2 各国連絡窓口(NCP)

  • (1)2000年の改訂では、「行動指針」の普及、「行動指針」に関する照会処理、問題解決支援のため、各国に「連絡窓口」(NCP:National Contact Point)が設置され、2011年の改訂では、NCPによる問題解決支援の機能が強化されました。2023年の改訂においても、NCPの実効性を確保するため、様々な規定の強化が行われました。各国のNCPは、OECDにおいて定期的にNCPネットワーク会合を開催し、OECD投資委員会に対して活動内容等を報告しています。
  • (2)「行動指針」の実施手続には「手続」(Procedures)が含まれ、NCPの組織や実際の活動に当たって考慮すべき点、OECD投資委員会の活動につき詳細が記載されています。
  • (3)2021年6月OECD事務局作成のNCP紹介動画(英語)(YouTube)はこちら別ウィンドウで開くよりご覧頂けます。

3 日本NCPについて

  • (1)日本NCPは2000年に設置され、外務省・厚生労働省・経済産業省の三者で構成されています。
  • (2)2008年7月に、日本NCPの諮問機関として、日本NCP、産業界(一般社団法人日本経済団体連合会)及び労働界(日本労働組合総連合会)から構成される日本NCP委員会を設置し、定期的に会合を開催しています。
    詳細説明(PDF)別ウィンドウで開くをご覧下さい。)

4 日本NCPによる個別事例の処理

5 日本NCPが今までに取り扱った案件(手続が終了した案件)

6 OECD責任ある企業行動に関する多国籍企業行動指針及び関連文書

(1)OECD多国籍企業行動指針

(2)デュー・ディリジェンス(自企業が引き起こす又は一因となる実際の及び潜在的な悪影響を特定し、防止し、緩和するための一連のプロセス)を実施するために参考となりうるガイダンス

産業分野別のガイダンス

7 責任ある企業行動に関する多国籍企業行動指針(2023年改訂版)の構成と骨子

序文 「行動指針」の基本的性格や背景の説明。
第1章 概念と原則 「行動指針」は多国籍企業に対し、良き慣行の原則・基準を提供。「行動指針」の遵守は任意のものであり、法的に強制し得るものではない。参加国政府は「行動指針」の普及を促進し、「各国連絡窓口(NCP)」を設置。2023年の改訂では、多国籍企業についての詳細な定義は引き続き設けない一方、新たに「企業構造、活動の国際的な性格」または「形態、目的、活動の商業的性格」が主要な要素であるとの説明を追記。
第2章 一般方針 持続可能な開発の達成、人権の尊重、能力の開発、人的資本の形成、良いコーポレート・ガバナンスの維持等のため企業は行動すべき。リスクに基づくデュー・ディリジェンスを、サプライチェーンを含む企業活動による負の影響を特定、防止、緩和するための主要ツールとして導入。2023年の改訂では、企業によるサプライチェーンの下流へのデュー・ディリジェンスの適用範囲に関し、下請け、フランチャイズ、顧客、合弁パートナー等を明示するとともに、下請け企業等の関係先が多い場合、企業はデュー・ディリジェンスのリスクが高い主体を優先すべきとされた。
第3章 情報開示 企業は、活動、組織、財務状況及び業績等について、タイムリーかつ定期的に情報開示すべき。企業が情報開示すべき重要情報と、企業による情報開示が奨励される情報を例示。2023年の改訂では、財務情報だけでなく、人権や環境などの責任ある企業行動に関する情報の開示への期待の高まりを反映した。また、「G20/OECD コーポレート・ガバナンス原則」との整合性を確保。
第4章 人権(2011年に新設) 企業には人権を尊重する責任があり、自企業及び取引先の活動等において、適切に人権デュー・ディリジェンスを実施すべき。2023年の改訂では、人権擁護者、先住民に関する記載を強化。
第5章 雇用及び労使関係 企業は、労働者の権利の尊重、必要な情報の提供、労使間の協力促進、途上国で活動を行う際の十分な労働条件の提供、訓練の提供、集団解雇の合理的予告等を行うべき。2023年の改訂では、結社の自由と団体交渉権の重要性を強調。
第6章 環境 企業は、環境、公衆の健康及び安全等を保護し、持続可能な開発の達成等に向け十分考慮を払うべき。2023年の改訂では、気候変動と生物多様性等に関する責任ある企業行動の期待を明確化。初めて、気候変動の緩和 温室効果ガス排出削減と森林などの吸収量増加)と適応(自然生態系や社会・経済システムの調整による悪影響の軽減等)に対する企業の責任を明記。
第7章 贈賄及びその他の形態の腐敗の防止 企業は、賄賂その他の不当な利益の申し出、約束又は要求等を行うべきでない。2011年の改訂により、対象範囲を贈賄要求、金品の強要の防止にも拡大、少額の円滑化のための支払いについても言及。
第8章 消費者利益 企業は公正な事業、販売及び宣伝慣行に従って行動し、提供する物品・サービスの安全性と品質確保等のため合理的な措置を実施すべき。消費者情報を保護し、誤解を招きやすい販売活動を防止し、弱い立場にある消費者やEコマース等にも適切に対応すべき。
第9章 科学、技術及びイノベーション 企業は、受入国の技術革新能力の発展、受入国への技術・ノウハウの移転等に貢献すべき。2023年の改訂では、デジタル・トランスフォメーション(DX)の進展を反映。企業による技術の開発・販売・使用についてリスクベースのデュー・ディリジェンス実施への期待を記載。
第10章 競争 企業は、法律・規則の枠内において競争的な方法で活動すべき。
第11章 納税 企業は納税義務を履行することにより、受入国の公共財政に貢献すべき。
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