日本の外交政策のみならず、社会や文化といった一般事情に対する諸外国国民の理解を深め、良好な対日認識を形成する観点から、外務省は海外における日本に対するイメージや関心の対象を調査・分析し、各国別の広報戦略を策定し、効果的な情報発信に努めている。
具体的には、在外公館からのニュースレターなどを通じ、政府高官、国会議員、国際機関の長などに日本の外交政策などを積極的に説明ている。また、各国及び国際世論の形成に大きな影響力を有するオピニオン・リーダーを日本に招待し、日本の政府関係者や有識者との意見交換などを通じて、日本の政策や実情を紹介した他、各国からテレビ番組制作者のチームを招待し、二国間関係や日本の科学技術、環境技術、伝統文化、ポップカルチャーなどを紹介する番組の制作を支援している。また、諸外国において、在外公館の館員や日本から派遣した有識者が、日本の政治・経済・気候変動問題などの幅広い分野に関する講演を行うことにより、対日理解の促進を図っている。
さらに、日本の一般事情を幅広く海外の一般市民に紹介するために、印刷物による資料や映像資料を作成するとともに、インターネットを活用した海外への情報発信にも力をいれている(1)。
2010年は、前年の政権交代に引き続き、民主党政権下の日本外交や経済政策に対して、海外メディアから高い関心が寄せられた。外交面では、沖縄の在日米軍基地移設問題を中心とする日米関係の他、9月の尖閣(せんかく)諸島周辺領海内における中国漁船による衝突事件などを巡る日中関係が広く注目を集めた。この他、経済分野ではトヨタ自動車のリコール問題、急激な円高と為替介入、日本の国内総生産(GDP)が世界第3位になったことなどに関する論評が多く見られた他、科学技術関連では宇宙探査機「はやぶさ」の帰還などが報じられた。
日本の外交政策に対する国際社会の理解や支持を得るためには、海外メディアを通じた戦略的かつ効果的な対外発信が不可欠である。外務省では、G8ムスコカ・サミット(於:イタリア)/G20トロント・サミット(於:カナダ)、国連総会、アジア欧州会合(ASEM)首脳会議(於:ブリュッセル)、東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議(於:ハノイ)、G20ソウル・サミット(於:韓国)、APEC首脳会議(於:横浜)などの機会を捉え、日本の成長戦略やミレニアム開発目標(MDGs)達成に向けた保健・教育などの分野での日本の貢献策、資源外交、アジア太平洋地域の経済統合への取組などについて、海外メディアに対してきめ細かな情報提供や取材協力を行った。また、総理大臣や外務大臣の外国訪問などの重要な機会には、記者会見やインタビュー、海外の新聞や雑誌への寄稿などを実施し、日本政府の立場や考え方について積極的な対外発信を行っている。さらに、事実誤認に基づく海外報道に対して在外公館などを通じて速やかに反論投稿や申入れを行った他、開発途上国を中心とするジャーナリストの訪日招へいなどを通じて、正しい対日理解を促進し、客観的な日本関連報道の確保を図った。
1 「外務省ホームページ(英語版)」(http://www.mofa.go.jp/)は、日本の外交政策に関する情報を、また「Web Japan」(英語、一部多言語)(http://web-japan.org/)では日本の一般事情を発信している。また、多くの在外公館でも独自のホームページを開設して、現地に密着した情報を現地の言語や英語で発信している。