目次 > 外交青書2012(HTML)目次 > 第2章 地域別に見た外交 第3節 中南米

第3節 中南米

中南米の地図
総論

中南米地域は、4.9兆米ドルの域内総生産(ASEANの2.5倍)と約5.9億人の人口1を有し、世界の多くの国で世界経済・金融危機の影響を受け、経済が低迷する中、2010年は約5.9%の経済成長率を達成した。2011年も約4.3%の成長が見込まれるなど、市場経済に基づく着実な経済成長を実現しており、世界経済における存在感を一層高めている。また、希少金属(レアメタル)を含めた鉱物資源・エネルギーや食料の生産地としての注目も増している。経済面での存在感に加えて、この地域で民主主義が浸透した結果、地域全体としての国際社会における発言力が増している。

日本は中南米との間で、150万人にも上る中南米に在住する日系人、そして約40万人の日本に在住する日系人の存在を始めとする人的な絆もあり、伝統的に深い友好関係を有している。こうした友好関係に基づき、日本は中南米諸国における民主主義の定着と経済発展を支援し、関係の緊密化を進めてきた。今日、民主主義や市場経済といった基本的価値を共有する中南米諸国は日本にとって国際社会における重要なパートナーとなるに至っている。日本は中南米諸国との関係を更に進展させるために、①経済関係の強化、②地域の安定的発展の支援、③国際場裏における協力推進を三つの柱として、同地域に対する外交を展開している。

経済関係の強化については、日本政府は日系企業の活動や現地の事情を的確に捉えながら、EPAや投資協定、租税条約などの法的枠組み構築や相手国政府との協議を通じ、日系企業を支援している。また、中南米諸国では経済成長による様々なインフラ需要が見込まれていることから、インフラの海外展開を積極的に進めているほか、同地域の資源や食料に富んだ国々との協力関係深化を通じ、日本への資源・食料の安定供給の確保に努めている。

また、中南米の安定的発展のためには、各国に根強く残る貧困や社会的格差の問題を解決する必要がある。日本は、資金・技術協力を通じ、各国政府による問題解決への取組を積極的に支援することで、持続的な経済発展の実現に向けて協力している。

中南米は33か国を擁しており、国際連合など、多数決による意思決定が行われる国際機関で大きな影響力を持つ。こうした背景から、日本は、環境・気候変動問題、核軍縮・不拡散、国連安保理改革等の国際社会が直面する課題に取り組むに当たって、中南米諸国との連携・協調を図っている。

1 GDP及び人口の数値は、ECLAC Statistical Yearbook 2011から引用。

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