外交青書・白書
第2章 地球儀を俯瞰する外交

第4節 欧州

総論
〈欧州の重要性〉

欧州は、言語、文化・芸術活動、有力メディアやシンクタンクの発信力などを背景に、国際世論に対して大きな影響力を有しており、経済面でも、欧州連合(EU)加盟28か国合計で世界の国内総生産(GDP)の約24%を占めるなど、大きな存在感を示している。また、欧州主要国は、国連安全保障理事会やG7等の主要な国際的枠組みのメンバーとして、国際社会での規範形成過程において大きな役割を果たしている。さらに、日本と欧州は、自由、民主主義、人権、法の支配等の基本的価値や原則を共有し、自由で開かれた国際秩序に深くコミットし、互いに長年にわたる米国との同盟関係を有していることを踏まえ、協力関係を深めてきている。

欧州は、日本が「地球儀を俯瞰する外交」を展開する上で重要である。欧州各国との二国間関係に加えて、EU、北大西洋条約機構(NATO)、欧州安全保障協力機構(OSCE)等の欧州の地域機関との協力をより一層強化するとともに、「V4(ヴィシェグラード4)+日本」や「NB8(北欧・バルト8か国)+日本」、「GUAM(ジョージア、ウクライナ、アゼルバイジャン及びモルドバ)+日本」など、欧州域内の地域的枠組みとの協力推進を通じて、全体として日欧関係の幅を更に広げていく必要がある。

〈欧州が直面する諸課題〉

欧州は、中東・北アフリカ地域の不安定化、それに伴う未曽有の難民等の流入、パリなどでの一連のテロ事件を始めとしたテロの脅威に加え、ギリシャ債務問題、英国のEU残留/離脱を問う国民投票等、EUの拡大と深化に伴って生じたものを含め、諸課題に直面している。

〈対欧州外交〉

安倍総理大臣は、6月のドイツ・エルマウでのG7サミットに出席し、各国首脳と会談を行うとともに、この機会に日本の総理大臣として初めてウクライナを訪問した。また、11月から12月にかけてのフランス・パリにおける国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)出席の機会に、日本の総理大臣として二国間の文脈で初めてルクセンブルクを訪問した。岸田外務大臣は、1月中旬にフランス、ベルギー及び英国を訪問し、各国外相と会談するとともに、日・EU外相会談及びNATO事務総長との会談を行った。また、11月にはアジア欧州会合(ASEM)第12回外相会合出席のためルクセンブルクを訪問した。これらを含め、欧州諸国・機関との間では、首脳級・外相級の往来が極めて活発に行われており、各国・機関との関係強化のみならず、首脳・外相レベルでの信頼関係も強化された。こうした機会を通じて、安全保障、経済、地球規模課題等、幅広い分野における日本の立場や取組について、欧州各国・機関の理解を促進するともに、日欧間での具体的な協力を前進させた。例えば、安全保障分野では、NATO及びEUとの間で、今後も緊密に連携していく認識で一致したほか、英国及びフランスとの間では、安全保障・防衛分野での協力が進展している。また、経済分野では、日・EU経済連携協定(EPA)に関し、2015年中に6回の交渉会合を実施するとともに、11月の日・EU首脳会談では、2016年のできる限り早い時期の大筋合意の実現を目指すことで一致した。また、同首脳会談では、テロ対策や中東・北アフリカからの難民の流入等、欧州の直面する諸課題は国際社会全体の問題であるとして、連帯し協力していくことで一致した。

このほか、今年度から欧州諸国等の学生招へい事業「MIRAIプログラム」を開始するなど、欧州各国及びEUとの間では、教育、文化、科学技術など幅広い分野で協力、人的・知的交流を通じた多様なチャネルの構築とともに、日本の魅力の発信や相互理解の促進等を通じた、重層的かつ緊密な関係の維持に努めている。

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