輸送技術やインターネットに代表される情報通信技術(ICT)といった、交流を支える技術の進歩と、その利用にかかる費用の低下は、世界規摸での人、モノ、資本及び情報の流通(グローバル化)を促している。グローバル化は経済成長を加速し、国境を越えた商慣行の共有、新しい生活習慣の導入や文化・思想の交流を可能にするという開放的性質を持つ。一昔前ならば限られた頻度と規摸でしか交流できなかった相手との情報や経済的なやり取りが日常化・大規模化し、特に経済面で、様々な主体の間で相互依存の度合いが高まっている。
相互依存関係が国境も越えて広範囲かつ複雑に広がったために、ある事態が他の事態に与える影響、それが伝達する速さ、そしてその技術が悪用されたときの被害の度合いも、かつてなく大きくなっている。すなわち、現在の国際社会にとって、交流を支える技術は、恩恵をもたらすと同時に、国境を越えた問題を生む要因となり得、その管理が大きな課題になっている。
交流を支える技術の中でも、特に情報通信技術の近年の進歩は著しい。インターネットを通じた交流を容易にするソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)が、中東・北アフリカでの政変を可能にした要因の一つになったとされるなど、各国の政治・社会、ひいては国際情勢にも大きな影響を及ぼしている。また、これは資本の自由な移動を支える技術でもある。
情報通信技術の発達によって、国家、企業、個人いずれも、大量の情報を処理・交換できるようになった。その結果、個人や小規模な団体でも、技術をテロ等の犯罪の計画に利用したり、技術そのものを破壊するサイバー攻撃を行い、大きな被害を生むことも可能になった。また、技術への依存の高まりゆえに、国家や企業に対するサイバー攻撃が増加している。情報通信技術の利用は原則として自由であるべきだが、その悪用を阻止しなければならないことも間違いない。インターネットの影響を警戒し、その統制を強める国々が存在するのに対し、米国を始めとする欧米諸国は「インターネットの自由」を主張しており、インターネットを含む情報インフラの自由を国際社会としてどう調整していくのかが問われている。自由を主張する国でも、2010年のウィキリークス事件により、国民の知る権利や外交の民主的統制という価値と、行政機関による適切な秘密保全という要請をどう調整すべきなのかという課題に直面した。
グローバル化には、特に経済面で国境を越えた活動と成長を促すというプラス面がある一方、欧州の経済危機に見られるように、一国の危機が他国へ与える影響も、より広範囲かつ直接的になるというマイナス面もある。欧州債務危機は、欧州内に広く波及したのに加え、貿易・投資や金融市場を通じ、域外国経済に大きな影響を与えている。
相互依存が深まる今日の世界においては、世界市場から切り離された、自己完結的な経済が存在することはほぼ不可能である。大量生産された工業製品の全世界的な流通や、自国市場の開放に伴う自国産品の国内価格低下は、既に数世紀来見られる現象だが、今日では、モノの価格のみならず、サービス価格や賃金にも、国際的な市場メカニズムによる裁定が働くようになった。資本は、より好条件の生産拠点を求め、投資先になった地域の経済を活性化させるとともに、所得水準の変化の速度を高めた。その結果、成長の機会の拡大という好ましい変化も生じているが、開発途上国・先進国双方における国内の所得格差の拡大、人類の経済活動規摸が巨大化した結果としての資源不足、環境破壊といった問題も生んでいる。このような問題には国際社会が協力し取り組まなければならない。さらに、国境を越える問題の解決には、従来の国家を中心に据えたアプローチだけでは不十分であり、個人や企業など様々な主体が果たす役割や、外交政策が国家のみならずそれらの主体に与える影響にも注目することが重要になっている。
技術の発展とその利用のコストが低下したことは、国家以外の様々な主体に、以前より大きな影響力を与えている。例えば、多国籍企業の中には、その経済規模において中小国家をしのぐほどの巨大企業も存在しており、そのような企業の主張は、国家の政策にも影響を与えるなど、世界経済において非常に大きな力を持つ。また、メディア・研究機関・NGOなども、発信力の高さなどの特徴をいかして国際社会における存在感を増している。その一方で、国家以外の組織や個人によるテロや犯罪が国家の安全保障すら脅かしている。
様々な組織や個人が大きな能力を持ち、社会の発展に寄与している一方で、テロや犯罪が国家の安全を脅かしている。また、国家の基本的な統治能力、例えば国内の治安維持能力すら不足している、いわゆる脆(ぜい)弱国家は、テロや組織犯罪の温床にもなり、国際社会全体の安定を脅かす要因になっている。
主権国家が国際社会の主要な主体であり、国家間の対立や協調が国際社会の安定を左右する最大の要因であることには今も変わりない。しかし、力は国家から国家以外の主体へと拡散し、それらは国際社会での意思決定に重要な役割を果たしつつある。また、宗教も、一国で起きた事件が他国で民衆レベルの抗議行動を引き起こす事例が、近年特にイスラム圏において頻発するなど、国際情勢に大きな影響を与える要因になっている。国家のみならず、こうした多様な主体の動きもきめ細かく把握し、それらが果たす多様な役割を調整し活用することが外交に求められている。
冷戦期は米ソ両国の、冷戦後は米国の力が圧倒的であり、これら超大国がある程度国際社会の秩序を維持していた。現在の国際社会は、米国が相対的な優位を保っているが、非国家主体の能力の向上や、新興国の台頭を始めとする国際的な力関係の変動によって、従来の国際社会の意思決定方式は有効性を失いつつある。例えば、世界貿易機関(WTO)や国連気候変動枠組条約においては、先進国と中国、インド及びブラジルを始めとする新興国との立場の相違が締約国間の新たな合意を阻害する主な原因になっている。
このような現実を踏まえ、従来の二国間関係と国連を中心とした協調の枠組みに加え、目的に応じた選択的な協力関係を形成する、新たな多国間協調が活発化する傾向にある。欧州はいうに及ばず、アジアでの東南アジア諸国連合(ASEAN)、ASEAN地域フォーラム(ARF)、アジア太平洋経済協力(APEC)や東アジア首脳会議(EAS)に見られるように、世界の各地域における統合や協調の試みも活性化している。いわゆる「アラブの春」に際しても、アラブ連盟、湾岸協力理事会(GCC)やアフリカ連合(AU)が様々な取組を行っている。今後、これらの多国間協調が、新しい国際秩序形成に向けて果たす役割が注目される。
産業革命の開始から20世紀の後半までは、効率的な生産技術の獲得と、そのような技術への投資が可能だった限られた国が、時に植民地や開発途上国を、労働や資源の供給源として、また、製品の市場として利用しながら、経済成長に成功していた。しかし、20世紀後半以降、特に冷戦終結後は、技術と資本を、内外を問わずに基本的に自由に導入することが最も効果的な成長の手法であるということが経験的に明らかになり、多くの後発工業国が、多国籍企業などの生産拠点として資本と技術を蓄積することで、また、労働力と、資源を保有している場合はそれをいかし、経済成長の軌道に乗った。これが人口大国で起きた場合、新たな経済大国の出現につながった。それら新興国は、経済力を背景に、国際政治でも存在感を増しており、国際秩序の維持・形成に大きな影響を与えるようになっている。
一方で、新興国それぞれの政治体制や経済構造は多様で、国際問題の個々の争点に対する立場や重視する利益も異なり、ひとくくりにすることはできない。1970年代以来G7/G8が経済を始めとする世界の諸課題に関する議論に主導適役割を果たしているが、2008年以降、金融・経済危機を契機に立ち上げられた新興国をメンバーに含むG20首脳会議は、「国際経済協力の第一のフォーラム」と位置付けられ、マクロ経済政策調整などに大きな役割を果たすようになった。これは、国際社会が新興国の台頭という現実をその意思決定システムに反映させた例といえるが、世界経済に占める新興国の割合が今後更に高まると見込まれ、それぞれが異なる利益を追求する中で、新興国からも参加と貢献を得た新たな世界秩序をどのように構築するかを戦略的に考える必要がある。
以上に述べたような世界的な変動の中で、これまで世界経済の中心であった米国や欧州の優位が相対的に低下する一方で、アジア太平洋地域が目覚ましい経済成長を遂げ、今や世界の成長センターとなっている。アジアにおける中間層(1)は、現在の約9.5億人から、2020年には約20億人に達すると予測されており、この地域の経済的重要性は、今後も増大し続けることが予想される。中でも、中国はこの中間層の約半分に当たる9.7億人を抱えると予測されるなど成長が著しく、存在感を増している。その一方で、アジア太平洋地域には、依然として国家間の関係を原因とする伝統的な安全保障上の脅威や不安定要因が存在する。まず、この地域には、世界の軍事力が集中する。アジア太平洋地域諸国・地域の総兵力は約670万人に上り、これは米国を除く北大西洋条約機構(NATO)加盟国の総兵力の約3倍に相当する。また、世界で核兵器を保有する国・地域の半数以上(2)が、この地域に存在する。さらに、北朝鮮の核・ミサイル開発、中国の透明性を欠いた国防力の強化や海洋活動の活発化、極東におけるロシア軍の活動などの問題もある。また、この地域には未解決の領土問題も引き続き存在している。
欧州諸国が経済統合や外交・安全保障分野での協力を進めているのに対し、アジア地域には、依然として国際社会の平和と繁栄に直結する問題も存在している。そのため、同地域は、国際安全保障における新たな世界の重心として認識されるようになってきている。2011年、地域国間の諸問題の解決のためにARFやEASで積極的な議論が行われたことが示すように、地域諸国は、地域の平和と安定を確保するため努力している。また、2011年11月、オバマ大統領が米国の外交・安全保障上の優先順位を見直し、アジア太平洋地域を最重要視するとの政策を打ち出したことは、この地域の重要性の高まりを象徴するものである。
国際経済の相互依存の深化と、世界規摸での経済活動の活発化に伴う地球規摸の資源獲得競争の激化や技術革新による海洋資源開発技術の発展を背景に、地域の緊張の要因の中でも、近年、海洋をめぐる問題が一層顕在化している。例えば、南シナ海では以前から領有権をめぐる諸問題が存在していたが、2011年5月には中国当局の船舶とベトナムの資源探査船との間で、ケーブル切断の事案が発生している。こうした事態に対し、地域の安全保障環境の不安定化を回避するため、中・ASEAN間で様々な取組がなされている。2011年7月には、中国とASEANが、2002年に作成した「南シナ海に関する行動宣言」を実行に移すための協力の進め方を定めるガイドラインに合意した。また、初めて米国及びロシアの参加を得た11月のEASは、海洋に関する国際法が地域の平和と安定の維持のために必須の規範を含むことを確認する首脳宣言を採択した。加えて、海洋に関する対話や協力を進めていくことの重要性が議長声明に盛り込まれた。
北朝鮮による核・ミサイル開発は、地域のみならず、国際社会全体にとっての脅威であり、日本は、米国や韓国を始めとする関係各国と緊密に連携し、安保理決議及び六者会合声明違反であるウラン濃縮活動の停止を含む、非核化に向けた具体的行動を北朝鮮に求めている。
拉致問題は、日本の国家主権と国民の生命・安全に関わる重大な問題であると同時に、基本的な人権の侵害という普遍的価値に関する問題であり、国際社会全体にとっての重要な関心事項である。日本政府は、全ての拉致被害者の一日も早い帰国を実現するため、政府一丸となって取り組んでいる。
2011年12月には、金正日(キムジョンイル)国防委員長の死去が発表された。この新たな事態を受け、日本政府としては関係各国と緊密に連携して情勢を注視しつつ、引き続き万全の態勢で臨んでいく。
日本が国益を確保するには、自らが位置するアジア太平洋地域にあるリスクを最小化し、成長の機会を最大化することが重要である。さらに、国家以外の様々な主体の出現、国家間の力関係の変化など世界が大きな変動を見せる中、日本の存在が世界とのつながりによって支えられていることを踏まえ、日本の繁栄に必要な平和で安定した世界を構築する必要がある。このために日本は、内向き傾向から脱却し、日米同盟を基軸としつつ、アジア太平洋地域にとどまることなく、自らが持つ様々な影響力をいかした外交を展開し、地域及び世界の課題の解決に積極的に挑んでいくことが必要である。また、政府のみならず、地方自治体、企業、非政府組織(NGO)、個人など日本の様々な主体が参加・連携することで、相乗効果を生み出し、日本は外交においてより大きな力を発揮できる。
厳しさを増している安全保障環境の中で日本の安全と繁栄を確保するためには、自らの安全保障面での努力はもとより、様々な外交努力によって良好な安全保障環境を作ることが必要である。
まず、日本自身の努力として、自らの防衛力を適切に整備していくことが不可欠である。日本は、2010年12月に閣議決定した新防衛大綱に従い、機動性を備えた動的防衛力(3)を構築する。
次に、日本の外交・安全保障の基軸であり、アジア太平洋地域のみならず世界の安定と繁栄のための公共財でもある日米同盟を、更に深化・発展させていくことで、日本の防衛のみならず、地域の安全保障の更なる向上に貢献していく。具体的には、日本の防衛及び周辺事態に際しての計画の検討、ミサイル防衛、宇宙・サイバー等新たな分野での協力を含む幅広い分野での安保・防衛協力を引き続き推進していく。また、米国がアジア太平洋地域を重視する政策を一層明確にする中、日本としては、米国のコミットメントの要である在日米軍の安定的な駐留を支え、地域の抑止力を確保していくとともに、米国と連携して地域の平和と安全のため主体的に取り組んでいく。
同時に、強固な日米同盟を基盤として、中国、韓国、ロシア、ASEAN諸国、オーストラリア、インドなど、近隣諸国と協力関係を強化し、様々な懸案の解決にも取り組む。韓国やオーストラリアといった国々との二国間協力を促進するとともに、日米韓・日米豪・日米印といった三か国協力の枠組みにおける連携を進め、EAS、ARF、拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス)などの多国間地域協力の枠組みも活用し、それぞれの枠組み間の多層的な協力関係を強化していく。
日本がアジア太平洋地域において、民主主義的な価値に支えられた豊かで安定した秩序を構築するための外交を推進していくには、地域に「開放的で多層的なネットワーク」を構築することが重要である。
このネットワークとは、様々な多国間協調の積み重ねである。この地域には、政治・安全保障面での緊張関係、経済活動を支える法的基盤の不十分さ、物理的な活動を支える基盤の脆弱性といった問題が存在する。これらの問題は、地域での活動のリスクを高め、国家を含む様々な活動を萎縮させるという負の効果を生む。ネットワークの構築は、これらの問題を、多国間の協力・協調を通じて解決し、予見可能性を高め、安定的な活動を可能にする環境を作ることにより、人、モノ、資本及び情報の流通を活発化させることを目指すものである。例えば、海洋での協力の促進は安全保障環境を改善し、経済連携や知的財産の保護の促進は地域の経済活動を活発化させ、インフラ整備や防災分野での協力は地域諸国が物理的な脆弱性を克服することにつながる。流通の活発化は豊かで安定した秩序を支え、その秩序が更に流通を活発化させることが期待される。
「多層的」とは、二国間、日米韓、日米豪、日中韓に加え、2011年に開始された日米印などの三国間、ASEAN、ASEAN+3、ASEAN+6、EAS、ARF、APECといった地域の多国間対話の枠組みを機能的に連携させながら、様々な分野で地域協力を積み上げていくという考え方である。
また、「開放的」とは、ネットワークが地域全体の国々にあまねく開かれていることを指す。ネットワークの主体には、国家以外にも、民間企業やNGO、有識者など幅広い市民もその一部として含まれる。したがって、ネットワークは全ての人々に開かれ、参加者の主体的な参加を促す魅力的なものでなければならない。
また、このようなネットワークの基盤となり、新たな秩序を支えることになるルール作りは、国際法と整合的なものでなければならない。様々な分野で地域協力を積み上げるとともに、国際法にのっとった共通の理念やルールを共有していくことが重要である。
このようなネットワークの構築には、中国の参画が不可欠である。日本が、外交・安全保障の基軸である日米同盟を深化させると同時に、中国と手を携えて共に秩序を形成していくことによって初めて、米中両国を含む地域諸国が自らの意思で参加するネットワークを作ることが可能になる。そのためにも、地域の主要国である日米中の対話の実現が重要になっている。
国際社会が伝統的な国家間の関係から生じる問題に加え、国際環境の変動が生む様々な問題に直面する中、日本が一層の国際貢献を果たすためには、アジア太平洋地域にとどまることなく、様々な政策手段を用いて、地域及び世界の問題の解決に積極的に挑んでいく必要がある。
個々の政策の具体的な内容についての記述は第2章以下に譲り、ここでは、幾つかの政策課題を例として紹介することにより、世界の問題に取り組むに当たっての日本の考え方を説明する。
平和維持・平和構築は、国家間の紛争の再発防止や、脆弱な統治機構を抱える国家の能力向上につながる取組である。日本は、ゴラン高原、ハイチ、東ティモール等に加え、7月に独立した南スーダン共和国への国連平和維持活動(PKO)に自衛隊の施設部隊などの派遣を2012年1月に開始するなど、積極的な役割を果たしてきている。12月には「防衛装備品等の海外移転に関する基準」を策定し、一定の要件の下、平和貢献や国際協力のための防衛装備品等の海外移転を包括的に可能にし、国際平和協力や国際テロ・海賊問題などへの対処に、より積極的かつ効果的に取り組む途を開いた。また、アフガニスタンの安定と持続可能な成長に向けた支援を進め、アフガニスタンのみならず、国際社会全体の安定に貢献している。さらに、アラブ地域で起きている歴史的変革のうねりを、穏健で安定的な道筋に導いていくことは、世界の安定にとって重要であり、日本もこのために積極的に支援を行っている。
世界規摸での経済活動の重要性が高まる中、海洋における航行の自由、とりわけ海上航行の安全確保は、世界共通の利益である。特にテロリストや海賊などの非国家主体の活動が活発化する中で、海上航行の安全を確保するためには、国際的な連携・協力が不可欠である。海賊問題については、日本は、ソマリア沖海賊対策のために海上自衛隊の護衛艦及び哨(しょう)戒機を派遣しているのに加えて、ソマリア及び周辺国の安定と海上取締能力の向上などへの支援を実施している。また、アジア太平洋地域の公共財である海洋について、地域の協力を推進していくことが重要であるとの考えから、11月のEASで、海洋に関する国際法の重要性を確認するに当たり、主導的な役割を果たした。
軍備拡張競争や兵器の拡散は、国際社会の平和と安全を損ない得る。中でも、大量破壊兵器の拡散は、国家間の緊張のみならず、非国家主体によるテロの危険性を高める。日本は、「軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI)」の推進や、北朝鮮、イランの核問題に対する取組等を通じ、軍縮・不拡散分野、また、核テロ対策等の観点から重要性を増している核セキュリティについても、積極的な役割を果たしている。
宇宙、サイバーといった新たな空間においても、日本の外交・安全保障上、ますます重要な課題が生じてきており、日本独自の取組とともに国際協力を推進していく。これらの課題をめぐる国際情勢の流れは速いが、日本の技術力と構想力をいかし、国際的な規範づくり等積極的に対応していく。
国際協力政府開発援助(ODA)は、現在の国際社会が直面する様々な問題を解決するための有効な手段であり、地方自治体、NGO、中小企業を含む民間企業、個人などとも協力しながら効果的に活用していくことが重要である。ODAによる保健・教育・農業・人材育成・産業振興・防災・インフラ整備など日本が実績を積んできた様々な分野における協力は、開発途上国の国づくりを支援し、その国の長期的な安定を可能にする取組であり、これまでも、ミレニアム開発目標(MDGs)達成のための支援や、アフリカ開発会議(TICAD)プロセスを重要な柱とするアフリカの開発で大きな貢献をしてきた。MDGsの達成期限である2015年以降の国際開発目標の在り方に関する議論も主導している。
日本は、環境問題や気候変動など、国境を越える課題にも積極的に取り組んでいる。国連持続可能な開発会議(リオ+20)や国連気候変動枠組条約第18回締約国会議(COP18)に向け、独自の技術力と構想力をいかした提案を行うなど、持続可能な開発、低炭素成長の実現及び世界のグリーン経済移行に関する議論に貢献している。
さらに、ODAは、例えば受入国の治安能力向上に用いることにより、安全保障上の課題への対応に活用することも可能である。東日本大震災の被害や世界経済の減速はあったが、2012年度外務省ODA当初予算案は、無償資金協力予算の増額などにより増額となっており、過去14年間で半減したODA予算の反転の端緒を開くことができた。
これらの取組の根底にある考え方が、「人間の安全保障」である。人間の安全保障は、様々な課題に直面する人間一人ひとりに着目し、自ら課題を解決できるよう人々の能力強化を図り、それぞれの持つ豊かな可能性を実現できる社会づくりを進める考え方であり、国づくりや開発にあらゆる主体が参加し、その成果を享受するという発想に立っている。「全員参加」の概念は、2.(1)(イ)で紹介した「開放的で多層的なネットワーク」にも共通する発想であり、日本外交の基本的な考え方ともいえる。
経済面での相互依存が深まる中、世界第三位の経済規摸を持つ日本が果たせる役割は大きい。まず、日本経済の回復・財政の健全化は、世界経済の持続的成長と安定を牽(けん)引することにつながる。震災によるサプライチェーンの断絶は、日本の製造業が世界経済に不可欠であることを示した。日本は、アジア太平洋を始めとする海外の成長を日本の成長につなげるためにも、中小企業を含む日本企業の海外事業展開支援を強化し、世界の主要貿易パートナーとの高いレベルの経済連携、インフラの海外展開などを推進していく。貿易や投資の促進は、開発途上国の発展にも有効な手段であり、日本は、例えば、ODAによる支援のみで語られがちだったアフリカの開発においても、民間資本が果たす役割を重視している。欧州債務危機に対しては、日本はまず欧州で対応すべきとの立場を基本としつつ、欧州金融安定ファシリティー(EFSF)債の購入や国際通貨基金(IMF)など国際的な枠組みを通じて協力を行っている。また、韓国やインドとの間で二国間の米ドル資金交換協定を締結するなど、アジアへの信用不安の波及を防ぐために協力している。
また、世界全体の資源需給が逼迫する中、日本が、資源産出国・消費国間の対話を通じた良好かつ透明な市場環境の醸成に貢献し、また、化石燃料の効率的利用・再生可能エネルギーの普及・省エネ推進といった政策を国際的に推進することは、日本への資源の安定供給を確保するだけでなく、気候変動対策にも資する。
世界で展開する新たな事態に対応するためには、経済的・軍事的影響力(いわゆるハード・パワー)のみならず、文化の魅力や技術の水準の高さによる影響力(いわゆるソフト・パワー)もうまくいかす必要がある。
古来、日本は、東西の文化を柔軟に受け入れ、融合してきた。アジア的な価値に根ざしながら西洋的価値を取り入れ、民主主義をアジアでいち早く導入した日本だからこそ、果たせる役割は大きい。従来、日本には高い信頼が寄せられている。英国の放送局であるBBCが実施している各国の好感度に関する国際世論調査では、日本は長年、常に1位ないしそれに準ずる上位を占めていることはその一例といえる。
日本が外交政策を推進するに当たっては、日本に対するこのような信頼や、「日本的な価値」をいかすこと、また、官民が連携してスポーツや青年交流を含む幅広い交流を増やすことで、日本と海外の相互理解を更に深めることが重要である。
震災での経験とそこから得られた教訓を世界と共有することは、日本が果たすべき責務である。日本は、特に、原子力安全や防災分野において、構想力を示していくべきである。
原子力安全の分野では、東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、国際原子力機関(IAEA)を中心として行われる国際的な原子力安全の強化に向けた取組に、最大限協力していく。
また、国際協力の分野における防災の主流化を進めていく。近年は、タイでの洪水に見られるように世界の各地域で災害が激甚化する傾向にあり、防災能力の向上は、国際社会全体にとって重要な課題になっている。日本は、東日本大震災を含む大規模災害の経験から得られた教訓を国際社会と共有し、また、各国の努力を支援することで、災害に強い強靭(じん)な社会づくりに貢献する方針である。
未曽有の大災害から1年以上がたったが、危機の時代にこそ発揮される日本の潜在力と日本人の強靱さをもって、内向き傾向から脱却し、日本の再生とグローバルな諸課題の解決に向けて、これまでにも増して国際社会で主導的な役割を果たしていくことが重要である。
2011年3月11日に発生した東日本大震災は、死者1万5,000名以上、行方不明者3,000名以上、負傷者6,000名以上の被害者を出し、また、震災やそれに伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故による避難者が震災3日後に47万人に達するなど、日本にとって歴史的な国難となりました。
震災は被災者に耐え難い痛みを与えただけでなく、国際社会における日本の影響力を低下させ得る大きな試練でした。しかし震災は、日本人に、世界の日本に対する高い評価と、日本と世界を結ぶ強い絆を再認識させる機会にもなりました。発生した被害と混乱の甚大さにもかかわらず、日本人が示した気高い精神と強靱さ、規律ある行動、そしてそれに対する世界の賞賛は、日本人に自信と誇りを与えました。また、被災地に居住していた外国人の中にも、人命救助や復旧・復興に大きな貢献をした方々が多数いることも忘れてはなりません。
国難に遭った日本に対して、世界中の国・地域及び機関が支援の手を差し伸べ、連帯を表明しました。163の国・地域の政府・当局及び43の国際機関から、救助チーム派遣・物資提供・寄付金提供等の申入れがあり、24の国・地域及び5の国際機関から救助チーム・専門家チームを、126の国・地域及び国際機関から支援物資や寄附金を受け取りました(1)。民間団体や個人からの支援を含めれば、支援を提供した国・人の数と支援の規摸は更に大きいものでした。後発開発途上国(2)の政府が支援を提供したり、所得が低い地域にある小学校の生徒たちが、自発的に小銭を持ち寄って在外公館に届けたといった例も多くあり、日本は文字どおり世界中から支援を受けました。
これほどの支援が寄せられた背景には、日本がこれまで世界の平和と安定のための取組を通じて各国と築いてきた信頼関係、ODAなどの国際協力の地道な積み重ね、日本の文化や技術に対する評価などがあると考えられます。
震災に際しての日本人の対応や、復興の着実な進展は、国際社会の日本に対する期待と評価を高めています。日本は、自らが持つ力に自信と誇りを持ち、震災を乗り越えるだけではなく、開発途上国支援、平和維持・平和構築、気候変動問題、軍縮・不拡散等の世界の諸課題に、これまでにも増して積極的に取り組むべきです。それは、国際社会への恩返しであるし、日本の繁栄に必要な、平和で安定した国際社会を築く手段でもあるのです。
訪問者 | 訪問先 | 訪問期間 |
ギラード・オーストラリア首相 | 宮城県南三陸町 | 4月23日 |
温家宝中国国務院総理、李明博韓国大統領 | 仙台市と福島市の被災地・避難所 | 5月21日 |
イノウエ米国連邦議会上院仮議長 | 仙台市 | 6月3日 |
ユドヨノ・インドネシア大統領夫妻 | 宮城県気仙沼市 | 6月18日 |
天野之弥国際原子力機関(IAEA)事務局長 | 東京電力福島第一原子力発電所 | 7月25日 |
トンルン・ラオス副首相兼外相 | 宮城県仙台市及び名取市 | 8月1日 |
潘基文国連事務総長 | 福島市及び相馬市 | 8月7日~8日 |
バイデン米国副大統領 | 宮城県仙台市 | 8月23日 |
アコワイエ・フランス国民議会議長 | 宮城県仙台市 | 9月14日 |
アキノ・フィリピン大統領 | 宮城県石巻市 | 9月26日 |
フィヨン・フランス首相 | 宮城県石巻市 | 10月22日 |
ヴルフ・ドイツ大統領 | 福島県いわき市 | 10月25日 |
ジグミ・ケサル・ブータン王国国王王妃両陛下 | 福島県相馬市 | 11月18日 |
ラモス=ホルタ東ティモール大統領 | 宮城県仙台市及び名取市 | 2012年1月20日 |
東日本大震災からの復旧・復興は、引き続き政府の最優先課題です。震災に際して国際社会から温かい支援と連帯が差し伸べられたことや、震災により国際的な供給網(サプライチェーン)が大きく損なわれたことは、日本と世界との深いつながりを改めて認識させることとなりました。2011年7月に閣議決定した「東日本大震災からの復興の基本方針」における基本的考え方の一つとして掲げられているとおり、復興に当たっては、国際社会との絆を強化し、諸外国の活力を取り込みながら、内向きでない、世界に開かれた復興を目指すことが重要です。外務省としても、外交を展開していく中で、開かれた復興に資するための取組を続けていきます。
このような観点から、外務省としては、①海外における風評被害への対策に引き続き全力を挙げるとともに、②復興特区制度等を活用した、被災地を始めとした我が国への外国からの投資の促進、③震災を契機に外国人研究者や技術者の日本離れが懸念されることも踏まえ、我が国の活力となるべき外国人の受入れの促進、④ODAを活用した被災地産品の海外の販路拡大、⑤自由貿易体制の推進による日本企業及び日本製品の平等な競争機会の確保等に取り組んでいます。さらに、⑥災害及び復興の経験から得られた知見と教訓を国際公共財として海外と共有することも、震災を受けた我が国が国際社会に対して果たし得る重要な取組の一つであり、防災分野での国際協力を積極的に推進するため、2012年夏に、被災地の東北で防災に関する国際会議を開催することとしています。
東日本大震災は、人口減少・高齢化に伴う成長力の低下、厳しい財政状況等、震災以前からの「そこにある危機」が既にある中で発生したものであり、日本は、いわば「危機の中の危機」の状況にあります。
こうした取組を通じ、震災復興において、被災地の発展が持続的なものとなり、被災地の復興が日本再生の先駆例となることを目指すとともに、再生を果たした日本自身が、国際社会に対していわば「課題解決のトップランナー」としてモデルを発信していくことができるよう、引き続き取り組んでいくことが重要です。
東京電力福島第一原子力発電所事故は、自然災害と原子力事故の複合災害、複数プラントでの同時進行、長期継続といった点でいまだかつてどこの国も経験したことのないものです。このため、国際社会に事故の情報を提供することが極めて重要であり、また、事故の徹底検証から得られる知見と教訓を国際社会と共有し、国際的な原子力安全の強化に貢献していくことが、日本の責務ともいうべき重要な課題になりました。
このような観点から、日本は積極的な対外発信に取り組みました。具体的には、ハイレベルでの説明として、菅直人総理大臣から日中韓サミット(5月22日)やG8ドーヴィル・サミット(5月26、27日)等において、また、野田総理大臣から原子力安全及び核セキュリティに関する国連ハイレベル会合(9月22日)等の場で、日本の状況を直接説明したほか、首脳会談や外相会談等においても説明を行いました。
6月には原子力安全に関するIAEA閣僚会議に対し、数百ページにわたる詳細な事故報告書を提出し、広く国際社会に公表しました(3)。さらに、9月のIAEA総会に際し、6月に報告した教訓への取組状況や、事故に関する追加的情報及び事故収束に向けた取組の現状等を含めた追加報告書を公表しました。
また、海外にある日本の大使館や領事館などを通じて、相手国政府要人、有識者への働きかけや、現地メディアにおける大使によるテレビ出演やインタビュー、プレスリリースやミニブログ等を通じて、正確な情報発信に努めました(4)。
東京では、関係省庁の出席を得て、3月13日以降駐日外交団に対して連日説明会を行いました。外国プレスについても、首相官邸を中心に、関係省庁が出席して連日説明会を行ったほか、政府要人のインタビュー等を通じて積極的に情報発信しました。また、首相官邸、外務省、在外公館、関係省庁のホームページを通じても、随時情報発信をしています(5)。
事故の収束に取り組みつつも、日本は、その経験から得られる知見と教訓を、国際社会と共有することに努めました。
こうした観点から、菅総理大臣は、5月のG8ドーヴィル・サミットにおいて、原子力安全に関する国際会議を2012年後半にIAEAと共に日本で開催することを表明しました。G8やIAEA等での議論において、日本は、国際的な原子力安全の強化に向け、①IAEA安全基準の強化及び活用の促進、②IAEA安全評価ミッションの拡充、③原子力事故時の支援に関するIAEA登録制度(6)の拡充、④原子力安全当局間の連携強化の促進、⑤原子力安全関連条約の強化を提案しました。こうした日本の提案は、9月22日にIAEA総会で確定した原子力安全に関する行動計画にも反映されています。
9月22日にニューヨークの国連本部において開催された「原子力安全及び核セキュリティに関する国連ハイレベル会合」においては、野田総理大臣が冒頭の首脳セッションで演説し、玄葉光一郎外務大臣が分科会の共同議長を務め、それまでに福島原発事故から得られた知見や教訓を説明しました。
1.(1)で紹介したとおり、東日本大震災に際しては、海外から多くの支援が寄せられました。福島原発事故への対応でも、多くの国や国際機関から原子力専門家の派遣や、大型放水用ポンプ、遠隔操作が可能なロボット、放射線防護服・防護マスク、放射線計測器、個人線量計等の原子力関連資機材の供与等が行われました。
東京電力福島第一原子力発電所事故の後、少なからぬ国・地域が、日本からの産品の輸入や日本への渡航に関する規制を強化しました。規制の内容は、産地証明書の添付要求、通関の際の放射能検査の実施、輸入その他の禁止、渡航自粛の勧告など、国・地域により様々であり、外務省は、在外公館を通じてそれぞれの規制の実態を調査して国内関係省庁、関係機関と情報共有するとともに、各国の規制当局に対し、日本における措置の最新状況を説明し、行き過ぎた規制については緩和を働きかけてきました。
また、日本ブランドの復活・強化を目的として、復興の現状、東北を中心とする地方の魅力、日本の技術・産品などについて、海外におけるPR事業、メディア対応、海外の観光展への日本ブース出展、写真・映像を活用した広報などを通じて積極的に発信してきました。国内においても、関係府省庁の出席も得て、外務省等において駐日外交団や外国プレスにブリーフィングを定期的に行ってきたほか、(独)日本貿易推進機構(JETRO)や日本政府観光局(JNTO)とも協力して、関係府省とともに在日外国人ビジネスマン、団体に対する説明会などを実施しました。
行き過ぎた輸入規制措置や渡航制限措置を始め、主要国における風評被害の払拭のためには、息の長い取組が必要です。今後とも、日本の原発の状況や食品の安全について、外国政府、外国メディア、関係機関に対し引き続き迅速・正確な情報の提供や各種の働きかけを行っていきます。
東日本大震災発生後、日本に世界中から温かい支援が寄せられました。実際に被災地を訪問した外国要人も多くいます。オーストラリアのジュリア・ギラード首相は、東日本大震災後に被災地を訪れた最初の外国首脳となりました。この訪問は、同国の緊急援助隊が活動した宮城県南三陸町の協力があり実現しました。
4月23日、ギラード首相が乗る飛行機は、濃霧のため仙台空港に2度着陸できず被災地訪問が実現しないのではないかと心配しましたが、3度目にようやく着陸、宮城県警の協力を得て陸路で移動しました。南三陸町に到着したギラード首相は、同行した松本剛明外務大臣やマクニール緊急援助隊長とともに、防災対策庁舎跡を訪問、南三陸町の佐藤仁町長から、津波が町を襲った際の様子の説明を受けました。
その後、ギラード首相は避難所を訪問しました。ギラード首相が到着した瞬間、避難所にいる南三陸町の皆さんは大歓声で歓迎。ギラード首相はオーストラリアから持ってきたコアラとカンガルーのぬいぐるみを子供たちに配り、子供たちは大喜び。私も、ぬいぐるみをリレーでギラード首相に手渡す手伝いをしました。コアラのぬいぐるみがなくなりそうになったので、比較的余っていたカンガルーのぬいぐるみを近くにいた子供に渡そうとしたら、「ギラードおばちゃんからコアラのぬいぐるみが欲しいの!」と怒られてしまいました。ギラード首相はそれほどに大人気でした。ギラード首相は、避難している家族の方との段ボールで仕切られているスペースに靴を脱いで入り懇談しました。
ギラード首相を見送った後、佐藤町長から、「3月11日以降、みんながこれほど幸せそうな姿を見せるのは初めてだ。ギラード首相に来ていただいて、本当に良かった。」と述べられたので、このメッセージを松本外務大臣からギラード首相に伝えたところ、ギラード首相も、満面の笑みを浮かべながら、手をたたいて喜んでいました。ギラード首相は、日本の後に韓国と中国を訪問しましたが、南三陸町訪問は特に心に残った訪問となったそうです。
アジア大洋州局大洋州課課長補佐 小嵜 仁史
(ギラード首相に同行し、南三陸町を訪問)
1 ここで「中間層」とは、世帯年間可処分所得が5,000米ドル以上3万5,000米ドル未満の層を指す。
2 米国、ロシア、中国、北朝鮮、インド及びパキスタン。北朝鮮は、2006年及び2009年に核実験実施を発表したため、ここでは、「核兵器を保有する地域」と位置付けることとする。
3 動的防衛力とは、より実効的な抑止と対処を可能とし、安全保障環境の改善のための活動的に行い得る動的なものとし、アジア太平洋地域の安全保障環境の一層の安定化とグローバルな安全保障環境の改善のための活動を能動的に行い得る動的なものとして、即応性、機動性、柔軟性、持続性及び多目的性を備え、軍事技術水準の動向を踏まえた高度な技術力と情報能力に支えられた防衛力をいう。
1 これらの支援の概要は、巻末の参考資料を参照。
2 開発途上国の中でも特に開発が遅れている国々で、1人当たりの国民総所得が推定750米ドル以下(3年の平均値)の国。25の後発開発途上国から支援があった。
3 ①シビアアクシデント防止策の強化、②シビアアクシデントへの対応策の強化、③原子力市外への対応の強化、④安全確保の基盤の強化、⑤安全文化の徹底の5つのグループから成る28項目教訓を公表。全文は、http://www.kantei.go.jp/jp/topics/2011/pdf/12-kyokun.pdfを参照。
4 地震発生後4月11日までの2か月間だけでも、地震関連対外広報活動として、テレビ等への出演、インタビュー、プレスリリースや大使メッセージの発出等を通じ、世界中で延べ約1,500件に上る働きかけを行った。
5 外務省ホームページでは日本語、英語、中国語、韓国語の4言語、各在外公館ホームページでは英語以外の39言語でも地震関連情報を発信。
6 IAEAは、事故情報の共有・支援における国際協力に関する登録制度として、緊急時対応援助ネットワーク(Response Assistance Network:RANET)を設置し、加盟国の援助実施可能な機関及び当該機関が貢献可能な分野を登録する制度を有しており、日本はRANET登録内容の具体化、参加国の増加等を促進することを提案している。