近年、地方自治体や地域で活躍する各種団体は、伝統的な国際交流(姉妹・友好都市交流)のみならず、経済交流(輸出振興、観光誘致など)、国際協力等、様々な国際的取組を積極的に行っており、国際的な相互理解、国際社会における日本の地位の向上、日本のブランド力強化などの面で、外交上、重要な役割を果たしている。
外務省としても、オール・ジャパンでの総合的な外交力を強化するため、このような国際的取組を進める地方や地域との連携を強化する各種の取組を積極的に実施している。2011年は、東日本大震災後の風評被害対策支援に加え、日本の地方自治体が地場産業や地域経済を再生し、世界市場の中で、「開かれた復興」を目指すための取組強化策として、在外公館(海外にある日本の大使館や総領事館等)施設を活用した「地方の魅力発信プロジェクト」を6月に立ち上げ、在外公館施設での各種PR事業やセミナー等を開催してきた。また、大使又は総領事などが一時帰国する際には、積極的に地方自治体を訪問し、外国の最新の現地情報を提供する一方、今後の経済交流や国際交流面での在外公館と地方自治体の協力について協議するなどの取組を推進している。2011年度も、2010年度に引き続き、日本の地方の魅力を日本に駐在する各国の外交団に対して発信するセミナーや被災地域を含む地方視察ツアーを地方自治体と連携して開催するなど、日本の地方についての諸外国の理解増進に努めている。
「英語で俳句?」、「季語や韻律はどうするの?」私も初めはそう思った。しかし、海外でHAIKUを趣味としている人は多い。もちろん、日本語で詠むわけではなく、それぞれの国の言葉で詠む。
欧州連合(EU)のトップを務めているファン=ロンパイ欧州理事会議長の趣味はHAIKU。自ら句集を出版するほどの「俳人」である。それをきっかけとして、日本とEUは、2010年から日・EU定期首脳協議の機会に日・EU英語俳句コンテストを開催している。俳句といえば、正岡子規の生誕の地である愛媛県松山市が有名である。そこで、松山市役所観光産業振興課に相談したところ、「俳都・松山」のブランド化に取り組んでいることもあり、松山市に、コンテストを後援していただけることになった。
2011年5月に開催された2回目のコンテストのテーマは東日本大震災に対するEUからの支援に謝意を込め「絆(きずな)」。日本への応援やEUからの支援の感謝を詠んだ364句が日本国内とEU25か国から集まり、最優秀賞は日本とEUから一句ずつ選ばれた。EU部門で選ばれたフェデリカ・ベルタッキーニさん(イタリア)は、友情と協力の象徴としてEUの旗が日の丸を抱擁する句を詠み、日本部門の大湯俊介さんは世界から寄せられる支援への感謝の気持ちを句にした。副賞として、ベルタッキーニさんは松山市道後温泉に、大湯さんはファン=ロンパイ議長出身のブリュッセルに招待され、それぞれ地元市民に歓待された。
松山市と外務省による俳句を通じた取組はこれだけにとどまらない。松山市が俳句の普及のために設置している「俳句ポスト」を、ブリュッセルの欧州連合日本政府代表部に設置するための寄託式が、正岡子規の没後110周年となる2011年9月19日に松山市で行われた。松山市の「俳句ポスト」は市内90か所に設置されているが、国外となると初めてだ。ブリュッセルから俳句の魅力や日本文化の奥深さをもっと欧州に発信していきたい、そんな思いで私たちは取り組んでいる。
俳句は日・EUの首脳間の懇談でもたびたび話題になる。俳句は日本とEUを市民レベルのみならず、首脳間をも結び付け、日・EU関係の強化に貢献している……。そんな話を海外への好奇心が旺盛だった子規が知ったら、日・EU関係のために一句詠んでくれるに違いない。
欧州連合日本政府代表部 二等書記官 高元次郎