第3節 中南米
中南米地域は、日本にとって、日本企業の海外展開先として、また、ルールに基づくより良い国際社会の構築に当たり、重要なパートナーである。中南米は、5.8兆米ドルの経済規模(ASEANの約2.5倍)、6億人の成長市場、希少金属(レアメタル)を含めた鉱物資源・エネルギーや食料の生産地を有している。また、グローバルな製造・輸出拠点を担う世界経済の一翼として台頭しており、日本企業の進出が顕著となっている。さらに、「法の支配」が確立され、ほぼ全ての国で民主主義が根づいており、国際社会における発言力を大きく高めている。
中南米地域は、約178万人に上る日系人が在住しているなど、日本との人的・歴史的な絆が深い。また、アジア最大の対中南米投資国として長年培われた経済的結びつきもあり、日本と中南米は伝統的に友好関係を維持している。2013年には、こうした友好関係を更なる高みに引き上げるべく、4月下旬から5月上旬にかけて岸田外務大臣がメキシコ、ペルー及びパナマを訪問した。「中南米と共に新たな航海へ」と題する対中南米政策スピーチも実施し、日本の対中南米外交の柱として、①日本と中南米が共に発展するための協力関係の構築(経済関係の強化)や②ルールに基づく、より良い国際社会の構築に向けた連携の強化(国際場裏での連携)を掲げた。また、9月には岸田外務大臣がブラジル、アルゼンチンを訪問した。ブラジルでは、外相会談を行ったほか、日系議員や日系団体、日系企業との懇談などを行った。
経済関係の強化については、EPA、投資協定などの法的枠組みの構築や、このような枠組みに基づく相手国政府との協議などを通じて、現地で事業を展開する日系企業にとっての良好なビジネス環境の整備に努めている。また、中南米諸国では経済成長に伴い、都市交通やエネルギー等のインフラ需要の拡大が見込まれることから、日本の技術を活用した開発支援を推進している。このほか、資源や食料に富んだ国々との協力関係の深化を通じ、日本への資源や食料の安定供給の確保に努めている。
国際場裏での連携促進については、持続的経済成長、環境・気候変動問題、核軍縮・不拡散、国連安保理改革など国際社会が直面する課題に共に取り組みつつ、太平洋同盟などの地域共同体との連携と対話を強化している。また、活発な要人往来や政策協議の実施などを通じて、中南米諸国との連携や協調を図っている。