2 中南米地域情勢
(1)政治情勢
2015年は、セントクリストファー・ネーヴィス、ガイアナ、スリナム、グアテマラ、トリニダード・トバゴ、ハイチ、アルゼンチン、ベリーズ、セントビンセント及びグレナディーン諸島で大統領選挙や総選挙が行われた(詳細はP68図「2015年の主な出来事(各国・地域別)」参照)。アルゼンチンの大統領選挙では、12年続いた左派政権が敗北し、中道右派政権が成立、また、ベネズエラにおいて行われた国会議員選挙においても左派である与党が敗北するなど、中南米地域の今後の政治動向が注目される。
地域統合機構においては、1月に第3回ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)首脳会合、6月及び12月に第45、46回SICA首脳会合、7月に第10回太平洋同盟首脳会合、第36回CARICOM首脳会合、7月及び12月に第48、49回MERCOSUR首脳会合など様々なハイレベル会合が開催された。
また、7月には米国とキューバの間で半世紀以上断絶されていた外交関係が再開され、相互に大使館が設置された。今後は国交正常化に向けた両国間の動き、それに伴う中南米諸国と米国との関係及びキューバの国際社会における動向が注目される。




(2)地域経済情勢
2015年の中南米地域全体としての経済成長率(国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)推定値。以下同様)は-0.4%となり、2009年以来初めてのマイナス成長を記録した。特に近年の一次産品価格の低下に伴い、経済を原油や鉱物資源などの一次産品に依存している国では、経済政策の不調もあり、厳しい経済事情が続いている。特に、中南米地域最大の経済規模を擁するブラジルの成長率は-3.8%と、停滞が顕著となっている。
その一方で中南米地域第2位の経済規模を誇るメキシコは米州市場への玄関口であり、自動車関連分野を中心に、引き続き日本を始めとする世界各国からの企業進出が続いている。前年8月までに主要構造改革を実現したニエト政権は、2015年も引き続き通信、エネルギー、教育等の分野で各種構造改革を推進しており、原油価格低迷の影響は受けつつも、ペソ安による米国向け工業輸出が堅調であったことなどにより、GDP成長率は1年を通じて2.5%前後で推移した。また、ドミニカ共和国が6.5%、パナマが5.9%、セントクリストファー・ネーヴィスが5.2%、ボリビアが4.5%など、一部の国では高成長を記録するなど、地域内でも各国による政策の違いが経済成長に影響を与えている。
中南米地域は、世界でも有数の食料供給地域であるとともに重要資源の供給地である。銀、銅、亜鉛、鉄鉱石、石油などの重要資源や、電気自動車などの電池用として今後大幅な需要増が見込まれるリチウムを始めとする希少金属(レアメタル)の主要産地でもある。近年は、シェール・ガスの主要埋蔵地として、アルゼンチン(埋蔵推定量世界第2位)、メキシコ(同第6位)にも注目が集まっている。一次産品価格の下落は当面の間回復の見込みは高くないものの、中南米諸国の持つ潜在力は依然として高い。


2015年、1895年11月に「日伯修好通商航海条約」を調印した日本とブラジルは外交関係樹立120周年を迎えました。ブラジルには、世界最大の日系社会があります。120周年を機会に、お互いの理解を一層深めようと活発な要人往来が行われ、経済、文化、芸術等など様々な分野で、総計600もの記念事業が両国で実施されました。

ブラジル政府から招待を受けた秋篠宮同妃両殿下が10月28日から11月8日にかけてブラジルを公式訪問されました。ルセーフ大統領表敬、連邦議会主催120周年記念式典、ブラジル政府主催午餐会への御臨席に加え、連邦直轄区及び5州(サンパウロ州、パラナ州、マット・グロッソ・ド・スール州、パラー州及びリオデジャネイロ州)を御訪問になり、各知事を御引見し、また日系団体主催行事に御臨席になりました。
日・ブラジル外交関係樹立120周年を記念して、青森県五所川原市の「たちねぷた」のサンパウロカーニバル参加、セラード農業開発など5つの日・ブラジル共同ナショナルプロジェクトを紹介する「日伯共同プロジェクト展覧会」及びイビラプエラ公園の日本館改修など様々な事業が実現しました。
また、ブラジルでも最も日系人が多い都市であるサンパウロでは9月にコシノ・ジュンコ氏プロデュースの花火祭りが行われ(写真)、4,500発の花火が音楽に合わせて打ち上げられました。そのほか、世界的人気バンド「Pato Fu」のボーカリストであるブラジル人歌手フェルナンダ・タカイ氏が日本人アーティスト野宮真貴氏とともに日・ブラジル友好120周年記念ソング「LOVE SONG」を制作し、本記念事業で広く流されました。さらに、ブラジル各地の日本祭りで音楽巡回公演が行われ、ブラジル人アーティストと日本人アーティストが共演するなど好評を博しました。

日本とブラジルの関係は経済交流のみならず、学術、文化、スポーツ、音楽等を通じた人的交流まで幅広く多様です。2016年はリオデジャネイロでオリンピック・パラリンピックが開催されますが、リオから東京へ五輪のたすきが引き継がれ、今後も一層緊密な関係になることが期待されています。

~長きにわたる友好関係を祝福~
2015年は、日本とグアテマラ、エルサルバドル、ホンジュラス、ニカラグア及びコスタリカとの外交関係樹立80周年でした。この5か国にパナマ、ベリーズ及びドミニカ共和国を加えた8か国で構成される中米統合機構(SICA)との間で2015年を「日・中米交流年」と定め、政治、経済、文化等様々な分野において記念事業が実施されました。

交流年に先駆けて2014年10月に秋篠宮同妃両殿下がグアテマラを御訪問になりました。また、2015年12月には眞子内親王殿下がエルサルバドルとホンジュラスを御訪問になり、両国政府及び国民から盛大な歓迎を受けられ、交流年の締めくくりにふさわしい御訪問となりました。
政治・経済面では、安倍総理大臣と中米各国首脳との交流年祝賀メッセージの交換が行われました。また、7月にホンジュラスのエルナンデス大統領が訪日したのを始め要人往来が活発に行われたほか、5月には、経済交流を促進するため、グアテマラで日・中米ビジネスフォーラムが開催されました。

また、年間を通じて日本と中米各国の双方において多くの記念行事が開催されました。中米各国においては、自衛隊練習艦隊の寄港や、武道実演、コンサート、アニメ等のポップカルチャー関連イベントといった日本文化紹介事業を中心に約300件の記念行事が開催されました。日本においても、コンサート、絵画展、映画祭等の中米文化紹介事業が行われたのを始め、コスタリカのサッカーU22、U16代表が来日して日本と親善試合を行うなど、交流年を大いに盛り上げることができました。

(6月18日、駐コスタリカ日本国大使公邸)
このように、2015年には、幅広い分野において双方の交流・相互理解が促進され、日・中米関係の深化という意味で画期的な1年となりました。今後も、共に発展するパートナーとして、交流年を通じて強化された中米諸国との友好関係を一層促進していきたいと考えています。