海外に渡航する日本人は、年間延べ約1,664万人(2010年)に達している。また、海外に在留(1)する日本人も年々増加し、約114万人(2010年10月現在)に上っており、国際社会の様々な分野や地域で多くの日本人が活躍している。その一方で、海外で日本人が遭遇する危険も増加・多様化している。海外における日本人の生命・身体を保護し、利益を増進することは、外務省の重要な任務の一つであり、外務省は、日本人が海外で安全にかつ安心して生活や活動ができるよう、様々な取組を行っている。
外務省は、テロ・誘拐を含む事件や事故、戦乱や紛争、自然災害や感染症など、海外における日本人の安全と安心に関わる情報を幅広く的確に収集し、それを提供するとともに、国民の一人ひとりに自ら危機管理をすることの重要性を認識して安全対策をとるように呼びかけている。一方、危険に巻き込まれた日本人に対しては、各地の事情に即し、可能な限り迅速かつ適切な支援を行えるように、その体制や基盤の強化に努めている。
また、世界各国の日本国の在外公館(大使館や総領事館など)において、旅券(パスポート)や各種証明などの発給、在外選挙の実施など、基本的な行政サービスを提供することに加え、日本人学校や補習授業校への支援、医療・保健関係情報の提供などを通じ、海外で活躍する日本人の生活基盤を支えている。こうした施策(領事サービス)は、日本人・日本企業が海外へ展開し、活動する上でも重要なサービスとなっている。
さらに、長年にわたり各国の発展に寄与し、日本との「架け橋」となって二国間関係の緊密化に大きく貢献してきた日本人移住者及び日系人の存在は、日本が開かれた国を目指す外交を進める上で重要な資産であり、両者への支援も併せて行ってきている。
また、グローバル化が進展し、新興国の台頭などにより国際経済環境が変化する中、アジアを始め、海外の成長を日本の成長につなげることが極めて重要になっている。そのためには、パッケージ型インフラ海外展開の推進や、震災に伴う諸外国の輸入規制措置等への対応など、政府として、日本企業に対する積極的な支援が必要となっている。外務省は、在外公館を始め、日本企業が直面している諸問題について企業から意見を幅広く聴取し、企業からの問い合わせや要望に対応している。その上で、諸外国との間で規制改革やビジネス環境の改善に関する対話や協議を行い、相手国・地域に対して改善を求めている。
日本人や企業の海外での活動を支えるためには、諸外国との経済面での協力関係を規律する法的基盤の整備も重要である。外務省は、海外に進出している日本企業の要望などを踏まえ、経済連携協定(EPA)の活用・運用改善に取り組むとともに、定期的に協定の運用状況について見直している。また、投資の保護、促進及び自由化のための投資協定、二重課税の回避のための租税条約、社会保険料の二重負担や掛け捨ての解消のための社会保障協定の締結を進めてきている。さらに、「知的財産立国」を目指す日本としては、模倣品や海賊版の被害を受けている日本企業からの相談等を踏まえ、二国間及び多国間協議の場で外国政府への働きかけを行うなど、日本企業の知的財産権保護の強化に取り組んでいる。
1 ここでは、外国に住所又は居所を定めて3か月以上滞在することを指す。