8 女性
(1)G7タオルミーナ・サミット
G7タオルミーナ・サミット(イタリア)では、首脳宣言でジェンダー間の平等をあらゆる政策で主流化することに引き続きコミットし、また、女性及び女児の経済的エンパワーメントを促進するため、「ジェンダーに配慮した経済環境のためのG7ロードマップ」を採択した。
(2)G20ハンブルク・サミット
G20ハンブルク・サミット(ドイツ)では、女性のエンパワーメントについて、デジタル化や理系分野、訓練・職業への女性のアクセス、女性起業家への支援拡大などについて議論が行われた。これを受けて世銀と参加13か国により女性起業家資金イニシアティブ(We-Fi)の立ち上げが発表された。We-Fiは開発途上国の女性起業家や、女性が所有・運営する中小企業等が直面する様々な障壁の克服を支援することで、開発途上国の女性の迅速な経済的自立及び経済・社会への参画を促進し、地域の安定・復興、平和構築を実現することを目的としており、日本が主に二国間で実施してきた女性起業家支援を補完・拡充するものである。また、「女性の輝く社会」の内外での実現を目指す日本の政策とも一致するものであることから、日本は同基金に5,000万米ドルの拠出を行う意図を表明した。
(3)国際女性会議WAW!(WAW! 2017)
2017年11月1日から3日にかけて、4回目となる国際女性会議WAW!(WAW! 2017)を開催し、日本を含む21か国及び8国際機関から女性分野で活躍する66人のトップ・リーダーが集まり、延べ約2,400人が参加した。2017年のテーマは「WAW! in Changing World」で、女性支援の具体的な取組・実績に焦点を当てつつ、変化する世界で女性が活躍していくための方策等について議論を行った。企業や国際機関等がジェンダー分野で実施している取組、理系分野での女性の活躍、無償労働の分担、平和・安全保障における女性の参画、メディアでの女性、自然災害下のジェンダー平等などのトピックについて議論した。また、若者たちが中心となり、女性活躍の未来について議論した。最終日にはWAW!の3日間の議論の成果として、参加者から出された行動志向の提言を「WAW!2017東京宣言」として取りまとめ、発表した。


(4)国際協力における開発途上国の女性支援
安倍総理大臣は、2013年の国連総会一般討論演説で、女性の地位向上を主眼として、①女性の活躍・社会進出推進と女性の能力強化、②国際保健外交戦略の推進の一環としての女性の保健医療分野の取組強化及び③平和と安全保障分野における女性の参画と保護の3分野に、2015年までの3年間で30億米ドルを超す政府開発援助(ODA)の実施を表明し、着実に実施した。2016年5月には、開発協力大綱に基づく新たな分野別開発政策の一つとして「女性の活躍推進のための開発戦略」を発表するとともに、2016年から2018年までの3年間で、約5,000人の女性行政官等の人材育成と約5万人の女子の学習環境改善の実施を表明した。また、同年12月に開催された第3回国際女性会議WAW!で、安倍総理大臣は、開発途上国の女性たちの活躍を推進するため、①女性の権利の尊重、②能力発揮のための基盤の整備及び③政治、経済、公共分野におけるリーダーシップ向上を重点分野として、2018年までに総額約30億米ドル以上の支援を行うことを表明し、着実に実施している。
(5)国連における取組
ア 国連女性の地位委員会
3月に第61回国連女性の地位委員会が開催され、日本からは、滝沢外務大臣政務官を首席代表に、橋本ヒロ子日本政府代表、各府省庁、国際協力機構(JICA)及びNGOから成る代表団が出席した。会議では、滝沢外務大臣政務官が閣僚級ラウンドテーブルで議長を務めるとともに、女性の経済的エンパワーメントを促進するためどのような政策が採れるかについて議論をリードした。また、技術の進歩やイノベーションと女性の経済参画について日本の取組について発信し、各国代表と意見交換を行った。
イ UN Women
2016年のジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国連機関(UN Women)に対する拠出金は、約3,000万米ドルで、シリア難民女性のエンパワーメントや、アフリカにおける暴力過激主義対策などに使用されている。また、2017年9月、第72回国連総会出席のためにニューヨーク(米国)を訪問した安倍総理大臣は、UN Womenが主催する「HeForShe IMPACT 10×10×10男女平等報告書発表式」に参加し、国内の女性活躍推進に係る取組と成果を発信するとともに、国際女性会議WAW!(WAW! 2017)を紹介し、「女性が輝く社会」を世界中で実現するため、WAW!でつながり、共に取り組んでいくことを参加者に呼びかけた。UN Womenでは、ジェンダー平等のために男性・男児の関与を呼びかけるための「HeForSheキャンペーン」を実施しており、同キャンペーンを加速させるチャンピオンとして、安倍総理大臣が10人の首脳の一人として選出されている。今後とも同機関との連携を一層深めていく予定である。
ウ 性的暴力への対応
紛争の武器としての性的暴力は、看過できない問題であり、加害者不処罰の終焉(しゅうえん)及び被害者を支援していくことが重要である。21世紀こそ女性の人権侵害のない世界にするため、日本はこの分野に積極的に取り組んでおり、国連アクションや紛争下の性的暴力担当国連事務総長特別代表事務所といった国際機関との連携、国際的な議論の場への参加を重視している。
日本は、2017年、紛争下の性的暴力担当国連事務総長特別代表事務所に対し、100万米ドルの財政支援を行い、支援対象国の警察・司法能力強化等に貢献している。さらに、国際刑事裁判所の被害者信託基金にも引き続き拠出を行っており、累計約75万ユーロの拠出中約55万ユーロを紛争下における性的暴力対策にイヤーマーク(使途指定)し、被害者保護対策にも取り組んでいる。
エ 国内の取組
より効果的に平和な社会を実現するためには、紛争予防、紛争解決、平和維持・構築のあらゆるフェーズで女性の参画を確保し、ジェンダーの視点を入れることが重要である。このため、日本は、国連安保理決議第1325号女性・平和・安全保障及び関連決議の履行に向けた「行動計画」を策定し、2016年から同計画を実施し、そのモニタリングと評価を行っている。2017年度末には第2回の年次報告書を公表する予定である。
オ 女子差別撤廃委員会
日本は、1987年から継続して女子差別撤廃委員会に委員を輩出しており、現在は林陽子弁護士が委員を務めている。

~特別イベント「女性のエンパワーメント」から、女性起業家支援に焦点を当てて~
2017年11月1日から3日まで日本政府主催の「国際女性会議WAW(ワウ)!」(WAW! 2017)が開催されました。今回で4回目となるWAW! 2017には、21か国・8国際機関から66人がスピーカーとして登壇し、延べ約2,400人が参加しました。


(11月3日、東京 写真提供:内閣広報室)
WAW! 2017は「WAW! in Changing World」をテーマとして、女性支援の具体的な取組・実績に焦点を当てつつ、変化する世界で女性が活躍していくための方策等について議論を行いました。また、3日間の議論の成果として、参加者から出された行動志向の提言を「WAW!2017東京宣言」として取りまとめ、発表しました。
ここでは、WAW! 2017の3日目に行われた特別イベント「女性のエンパワーメント」の様子をお届けします。
まず、安倍総理大臣が開会挨拶を行い、政府の女性活躍推進へのコミットメントやその成果を強調した上で、本年のG20ハンブルグ・サミットで世界銀行と参加国による立ち上げが発表された「女性起業家資金イニシアティブ」(We-Fi:ウィーファイ)を日本として強く支持し、5,000万ドルの支援の意思を再度表明するとともに、女性起業家が世界の経済発展に与える好影響について述べました。続いて特別講演を行ったイバンカ・トランプ米国大統領補佐官は、女性の経済参画が社会にとって有意義であること、同時に専業主婦も同様に重要な仕事を担っていることを指摘し、「全ての女性はワーキング・ウーマンである」と述べました。そして、家族を大事にしながら女性が活躍することができる社会を実現したいとの発言がありました。さらに、技術革新の時代にあって、特に女性に対する理系教育の重要性に触れるとともに、女性がその能力の発揮が妨げられている社会に対して支援を行っていくべきであり、この観点から開発途上国における女性起業家支援の重要性に言及しました。
河野外務大臣は、日本人の女性起業家の成功例を挙げながら、起業家が直面する資金調達や専門的な知識を獲得することの難しさに触れ、これらの障壁を克服するための支援を目的とするWe-Fiの重要性を強調しました。

続いて,ゲオルギエヴァ世界銀行CEOは、開発途上国における女性の資金アクセスに関する現状と課題を挙げました。例えば、既婚女性が不動産を相続できない国が世界に35か国あり、女性が夫の許可・同伴なしに外出できない国が17か国あります。また、起業時に融資を受けられない人が世界に約20億人おり、銀行の口座さえ持っていない人々もいます。そのような人々の60%以上が女性です。ゲオルギエヴァCEOは上記のような現状を示した上で、We-Fiを通じた女性への支援は経済発展につながることを強調するとともに、今後も女性起業家支援の取組を促進していくと述べました。

続いて行われたパネル・ディスカッション「女性起業家支援」では、キャシー松井・ゴールドマン・サックス証券株式会社副会長(米国)がモデレーターを務め、スシ・インドネシア海洋水産相、佐々木かをり・株式会社イーウーマン代表取締役社長、イ・ミヨン・フェアトレードコリアCEO(韓国)、ヴェリンガ=ジースケスThe Job Factory創設者(コンゴ民主共和国)、ストイコヴィッチ国際金融公社(IFC)副総裁、矢島里佳・株式会社和える代表取締役社長の7人が登壇しました。まず、松井氏から、女性への投資が経済成長につながることが紹介され、次に登壇者間で、起業の際に実際に直面した、課題や困難を乗り越えた経験を共有するとともに、女性起業家のための国や国際機関による支援の在り方について討論を行いました。

スシ海洋水産相は、中小企業支援の資金を活用して自らの事業を拡大した実体験に触れながら、スタートアップ時の政府による積極的な財政支援の重要性を挙げるとともに、教育やメンタリングを利用しながら、女性が自らに足かせをせず能力を発揮することも必要であると語りました。起業時の資金調達に関しては、イ氏も、自身が起業した際に資金、ビジネスプラン、人材、ネットワーク等が不足していた経験を踏まえ、様々な世代の女性起業家が意見を交換し、リソースを共有することのできる場の必要性を挙げました。コンゴ民主共和国で起業した際に、資金に加えて法整備も不足していたことを挙げたヴェリンガ=ジースケス氏は、We-Fiを評価した上で、より効果的な起業家支援のためにも、融資機関の役員に女性起業家を含めることや、政府や支援組織による支援内容の周知徹底、女性起業家が問題を解決できるインキュベーションセンターの整備などを具体的に提案しました。
ストイコヴィッチ氏は、どの国でも共通している障害として資金アクセスに触れ、担保の問題を解決するために規制緩和を考慮に入れることや夫の許可がないと仕事ができないといった女性に対する差別を撤廃することの重要性を指摘しました。これらの点に関しては、矢島氏も、起業の推進と成長のためにも、設立直後の起業家に対する法人税を引き下げることや夫婦別姓を認めて女性に改姓の負担がかからないようにすることを提言しました。女性社長であるために差別を受けたことがある佐々木氏は、話し方やプレゼンの仕方を変えることで差別を克服した経験を共有し、女性起業家が仕事をしやすい政策の整備や、女性起業家の製品の購入やサービスの利用を通じて皆で支援していく重要性を述べました。