アジア太平洋地域の戦略環境が大きく変化しつつある中で、日露関係の発展は、日露両国の戦略的利益に合致するのみならず、地域の安定と繁栄にも貢献し得るものである。日露関係は北方領土問題をめぐるロシアの姿勢の硬化により決して良好とはいえない状況にあったが、2011年は、このような認識の下、両国関係を前向きに発展させていこうという動きが見られた1年となった。
特に、3月の東日本大震災の発生後には、ロシアから、物資の提供や救助隊の派遣等の支援(1)があったほか、エネルギー分野における日露協力の強化に関する提案がなされた。また、被災地の青少年がウラジオストクやモスクワに招待されるとともに、原発被害対策をめぐり関係当局の間で緊密な意思疎通が行われた。
また、日露両政府間においては、2011年に、2回の首脳会談及び4回の外相会談が行われたほか、事務レベルでの協議や対話が活発に行われ、安全保障、北方領土問題、原子力・エネルギーを含む経済、国際舞台における協力等、幅広い分野について議論が行われた。
日露両国間の最大の懸案である北方領土問題をめぐっては、日露両国の立場の隔たりは依然として大きい。日露両国政府は様々な分野での協力を進展させるべく取り組んでいるが、真の友好関係の構築のためには、領土問題を解決し平和条約を締結することがこれまで以上に必要となってきている。
中央アジア・コーカサス諸国(2)は、アジアと欧州、ロシアと中東を結ぶ地政学上の要衝に位置しており、この地域が平和と繁栄を維持することは、ユーラシア全体の利益である。また、この地域はエネルギー・鉱物資源を豊富に有することから、日本の資源・エネルギー供給の多様化の観点からも重要であり、同地域諸国との更なる関係強化を図る考えである。日本は、同諸国との協力を進めており、特に中央アジアについては、2004年以来「中央アジア+日本」対話の枠組みにより、地域の安定と地域内協力の促進に貢献し、日本とこの地域との幅広い協力関係を進めている。
1 救助隊については、2隊・計156名が日本に派遣され、また支援物資については、毛布1万7,200枚、個人線量計400個、マスク5,000枚の提供を受けた。そのほか、多くの個人・団体から物資の支援や義援金の提供を受けた。
2 中央アジア諸国は、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタンの5か国、コーカサス諸国は、アゼルバイジャン、アルメニア、グルジアの3か国を指す。