国際協力活動に携わる日本のNGOは、400以上あるといわれている。その多くは、貧困や自然災害、地域紛争など様々な課題を抱える開発途上国において、現地の草の根レベルでのニーズを把握し、柔軟できめの細かい支援を実施しており、その重要性はますます高まっている。
外務省は、日本のNGOが開発途上国で実施する開発援助事業に対して、「日本NGO連携無償資金」を提供しており、NGOを通じた政府開発援助(ODA)を積極的に行っている。2012年(12月末現在)には、日本の48のNGOが、アジア、アフリカ、中東など、28か国1地域において、日本NGO連携無償資金を利用して活動している。その活動内容も保健・医療・衛生(母子保健、結核・HIV/エイズ対策、水衛生等)、農村開発(環境整備・技術向上等)、障害者支援(職業訓練・就労支援、子供用車椅子供与)、教育(学校建設など)分野で78件の事業を実施するなど、幅広いものとなっている。
また、政府、NGO、経済界などの協力や連携により、大規模自然災害や地域紛争の際に、より効果的かつ迅速に緊急人道支援活動を行うことを目的に設立された「ジャパン・プラットフォーム(JPF)」には、2012年12月末現在、37のNGOが参加している。JPFは、2012年には、アフリカ・サヘル地域での食糧危機(7月)、フィリピンでの洪水被害(8月)、イラン北西部での地震被害(9月)、シリア紛争(10月)、グアテマラやベトナムでの台風被害(11月)に際し、被災者支援を行ったほか、アフガニスタン、パキスタン、スリランカ北部、ハイチ、南スーダン共和国、アフリカの角地域における人道支援を実施した。
一方、日本のNGOは、前述のような政府資金を利用した活動のみならず、支援者による寄附金や独自の事業収入などを活用した活動も数多く実施している。また、近年では、企業の社会的責任(CSR)への関心が高まりつつあり、技術や資金を持つ企業が、国際協力について高い知見を持つNGOと協力の上、開発途上国で社会貢献事業を実施する形での連携も数多く見られるようになっている。
このように、開発援助の分野において重要な活動を行っているNGOを国際協力のパートナーとして位置付け、NGOが活動基盤を強化して更に活躍していけるよう、外務省とJICAは、NGOの能力強化、専門性向上、人材育成などを目指し、様々な施策を通じてNGOの活動を側面から支援している。
2012年度においては、外務省は、NGO活動環境整備支援事業として、「NGO研究会」(調査研究及びセミナー開催等を5団体に委託)、「NGO長期スタディ・プログラム」(NGO中堅職員の能力強化)、「NGOインターン・プログラム」(若手人材育成)、「NGO相談員制度」(全国に所在するNGO17団体に対し相談業務を委託)の4事業を実施している。
さらに、NGOとの対話・連携を促進するため、「NGO・外務省定期協議会」を6月に実施するとともに、小委員会として、ODA全般について協議するODA政策協議会や、NGO支援や連携策について協議する連携推進委員会を、それぞれ年3回ずつ実施・予定している。
現在、日本が国家として承認している194か国のうち、152の国が大使館を東京に置いています。駐日大使館の数は、以下の表「駐日大使館数」のとおり1980年以降一貫して増加しており、2012年には、トンガ王国とコンゴ共和国の2か国が大使館を開設しました。2013年も、既に2~3の国から駐日大使館の開設希望が表明されています。大使館数の増加は世界各国の日本に対する関心を反映したものと言え、大変嬉しいことです。この傾向は今後も続きそうです。
各国の駐日大使館は、日本における各国の外交拠点として、様々な分野やレベルで日本との協議や交流を図っています。日本には、経験豊かな実力のある大使が各国から派遣されています。日本駐在が2回目となる大使も多くいます。中には、日本で少年時代を過ごしたことのある大使、学生時代に日本でライフ・セーヴァーの資格を取り、後に駐日外交官となってから、溺れかけた日本人を救った大使もいます。東京マラソンに出走する大使は5指に余ります。離任時に「日本を離れたくない」、「日本は第2の故郷」と言ってくれる大使又は大使夫人も少なくありません。
駐日大使館数(1980年以降)
年 | 駐日大使館数 |
---|---|
1980年 | 102 |
1990年 | 109 |
2000年 | 126 |
2010年 | 150 |
2012年 | 152 |
各国の駐日大使館による活動や情報発信を通じて外国の人々に日本をより良く理解してもらうことは、日本の外交にとって重要なことです。外務省では、そのために各国の駐日大使館に対し様々な協力や支援を行っており、例えば、日本の地方を良く知ってもらうため、地方公共団体と共催で、駐日各国大使や外交団を対象に地方視察訪問も行っています。2012年11月には駐日大使が三重県を視察し、参加大使からは、「自然との調和を重んじる伝統的な考え方が日本をここまで発展させたと実感した」との感想が寄せられ、好評を博しました。
外務省は、開発援助分野以外の外交課題においても、NGOと連携している。例えば、2012年2月下旬から3月上旬まで開催された第56回国連婦人の地位委員会(CSW)において、女性NGOが日本代表を務めたほか、NGO関係者が政府代表団の一員となり、積極的に議論に参加した。また、第67回国連総会では、鷲見八重子NGO代表が政府代表顧問として、人権・社会分野を扱う第3委員会に参加し、発言などを行った。さらに、人権に関する諸条約に基づいて提出する政府報告や第三国定住難民事業などについても、日本政府はNGO関係者などとの対話を行っている。
核軍縮を含む軍縮分野でも、日本のNGOは存在感を発揮しており、外務省とも連携している。具体例として、通常兵器の分野では、クラスター弾に関する条約、対人地雷禁止条約や武器貿易条約(ATT)に関するNGO主催のセミナーに外務省員がパネリストとして積極的に参加するなどして、市民社会との対話に努めてきた。また、外務省は、アフガニスタン、カンボジア、アンゴラ、ラオスなどにおける地雷や不発弾の除去、危険回避教育プロジェクトの実施に当たり、NGOと協力している。さらに、核軍縮の分野において、2010年9月から開始した外務省による「非核特使」の委嘱事業は、被爆者が世界各地で核兵器使用の惨禍の実情を伝えるNGOの活動を政府が後押しするものであり、2013年1月現在、延べ88人が本制度により世界各地へ派遣されている。
国際組織犯罪分野では、人身取引対策の分野において、現場の声を人身取引対策の体制強化に反映すべく、必要に応じて人身取引対策に日頃から従事しているNGO等と政府関係省庁との意見交換の場を設けており、2012年11月には意見交換を行い、人身取引対策における今後の課題について議論した。
国連改革の分野では、外務省は、2012年3月に「国連改革に関するパブリックフォーラム」を「国連改革を考えるNGO連絡会」と共に開催した。同フォーラムでは、「防災の将来~市民社会と政府の連携をめざして~」と題し、東日本大震災の経験と教訓を今後の取組にどのようにいかすかという観点から議論を行った。
JOCVは、20~39歳の青年男女が、開発途上国の地域で生活しながら、技術移転を通じてその地域の経済や社会の発展に協力し、これを支援することを目的とする事業である。1965年の事業発足以来、派遣された協力隊員は、まさしく日本の「顔の見える」協力を行い、開発途上国の発展に貢献してきた。2012年12月末までに累計で3万7,532人の隊員が88か国に派遣され、農林水産、加工、機械の保守操作、土木建築、保健衛生、教育文化、スポーツ、計画・行政の8分野(184職種)において積極的な支援を展開している。
SVは、幅広い技術と豊かな経験を有する40~69歳の中高年層の男女を開発途上国に派遣する事業である。1990年の事業発足以来、年々事業規模を拡大しており、2012年12月末までに5,011人が70か国に派遣され、青年海外協力隊と同じ8分野(164職種)において協力を行ってきた。近年は、一線を退いたシニア層の再出発やその知見の再活用という観点からも、豊富な経験と熟練した技術をいかすことができるシニア海外ボランティアに対する関心が高まっている。
青年海外協力隊及びシニア海外ボランティアは、開発途上国でボランティア活動に従事したいという国民の高い志に支えられており、外務省は、これを国民参加型国際協力の中核を担う事業として積極的に推進している。2012年12月末現在、2,018人の青年海外協力隊員と463人のシニア海外ボランティアが世界各地(それぞれ72か国、62か国)で活躍を続けている。また、帰国したボランティア参加者は、その経験を教育や地域活動の現場で共有するなど社会への還元を進めており、日本独自の国民参加型による活動は、受入国を始め、国内外から高い評価と期待を得ている。
青年海外協力隊事業が発足から約半世紀を経たことなども踏まえ、外務省は2011年3月から4月にかけて国民から幅広く意見を募集した上で、ボランティア事業の意義を見直し、2011年7月、「草の根外交官:共生と絆のために ~我が国の海外ボランティア事業~」と題する政策文書を発表し、日本のボランティア事業に関する新たな政策を示した。同文書では、帰国後の社会での活躍を支援する取組の強化、企業やNGOなどとの連携強化、活動状況の見える化などの施策が打ち出されており、その実現に向けた取組を継続的に実施している。また、2012年には、主に中小企業のグローバル人材の育成に役立つオーダーメイドのプログラム「民間連携ボランティア制度」を創設した。