各論

1 中南米地域

(1)中南米政治情勢

2011年、中南米では8か国で大統領選挙及び総選挙が行われたほか、ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体、太平洋同盟という新たな地域機構が誕生するという、大きな政治的な動きがあった。

各国における選挙及び新政権の発足については、ペルーでは6月にウマラ氏がフジモリ元大統領の長女であるケイコ・フジモリ氏を破り当選し、7月に大統領に就任した。アルゼンチン(10月)、ニカラグア(11月)の大統領選挙では、それぞれ現職のフェルナンデス大統領、オルテガ大統領が再選されたほか、グアテマラ(11月)では野党候補が勝利した。総選挙が実施されたガイアナ(11月)では与党が、セントルシア(11月)、ジャマイカ(12月)では野党が勝利した。また、2010年1月に大地震に見舞われたハイチにおいては、2010年11月に実施された大統領選挙の結果を受けて5月にマルテリー大統領が就任した。ほとんどの国において、選挙は大きな問題なく実施され、中南米で広く民主主義が定着していることを示す結果となった。

中南米では、これまで、政治上の課題への対応や、経済面での連携のため、様々な地域協力又は統合の枠組みを構築してきた。2011年4月には、ペルーのリマにおいてペルー、チリ、コロンビア、メキシコの首脳が、アジア太平洋地域との経済関係強化等を目的とした太平洋同盟(Alianza del Pacifico)を設立した。また、12月には、ベネズエラで開催されたラテンアメリカ・カリブ首脳会議(CALC)において、将来的な中南米地域の統合を目指し、中南米諸国33か国からなる、ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)が創設された。CELACは創設されたばかりであり、今後の展開の方向性は明確にされていないが、中南米地域の全ての国が参加した、地域統合も模索する動きとして注目を集めている。

地域統合の動向
地域統合の動向

(2)中南米経済情勢

2008年に発生した世界的な経済・金融危機後、2010年に力強く復活した中南米経済は、2011年、欧州債務危機により若干成長が鈍化したが、世界経済の中で相対的に高い成長率を維持した。ブラジルの経済規模は同年英国を抜き世界第6位となり、2014年のFIFAワールドカップ(W杯)、2016年のリオデジャネイロ夏季オリンピックに向けて、今後更なる内需の拡大と経済成長が見込まれている。また、現在GDP世界第14位のメキシコも中南米第2位の人口を擁し、他の中南米諸国に比べて多くの通商協定を締結していることを強みに、自動車を中心とする地域の生産拠点として今後とも着実に経済成長を実現すると見られている。

中南米は、世界でも有数の食料供給地域であるとともに、銀、銅、亜鉛、鉄鉱石、石油などの資源や、電気自動車などの電池用として今後大幅な需要増が見込まれるリチウムを始めとする希少金属(レアメタル)の主要産地でもある。一次産品価格の変動の影響や、一部の国における資源の国家管理強化の動きはあるものの、経済発展の潜在力は高い。

中南米地域のGDP規模とGDP成長率
中南米地域のGDP規模とGDP成長率
中南米と世界の金属鉱物鉱石資源(2010、推定値)
中南米と世界の金属鉱物鉱石資源(2010、推定値)
このページのトップへ戻る