5 大洋州
(1)オーストラリア
日本とオーストラリアは、基本的価値と戦略的利益を共有するアジア太平洋地域における戦略的パートナーであり、両国関係は、貿易・投資を中心とした相互補完的で良好な経済分野のみならず、安全保障・防衛協力の分野においても急速に進展している。2013年は、10月の東アジア首脳会合(EAS)の際の日豪首脳会談を含め、閣僚級の訪問や国際会議の機会などを捉えた首脳会談、1月の岸田外務大臣のオーストラリア訪問や10月のビショップ外相の訪日を含めて外相会談が活発に行われ、両国関係を更に強化していくことで一致した。
ア 安全保障分野での協力
日本とオーストラリアは、2007年の安全保障協力に関する日豪共同宣言において、両国の関係を「戦略的パートナーシップ」と位置付け、日・オーストラリア外務・防衛閣僚協議(「2+2」)を含む二国間協議の定例化、部隊間の人的交流及び共同訓練などの強化を進めており、二国間の安全保障・防衛協力は急速に発展してきている。
具体的には、自衛隊とオーストラリア軍による二国間や多国間の共同訓練(二国間訓練は、2009年以来5回)への参加や、国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)やフィリピンでの台風被害に対する緊急援助活動(2013年11月~12月)で協力している。
また、日本とオーストラリアは共に米国の同盟国であり、日米豪の外交当局間の戦略対話や自衛隊と米豪軍による共同訓練などの三国間の協力も進んでいる。10月には、インドネシア・バリで日米豪閣僚級戦略対話(TSD)が約4年ぶりに開催され、地域の戦略認識の共有がなされた。
さらに、日・オーストラリア共同訓練、国連PKOや国際緊急援助活動における協力を促進する「日・オーストラリア物品役務相互提供協定(ACSA)」が2013年1月に発効し、フィリピンでの台風被害に係る緊急支援の際にも活用された。また、日・オーストラリア政府間で交換する国家の安全保障のための秘密情報を保護する手続などを定めた「日豪情報保護協定(ISA)」が3月に発効した。

イ 経済関係
日本とオーストラリアとの相互補完的な経済関係は、主として日本が工業品を輸出し、オーストラリアから資源や農産物などを輸入する形で着実に発展してきている。2013年10月には、日本とオーストラリアの民間企業で構成される「第51回日豪経済合同委員会」が東京で開催され、日豪EPAとTPP協定の早期締結を求める共同声明を発表した。
また、日本とオーストラリアとは、互いに最大の貿易相手国の1つであり、日本からオーストラリアへの投資も着実に増加している。さらに、オーストラリアは、日本にとって最大のエネルギー供給元であり、日本企業による天然ガス田の開発プロジェクトやレアアース鉱山などへの投資により、今後更なる資源供給の増加が見込まれるなど、その重要性は一層高まっている。こうした緊密な経済関係をより強化するために、日本は2007年からオーストラリアとのEPA交渉を開始し、これまでに16回の交渉会合を開催してきている。
さらに、両国はWTOなどの多国間の枠組みや、TPP協定やRCEPなどの広域経済連携の交渉でも、緊密に協力している。
ウ 文化・人的交流
オーストラリアの日本語学習者数は、世界第4位であり、100件を超える姉妹都市交流があるなど、同国には親日的な土壌が存在する。2012年の「アジアの世紀におけるオーストラリア」白書でオーストラリアの生徒が習得すべきアジア言語の1つとして、日本語が指定された。また、オーストラリア人大学生が留学やインターンシップを通じてアジア太平洋の知見を高め、人的交流と大学間の関係を強化する「新コロンボ計画」のパイロットプロジェクトが2014年に日本で開始されることは、今後の文化・人的交流の強化の契機となると期待される。
エ 国際社会における協力
日本とオーストラリアは、地域の安定的な発展に積極的な役割を担うため、様々なレベルでの協力を強化してきている。2013年は、PALM第2回中間閣僚会合、EAS、ARFなどの地域協力枠組みにおける協力を一層強化した。
オーストラリアは、2013年からの2年間、国連安保理の非常任理事国を務めており、国連安保理の場における協力についても、引き続き緊密な意見交換を行っている。
オ 捕鯨
日本の調査捕鯨をめぐっては、2010年にオーストラリア政府が日本を国際司法裁判所(ICJ)に提訴し、審理が続いている。また、反捕鯨団体シー・シェパードによる妨害行為については、日本は、シー・シェパード船舶の旗国及び寄港国であるオーストラリアなど関係国に対し、妨害行為の再発防止に向け実効的な措置を講じるよう、外相会談などの機会に要請している。
(2)ニュージーランド
日本とニュージーランドは、自由、民主主義、基本的人権、法の支配などの基本的価値や市場経済を共有するアジア太平洋地域のパートナーとして、長年良好な関係を維持している。2013年には、両国関係の「戦略的協力パートナーシップ」への引き上げ(6月)や新租税条約の発効(10月)などを通じて、両国関係の更なる強化へ向けた基盤が整備された。
ア 二国間関係
2013年は、ハイレベルの相互訪問が積極的に行われ、日本からは2月に城内外務大臣政務官、3月に阿部外務大臣政務官、5月に高村総理特使(自由民主党副総裁)がニュージーランドを訪問した。このほか、6月には岸田外務大臣がニュージーランドを訪問しマカリー外相と会談し、両外相は、両国関係を「戦略的協力パートナーシップ」のレベルに引き上げることなどを定めた「オークランド声明」を発出した。ニュージーランドからは、4月と9月にグローサー貿易相、5月にブリッジズ・エネルギー・資源・労働相、9月にジョイス高等教育・技能・雇用相、10月にカーター国会議長が訪日した。また、11月には、マカリー外相が訪日し、岸田外務大臣との間で太平洋島嶼地域における協力に関する共同プレスリリースを発出した。
イ 経済関係
日本とニュージーランドは、主として日本が工業品を輸出し、ニュージーランドから食料品を輸入する相互補完的な関係を有しており、日本はニュージーランドの最大の貿易相手国の1つである。2013年10月には新租税条約が発効した。両国の経済関係の更なる強化が期待されている。また、両国は、WTOなどの多国間の枠組みやTPP協定やRCEPなどの広域経済連携の交渉でも、緊密に協力している。
ウ 国際社会における協力
日本とニュージーランドは、第6回太平洋・島サミット(PALM6)、EAS、ARFなどの地域協力枠組みにおける協力を一層強化している。また、アフガニスタンや太平洋島嶼国・地域において経済開発面での協力を行うなど、地域の安定と発展のために積極的な役割を果たしている。
エ 人的交流
2013年においても、青少年交流事業JENESYS2.0の一環として、135人のオーストラリア及びニュージーランドの高校生・大学生が訪日し、東京のほか地方都市を訪問し、日本の高校生・大学生との交流などを通じて、日本について理解を深めた。
(3)太平洋島嶼国・地域
太平洋島嶼国・地域は、日本に対し友好的な国が多く、国際社会での協力や天然資源・鉱物資源の供給の面でも日本にとって重要なパートナーである。日本は、PALMの開催や太平洋諸島フォーラム(PIF)域外国対話への参加、さらには要人往来などを通じて、太平洋島嶼国・地域との関係を一層強化してきている。
ア 太平洋・島サミット第2回中間閣僚会合の開催
日本は、1997年から、PALMを3年に1度日本で開催し、太平洋島嶼国・地域が直面する様々な問題について首脳レベルで率直に意見交換を行うことによって緊密な協力関係を構築してきている。中間閣僚会合は、2010年から、PALMの会合と会合の中間に当たる年に、PALM参加国の外相などを招いて開催し、フォローアップなどを行っている。
2013年10月には、第2回中間閣僚会合が東京及び仙台で開催され、14の太平洋島嶼国・地域とオーストラリア、ニュージーランドの閣僚級が参加した。同会合では、岸田外務大臣とマーシャル諸島のムラー外相が共同議長となり、(1)PALM6のフォローアップ、(2)海洋秩序と資源管理、(3)貿易・投資促進に焦点を当てた意見交換が行われ、「議長総括」が採択された。同会合では、岸田外務大臣から、一連の議論を通じて日本と太平洋島嶼国・地域との関係が一層緊密になり、次回サミットに向けて取り組むべき方向性・課題が明らかとなったことを確認し、有意義な議論を行うことができたことについて、参加国に謝意を表明した。太平洋島嶼国・地域からも、日本を同地域の一員として歓迎し、日本からの大きな支援と強いコミットメントが継続していることに対し深い謝意が示された。最後に、岸田外務大臣から、第7回太平洋・島サミット(PALM7)を、2015年5月に福島県いわき市で開催することを決定したと発表した。
イ 太平洋諸島フォーラム(PIF)との関係
2013年9月、マーシャル諸島共和国において、太平洋島嶼国(14か国・地域)、オーストラリア及びニュージーランドから構成されるPIF加盟国と、日本、米国、中国、フランスなどの主要援助国が参加するPIF域外国対話が開催された。日本からは、鈴木外務副大臣が総理特使として出席した。その際、日本は、太平洋島嶼国・地域を重視する観点から、「共に働く仲間の一員」としてこの地域における日本の役割を一層強化していく考えを表明するとともに、PIF加盟国・地域に対して、第2回中間閣僚会合への協力を要請した。また、鈴木外務副大臣は、ロヤック・マーシャル諸島大統領及びムラー同外相を表敬し、10月のPALM第2回中間閣僚会合への共同議長国としての協力を依頼するとともに、外交関係樹立25周年に当たる二国間関係の一層強化を確認した。
ウ 要人往来
城内外務大臣政務官は、2013年6月パプアニューギニアにおいて、オニール首相表敬や、クア外相代理との会談、ソロモン諸島において、リロ首相表敬を行い、関係強化に努めた。10月の第2回中間閣僚会合の際には、太平洋島嶼国・地域の各閣僚が訪日し、安倍総理大臣を表敬した。12月には、三ツ矢外務副大臣がパプアニューギニアを訪問し、オニール首相やパト外相と会談した。
エ フィジー情勢
フィジーは、憲法を廃止し非民主的な政権が続いているとして、PIFや英連邦から加盟資格を停止されている。日本は、2014年の総選挙実現に向けた民主化の一層の進展に期待するとともに、両国間の対話を強化することで未来志向の協力関係を築いていくとの考えであり、様々な機会を捉えて、対話と働きかけを行っている。フィジーにおいては、2013年には、新しい憲法が公布され、総選挙に向けた準備が進むなど、民主化の進展が見られた。
オ 人的交流
2013年2月には、「アジア大洋州地域及び北米地域との青少年交流(キズナ強化プロジェクト)」として、太平洋島嶼国・地域から高校生・大学生が18人訪日した。その際、東日本大震災の被災地の視察を通じて住民と交流し、被災と復興の状況についての理解を深めた。また、青少年交流事業JENESYS2.0の一環として、約370人の太平洋島嶼国・地域の学生が訪日し、東京や地方都市を訪問し、日本の学生との交流などを通じて、日本についての理解を深めた。
このほか、12月には、太平洋島嶼国・地域の産業振興に携わる若手行政官12人が訪日し、東京及び宮崎を訪問し、政府関係者などと地方行政の在り方などについて意見交換などを行った。