中東・北アフリカ地域(以下、「中東諸国」という。)は、欧州、サブサハラ・アフリカ、中央アジア及び南アジアの結節点という地政学上の要衝である。また、国際通商上の主要な海上ルートに位置し、石油、天然ガスなどのエネルギー資源を世界に供給する重要な地域でもある。一方で、この地域は、中東和平、イランの核問題、アフガニスタンやイラクの復興など同地域を不安定化させる様々な課題を抱えている。これら諸課題の解決は、この地域の平和と安定のみならず、8割以上の原油を同地域から輸入する日本、また、国際社会全体にとって極めて重要である。
中東諸国の中には、2011年のいわゆる「アラブの春」と呼ばれる大変革により、長期政権が崩壊し、政治改革が進展している国がある一方で、市民への弾圧と混乱が続くシリアなど依然流動的な状況にある国もある。これに対し、日本は、G8が立ち上げた中東・北アフリカの変革を支援するためのドーヴィル・パートナーシップに参画するなど、民主化の移行期にある各国の努力を後押しすべく様々な支援を行っている。
アフガニスタンについて、米軍などの撤収後に、自立と安定を達成することができるか否かが焦点となっている。日本は、2012年7月に、「アフガニスタンに関する東京会合」を主催し、同国の復興支援について国際社会とアフガニスタンとの協力の在り方を具体化するなど存在感を示している。
日本は、中東諸国を資源・エネルギーの安定供給の確保の観点から、従来から重視してきているが、これら諸国は近年、急速に増加する若年人口を活力として着実な経済発展を遂げ、市場や投資先としての存在感も高めている。そのため、日本は、これら諸国との経済・ビジネス関係の強化のためのEPA/FTA、投資協定、租税条約など基盤となる法的枠組みの構築やインフラの海外展開などにも取り組んでいる。
さらに、日本は近年、中東諸国との間で再生可能エネルギー、科学技術、教育、文化・環境など幅広い分野における重層的な関係の構築に努めており、拡大中東・北アフリカ(BMENA)構想「未来のためのフォーラム」閣僚級会合を始めとする様々な対話・協力の枠組みに積極的に参加していく方針である。