外交青書・白書
第2章 地球儀を俯瞰する外交

第6節 中東と北アフリカ

総論

中東・北アフリカ地域(以下「中東諸国」という。)は、欧州、サブサハラ・アフリカ、中央アジア及び南アジアの結節点という地政学上の要衝である。また、国際通商上の主要な海上ルートに位置し、石油・天然ガスなどのエネルギー資源を世界に供給する重要な地域でもある。一方で、この地域は、シリア情勢、イランの核問題、中東和平、イラクやアフガニスタンの治安と復興など同地域を不安定化させる様々な課題を抱えている。これら諸問題の解決は、この地域の平和と安定のみならず、8割以上の原油を同地域から輸入する日本にとり、そして、国際社会全体にとっても極めて重要である。

日本にとり、中東諸国との間で従来のような資源・エネルギーを中心とする関係を超えて、幅広い分野での経済面での協力関係、さらには政治・安全保障、文化・人的交流といった多層的な関係を構築していくことが重要である。このため、5月の安倍総理大臣のサウジアラビア訪問に際して、日本と中東地域の関係を「安定と繁栄に向けた包括的パートナーシップ」として抜本的に強化していくことを宣言した。

さらに、国際社会の懸案事項であるシリア問題については、日本は世界各国と協調して各当事者に暴力の停止を呼びかけたほか、9月の国連総会一般討論演説において、安倍総理大臣から約6,000万米ドルの追加的な支援を表明するなど、難民・避難民への人道支援を行った。中東和平については、7月に岸田外務大臣がイスラエル、パレスチナ、ヨルダンを訪問し、それぞれの首脳に和平実現を働きかけたほか、日本が主導する「平和と繁栄の回廊」構想の進展に向け、4者による閣僚会合を実施した。また、11月にEU3+31との合意により大きく進展が見られたイランの核問題についても、高村総理特使及び岸田外務大臣がイランを訪問し、イラン側に柔軟性ある対応を一貫して求めるなど、日本独自の立場から働きかけを行った。

中東諸国は近年、急速に増加する若年人口を活力として着実な経済発展を遂げ、市場や投資先としての存在感も高めている。そのため、日本はこれら諸国との間で、EPA/FTA、投資協定、租税条約など経済・ビジネス関係の強化のための基盤となる法的枠組みの構築やインフラの海外展開などにも取り組んでいる。5月、8月、10月の3度にわたる安倍総理大臣の中東諸国への訪問においても、日本経済界を代表する経済ミッションが同行し、エネルギー、インフラ開発、保健・医療、先端技術を始めとする幅広い分野で日本の「強み」を各国のハイレベルに積極的にアピールした。

1 イランの核問題に関するEU3(安保理常任理事国の英国及びフランス、ドイツ)と、安保理常任理事国である米国、中国、ロシア3か国を合わせた6か国による対話の枠組み

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