外交青書・白書
第4章 国際社会で存在感を高める日本

3 多国間主義に基づく国際協力

新型コロナの世界的な感染拡大により、今まで以上に国際協調が求められる中、日本は、国連を始めとする多国間の枠組みを通じた国際協力を行うことで、国内外の平和と繁栄を追求している。

新型コロナに伴う人間の安全保障の危機に対応すべく、日本は、「誰の健康も取り残さない」との考えの下、G7、G20、国連総会などの場でユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成を目指す国際的な議論を主導し、ワクチンや治療などへの開発途上国を含めた公平なアクセスの確保に向けた国際連携の枠組みであるACTアクセラレータ2を共同提案国として牽引(けんいん)している。また、感染症危機の克服のための取組のみならず、将来の健康危機も見据えた保健医療システムの強化を始めとする二国間及び多国間の協力をスピード感をもって展開している。

その他の地球規模課題に関しても、インド洋と太平洋にまたがる連結性の実現を目指した「質の高いインフラ投資に関するG20原則」(2019年6月)、海洋プラスチックごみによる新たな汚染を2050年までにゼロにすることを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」の主導とその実現に向けた「マリーン・イニシアティブ」の立ち上げ(同年同月)、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロとする、「カーボン・ニュートラル」の実現を目指すとの表明(2020年10月)など様々な取組を推進し、国際社会における存在感を高めてきた。日本は引き続き、積極的かつ戦略的なODAの活用を通じ、持続可能な開発目標(SDGs)達成を始めとする地球規模課題への取組を加速していく。

特に現在、気候変動問題への対応は最も重要な課題である。2050年までの「カーボン・ニュートラル」の実現に向け、国内の気候変動対策を進めるとともに、パリ協定が目指す世界全体での脱炭素社会の実現のため、2021年に予定されている国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)を含め、各国と連携しつつ、国際社会の取組を牽引していく。

国際社会が新型コロナを始めとする様々な危機に直面する中、国際社会を結束させる国連の存在意義はかつてなく高まっており、必要な機能を効果的に果たしていくためには、ポスト・コロナを見据えた国連改革に真剣に取り組む必要がある。特に安保理改革に向けた具体的交渉を開始すべく取り組むとともに、国際社会の平和と安定に一層貢献するため、日本は2022年の安保理非常任理事国選挙での当選を目指している。また、国連平和維持活動(PKO)や第14回国連犯罪防止刑事司法会議(2021年3月)などを通じて、幅広い国際課題に積極的に貢献していく。

日本は、国際情勢が複雑化し、不確実性が高まる中で、その存在感を、国際舞台における調整力へと転換して、責任感と使命感を持って様々な問題の解決に向け主導力を発揮していく。

2 ACTアクセラレータ:Access to COVID-19 Tools Accelerator

このページのトップへ戻る
青書・白書・提言へ戻る