1 中南米諸国との関係強化と協力
(1)経済関係の強化
中南米地域は、世界有数の経済規模を有するブラジル(世界第7位)やメキシコ(世界第14位)、コロンビア、ペルー、チリ、パナマなどの成長著しい太平洋沿岸国やアルゼンチン、ボリビアなどの鉱物・食料資源の豊富な国々を擁している。その経済的潜在力には世界的な関心が集まっている。
中南米地域は、過去10年は概ね4~6%の安定的な経済成長を維持しており、日・中南米貿易額は過去10年間で倍増している。日本から中南米への進出企業数は2012年には前年比で267社増加している。
日本は、中南米各国を、共に成長する経済パートナーとして重視し、官民一体となって、日・中南米間の貿易・投資関係の推進や円滑化に取り組んでいる。日本政府は、貿易促進及び進出企業のビジネス環境整備に資するEPA、投資協定などの法的枠組みの構築促進やこのような枠組みに基づく協議を通じ、日本企業の進出の促進など、経済関係の強化を図っている。2013年は、日・コロンビアEPA交渉(5月(於:カリ(コロンビア))、10月(於:東京))、日・ウルグアイ投資協定交渉(2013年に5回実施)において具体的な進展が見られた。また、8月には、日・メキシコEPAに基づくビジネス環境整備委員会を開催した。

(2)中南米諸国の安定的な発展のための貢献
中南米諸国の安定的な発展のため、日本は、持続的成長と政治的安定が、中南米地域の課題であるとの認識から、中南米各国が民主主義を堅持しながら貧困や社会格差是正に向けた適切な努力を行い、安定的に経済成長を遂げることを重視している。このような観点から、教育や保健・医療など生活水準の向上や、中南米各国の持続的な経済成長に資する再生可能エネルギー開発や産業インフラ整備等の分野において、ODAなどを通じた積極的な支援を行っている。さらに、アルゼンチン、チリ、ブラジル及びメキシコといった国との間では、他の開発途上国を支援するいわゆる三角協力を進めている。
また、ハリケーンや地震などの自然災害に対し脆弱な中南米各国とは、防災面でも多くの協力を行ってきている。生物多様性にも富み、気候変動による自然災害の増大にも関心が高いことから、環境分野においても積極的に協力している。12月には、コスタリカと「温暖化防止に向けた二国間クレジット制度(JCM)」に署名した。民主主義の定着のための支援については、ホンジュラス大統領選挙(11月)に際し、米州機構への選挙監視要員を派遣した。
(3)地域機構を通じた中南米諸国との協力
中南米地域では、様々な地域統合の試みが漸進的に進んでいる。日本は、地域や国際社会の諸課題に対する連携を強化すべく、太平洋同盟、アジア中南米協力フォーラム(FEALAC)、中米統合機構(SICA)、カリブ共同体(CARICOM)、南米諸国連合(UNASUR)、南米南部共同市場(メルコスール)、ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)やイベロアメリカ・サミットといった地域機構との連携を強化している。
9月には、第1回日・CELAC外相会合、第3回日・カリコム外相会合を実施し、防災や軍縮・不拡散などの分野における協力を確認した。1月には、開放経済とアジアとの接近を掲げる太平洋同盟にアジアで初めてオブザーバー参加した。また、7月には、南米最大の経済統合体であるメルコスール共同市場審議会(外相会合)に参加し、10月には、イベロアメリカ・サミットにオブザーバー参加した。このほか、第16回日本・中米「対話と協力」フォーラム(7月)、第16回日・カリブ共同体事務レベル協議(7月)を実施しており、今後ともこれら地域機構との連携を強化していく。
